黄色い翁と次代を担う王たち
3章の題名にもなっているのに、王子がまだ全然出てこないのが多重人格者クオリティ
(`・ω・´)キリキリ踊るンゴよ!
グリーンは魔法局での発狂以降、魔法が使えないとわかって酷く落ち込んだ。魔力が使えないと言うことは、転送術にもし魔力が必要で、それができる方法を理解できるのがグリーンしかいなかった場合、グリーンの時は転送術が使えないからだ。
操縦方法を知らないのにヘリコプターを動かせと言われても無理はない。一方グリーンはヘリコプターの動かし方は知っていても、ヘリコプターを動かすエンジンがない。そのようなものである。
つまり、グリーン以外の人物に転送術のやり方を教えなければならない。グリーンは確かに天才だが、人に物事を教えるのは大の苦手だった.........
元の世界で人に勉強を教えて!と頼まれた時、普通に数学を教えるだけなのに、何故パッ!!とかドパッ??とか言う言葉が出てくるのかとめちゃくちゃ?な顔をされてしまったことはなんでもできると自分を自負しているグリーンのプライドを激しく傷つけた。
失意の中で、グリーンはアストルフ邸に戻り、眠った。
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ということで儂ことイエローの日ですな!グリーンが魔力がないですって? なにそれ、面白いですな。
ノートでいじって差し上げなくては。
最近、朝食時にアストルフ殿ご一緒することが多く、よく喋ります。最近の王の様子や、自分の処遇、他の家臣たちが儂のことをどう思ってるかまで聞きます。
まぁ王に謁見してるときに少し小耳に挟んだ情報や、王に謁見したときに家臣が話していたことで大まかなことはわかってしまうのですが...
この国でも(どこでもあるそうなのだが)王位継承権の問題というのは起こるものだ。王が既に60を超えてから、その議論は年々苛烈になっており、家臣たちも大きな2つの陣営のどちらかに入らざるを得なくなっている。
1つは第1王子、ベリアス。
王都学校の首席卒業生であり、幼い頃より、この国の筆頭将軍を務めたヘリン将軍に剣を教わった文武両道の王子だ。彼の背後には騎士団がついている。誰が見ても理想の王だったが、母方の家族が下級貴族なこともあり、あまり貴族からの心象は良くないらしい。だからこそ、1人でも多くの味方が欲しいのでレッドに近づいたのである。アストルフもそんなベリアスの力になろうとしている者の1人である。
それに相対するのが、第2王子、ライト王子である。文武両道なのは勿論のこと、なんと魔法まで使え、魔力も王都でもかなり上の部類に入るという。おまけに母方はこの国で3人しかいない貴族「辺境伯」の1人娘であり、ライト王子が熱烈な恋愛結婚をした妻も、辺境伯の1人が目に入れても痛くないとまで言われた孫娘だったため、ライト王子を王に、という声が貴族の中にも多い。おまけに魔法局で局長を務める若き秀才、ウルフィアスとは、学園からの旧知の仲で、今でも友人としての付き合いが深いらしい。魔法局からのバックアップも勿論ある。
つまりこの王位継承戦は
騎士団と魔法局プラス貴族の争いになっているのだ。しかし勢力としてはライト王子の方が圧倒的に有利である。
『強要するつもりはないし、君にも事情があるだろうから、宮廷内のゴタゴタに無理矢理巻き込もうとはできない。だが今日ベリアス様と会う約束があるだろう?是非考えて見てほしい。彼こそがこの国の王に相応しいと思えるだろう。』
そうアストルフは言いながら苦笑した、
とっさに儂も今日の予定を確認すると、さりげなく今日のスケジュールに昼からベリアス様との会談が予定されていた。
まぁ、予想通りですな
ベリアス陣営としては、新しい神器使いである儂を味方につけておくことに損はないだろうし、仕方がないことではあるが....
まだ儂をどーするかも決まっておらぬのに早速味方につけるように工作を始めるとは、よほどベリアス陣営は余裕がないのじゃな。
時間となり、イエローは馬車に乗り込み王城へ向かった。
馬車に乗りながらも彼は思う、これでいいのか?と、このままの予定でいくと、王都は荒れてしまう、それはレッド達の望むことではないだろう。個人的にイエローは取り敢えず面白ければいいのだ。その場を引っ掻き回して自分はそれを面白おかしく見ていたい。紳士的な言動の裏に見えるピエロのような顔を、本当に理解している人物は少ない。
だがレッド達に迷惑をかけてまでその趣味を満たそうとは思わない、基本的に自分には迷惑がかからない方範囲で面白くしたいのだが...さぁ...どうしてやろうか...
