ウルフィアスとヴィヴィ
ウルフィアスside〜
私は化け物だ
その日、自分が思い出せる最古の記憶は、まだ自分が四足歩行の化け物だった時だ。
2足歩行になるまで私は、ただ全ての者の傷を癒す能力を持つだけの化け物だった。鹿のような、羊のような、そんな魔物とただの畜生の間で、ただ人間に敵対しないという理由だけで2足歩行の時に人間に亜人種という、種別を見出されたのは、亜人にとって幸運と言えるのだろうか。
少なくとも、私にとっては幸運だった。医者として私は人間の集落に受け入れられたのだから。そこで私は、より多くの人々を、自分以外のなんの能力も持たない人でもそれを癒せるように『医術』という理を生み出した。
それもまた、多くの人々に受け入れられた。私は安寧の日々を過ごすかに思えた。
だが物事全てに永遠という自称はない、いずれ政治的に利用され、私はそれから逃げた。
人間にとって、亜人種は友好的な魔物という認識でしか無かったのだ。絶滅という危機から免れ、余裕の生まれた人間たちは、その選民思想に基づき自らより知能の高いエルフの血を取り入れることに躍起になり、今でこそ廃れたものの、より強い亜人種を奴隷として従えることに必死になった。
勇者という下らないものを見ながら、1柱に誘われて神となり時代を見ても、それは変わらなかった。暮らしが豊かになり、人の体は健やかになっていた。私の医術は、人間の暮らしと共に発展していったのだ。
「僕が生んだ医術が人を救う、うん、いいね悪くない。歳を忘れたこの身だけども、同胞を諌めることで神としての責務を果たそう!」
ウルフィアスの体は完成してしまった。
亜人種としての限界とも言える極みにまでウルフィアスは既に達している。これ以上の高みに上がるには訓練などが必要だろう。
ちなみにウルフィアスはこの長い時で武術を納めているわけではない。長い時であった戦いの時において、いかにして戦うかを極めたのみである。
要するに、「喧嘩はいっぱいしてきた」状態である。これはアイテールにも当てはまるが、武術を納めた訳ではないのだ。神だから強いという訳でもない、ただ分野一芸、今回は「医療」においての祖がウルフィアスであると言う事だけで。
「長い間生きてきて思ったのはね、自分がいっぱいいれば戦いは勝てるんじゃないかと思ったんだよ!でも僕は1人だ、だから作った。僕たちを!!」
ウルフィアス、亜人種の中でも間違いなく歴代ぶっちぎり1位に位置する彼でさえ、神々の中での戦闘能力は低い。
例えばフォルテ、彼の真価はタイマンの能力では決してなく暗躍において真価を発揮するような男との直接対決でさえ、ウルフィアスは苦戦した。
だからこそ、彼は1人ではなく、数を頼みにした
『空間魔法』
ウルフィアスが、ライト王に仕えた際に使った魔法である。それと同時にウルフィアスにとって最も得意な魔法となった。
そこから出てくるのは
ウルフィアス、ウルフィアス、ウルフィアス
である
『なんだ!?ムカつく顔が増えやがった!?』とか向こうで言ってる英雄クンは置いておこう。君僕のことなんだと思ってるんだ...
ともかくだ、ここにいるのは紛れもなくウルフィアスである。全員が同じ思考を持つ紛れも無いウルフィアスである。
その数、約1万人
ウルフィアスは、アイテールと戦った時を思い出す。殺さず、数を減らさず、強い。そんなウルフィアスたちにアイテールもついには「やってられるかーーー!!」とさじを投げたものだ。
「下級とは言え神に選ばれた僕達...集団戦においては敵に回したくない奴NO1とまで言われる試練の神の力見せてあげよう!『蹂躙しろ』」
途端、全てのウルフィアスが冥界軍に牙を剥く。その力は暴風の化身と言っても誇張ではない。
アイテールが道を開き
僕が冥界軍を押しとどめる
さて、ヴィヴィは何をやってくれるかな?
そう言うと、ウルフィアスは隣で戦う可愛い妹分を見るのだった。
ヴィヴィside
もう!もう!
なんなの!?
みんな本気出しちゃって!ウルフィアスでさえ格好つけちゃって!私は樹木がないと力が発揮できないのよ!師匠じゃあるまいし、そんな実力ないのに!
そう言いながらも超巨大樹木と化したヴィヴィは、その腕の一振りで冥界軍を蹴散らしていく。
ヴィヴィはドライアドという木の精霊種に属する女性である、ドライアドは通常自分の元となる木から離れることはない。しかし、ヴィヴィは違った、彼女の木は全世界に根の伸びる樹木であり、世界中に広がっている木。
そう、ヴィヴィの元の木はバウムクーフンだったのだ。勿論バウムクーフンよりも小さいし、行ける場所にも限界はあったが。
しかしそんなヴィヴィの木に、神々の手が迫った。今回のバウムクーフンよりは確かに小さいサイズではあったが、ヴィヴィの木もまた、世界を十分に荒野に変えてしまうものだったのだ。
しかしそれを止めたのが、1柱と4柱である。
特に4柱はヴィヴィの師として、ヴィヴィに魔術の理を与えた。人々の守護者としてヴィヴィが神の1人に名を連ねているのは一重に師のおかげとも言っていい。
今回産まれたバウムクーフンも、実は救えないかと自分なりに模索していたのだ。
かつて自分が、救ってもらったように...
救うことはできなかったけど、託す人は間違えなかった!それだけで満足かな?
そう考えるだけでヴィヴィは自分を褒めたくなる、グリーン。決して1や4柱のように力を持っている訳ではない。しかし知恵という人間の持つ最大級の、それこそスキルとも言ってもいいものをフル活用して同胞を救った。
今回の冥界行きは、借りを人間に返すため!それと、私は空間系の魔法使えなかったから、冥界なら師匠に会えるかもと思って!
ていうか、お姉様に「来て...」とかお願いされて断れる生命体いるの?むしろ空気とかすらお姉様に従うべきよね?
「ともかく、あんたら、邪魔ぁぁあ!!!」
ヴィヴィ、神11柱。指輪を神具とする彼女も勿論戦いは得手ではない。
・・・・神々の間では
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
ただ丸太がビタンビタンしているだけだが、その一撃はまさしく災害である。
「ぐわぁぁぁ!」
「うげぇぇ!!」
など、情けない声をあげながら男達が吹き飛んでいく。
剣を極めた?
凄まじい威力の魔法?
無意味である。ヴィヴィには絶対の魔法無効と、宝具の剣をもへし折る体があるから。
「フレイヤお姉様の邪魔する奴は全員吹っ飛べ!」
ヴィヴィ、樹木真族
久々の大暴れであった。




