前哨戦②〜アイテールside〜
目の前に魔力の束が迫る
恐らく我が人生における最大級の敵、敵、敵の束。
「数千年はなかったぞ、これほどの戦いは」
そう、気づけばそう声を出していた。久しぶりにだす自分本来の体に慣れる為、軽く腕を前に出す 瞬間、人の波が、アイテールの拳に押されて吹き飛んだ。
しかし死なない、神であるアイテールの拳を受けてもなおその戦意が鈍る影もない。
「うぅん、久しい。冥界軍、士気高く一人一人が言わずもがな精鋭である。素晴らしい軍隊だ、先に私が作った天使を模した玩具とは比べものにならないな。実力ではない、そこには意志の力がある。」
そう、いつだって私は人形だ。
私は、自分の着ている白衣、身体的成長とともに変化した、どちらかと言えば大人の体に変化した今の姿のような姿になっている白衣の内側を見ながらそう思う。
その中には、金色の勲章のようなものが大量に保管されてあった。いずれも王国や、様々な国から貰った勲章である。未踏の地、人命の救助。そう、王族を助けたなんてこともあったな。
ーーなんてことはない、巨人の王として夢見たのだ。いずれ人と住むのも悪くはないと。
だが結果は凄惨だ、魔族は北領に押しやられ、エルフは慰み者としてその数を多く減らし、亜人種はいい働き手とされ奴隷のような扱いを受けている。
もし、私がそれを守っていれば、そんな亜人やエルフを守っていればそれはまた違った歴史を辿っていたのだろうか?
歴史にIFはない、そしてその時期私がアヴァロムの保全のため身を粉にして働いていた時期だから、加勢に行けないこともわかっている。だが亜人やエルフが窮しているのに対して、全てを人間のせいにして攻め滅ぼそうと考えた楽観的思考というよりは押し付けのような真似をした自分を、今は殴りたい気分になった。
何を子供じみたことをやっていたのだ、私は
人と共に冒険したこともあった
人と共闘したことすらある。
というか、正直死に瀕したところを救われたことすらあった。その恩をそれ1人に返してそれで終わりとはいくらなんでも私らしくない。
「100倍にして返してやろう!」
ぐらいは言ってのけてこそ私らしいというものだ!
瞬間、自分のことをどこかで見ているであろう人間の友人が。
微笑んだ気がした。
「さぁ見せてやろう!巨神族、大地の精霊の分派である我々は地面と話ができると言うが...そんなレベルじゃないぞ私のは、地面に命令し!全てを操る!」
戦いの場で、あの男との戦いでは死んでも使う気がなかった技!自らが愛する大地を少しでも汚したくないというアイテールなりの配慮によってアヴァロムでは使えない、否使わない奥義。
本来大地の上にあれば無敵とまで言われるアイテールは、鉱石により構成される冥界の上でさえ、無敵である!本来悪魔大帝との共闘を切り捨ててまでフレイヤが無理をして第三世界に行かなかった理由が、アイテールの本領が発揮できないことにあるほど、アイテールと地面の関係は切っても切れない関係であったのだ。
『地は我と共にあり!!!!!!』
地面を一度、コツンと叩く。アイテールが地面にした行為は傍目から見ればそれだけである。
しかしそれだけで冥界という権能の一部はアヌビスの元を離れて地面から飛び出す槍や矛と化して冥界軍を襲う。
絶対領域である地面という場所からの突然の攻撃、初見で避けられるものはまずいない。いたとしても2撃、3撃と続くその槍の束に囲まれて冥界での生すら滅ぶ。
「追加だ!!!」
アイテールはそこまで言うと貫手の構えに入る。神器を全て揃えし英雄が受け止めし究極の貫手。
その真の姿である
『イデオム!!!』
真っ直ぐ、1つ足りたて曲がることなど許さないアイテールの技が冥界の奥底へと向かう。それはきっとアイテールにさえ届いているだろう。
それと同時に、冥界軍の一角が、文字通り吹き飛んだ。
「私からの挑戦状だ、バカタレが!その茹だった頭を冷やさせてやる!」
挑発的な笑みを浮かべながら、アイテールは目の前を真っ直ぐに見つめる。
槍だらけの崩れた地面を見ながら、アイテールは思考するのだった。
この技...一回やると戻せないんだけど...どうやって前に進もうか?と