これから起こることを予想しつつ、イエローは王城に向かうのであった。
ベリアスの執務室は王城の中にある。部屋の中に入る、中にはでかい壮年の騎士と、まだいくらか若い騎士、を左右に座らせている黒髪の細身の男が待っていた。左右の騎士は親子だろうか?顔がよく似ている。
レッドのノートと、アストルフ伯爵の言った話を要約すると、壮年の騎士がルーカン殿、いくらか若い騎士がアロンということで間違いなさそうだ。
『またお会いしましたな、グリーン殿、ささ、こちらへどうぞ。』
そう壮年の騎士が言うと、儂は3人の座るのと反対方向へ座らされた。ベリアスがまず初めに口火を切ってくれた。
最初の話は取り留めもないことだった。どこから来たのだ、とか、神器を手に入れた経緯などだ、儂はそのままに答えた、特にルーカン殿の食いつきは凄まじかった。おいおい主君の前だぞ...あ、主君候補か。
それからも比較的重要ではない話は続く、東の国出身と聞いたがこの国はどうだ、と言われた時、もしやこの男は余裕もないのに自分の配下に加えるに相応しい男かどうかテストでもしとるのかと腹を疑ったが、答えた様子を見る限り本当にただ聞いてみただけらしい。それにしてもあんまり根掘り葉掘り聞かれなくて良かった。儂はボロを出すようなことはないが、他は心配だし、腹芸が出来るような奴はそもそもうちの人格の中には少ない。
『そう言えば、今度君に神器を手に入れた及び山の神を打ち倒したという功績を称えて勲章が授けられるらしいぞ、良かったな』
いや、随分さらっといいましたな?!このワシの処遇を?!
結構それ知りたかったのですがな?!
それ以降も(ベリアス様にとっての)どーでもいい話は終わり、このままベリアスの執務室から出た...
え、儂仲間にしなくていいの?協力する気ではあったのだが...おかしい、色々と儂の思ってたのとは違う。儂は神器使い、もー少し必要とされていてもいいはずなのだが...もしや神器使いとはそこまで重要視されていないのか?そう思いながらとぼとぼと執務室から出て、王城を後にしようとする。
王城を去る途中の廊下にて、集団で高らかに笑う者たちに出会った。その先頭に立つ男は、美しい長い長髪をたなびかせ、他の貴族たちと歩きながら談笑をしている。
先頭の男がこちらに気付いたようで、話しかけようとしたが、その前に隣でこの男にヘコヘコしていた男が前に出て、超でかい声で言う。
『道を開けよ!この方こそが時代のケイアポリス国王、ライト王子であるぞ!』
儂はスッと道の端に避けた、ショックで少々気が散りすぎていたようだ。廊下の真ん中を歩いてしまうとは...
先頭に立っていた男が声をかけてきた。
『こらこら...そのようなことを言うな、気が早いぞ、貴方は...先程兄上と面会をしていたと報告を受けたぞ、新しき神器使い、ようこそケイアポリス王城へ、歓迎するぞ。私がライトだ、兄上との話はどうだったなかな?』
儂は、いえ、世間話をと返した。するとライト王子は苦笑しながらも言った。
『そうか...神器使い、私は世界を手に入れる。その時にはお前の力も借りねばならん、その時は頼んだぞ!』
他のことも話そうとライト王子は儂に迫ってきたがそばにいた女性にあなた、そろそろ。そう言われると、
『すまん、先を急いでいたのだった、いずれ招待状を出す、また会おう、さらばだ』
そう言うとライト王子はお付きのものと去っていった。
なるほど、勝てない訳じゃ。ベリアス王子陣営にとって儂はどー考えても欲しい人材のはずである。それをなんのこともなくただ延々と話をしただけで、儂の心象が良くなるはずがない。それなら先程のライト王子のように、自らの目標を多少大げさにでもいいから強く言うことで、自分の大きさを儂と、お供にきちんとアピールできる方が個人的には評価は高い。それに儂の心象はライト王子の一言二言で確実に変わった。
イエローには皮肉なことに、両王子の違いがありありと映し出されてしまった。この国のために勿論ベリアスも優れた王子ではあるのだが、より良いのはライト王子で間違いなさそうである。実はこの2人はとんでもない問題を抱えているのだが、それをイエローが知ることはない。イエローはアストルフ伯爵の進退を心配しつつ、家路に着くのであった。
明日は王子回です。
お楽しみに。




