前哨戦①
「う〜し、そろそろ入るぞ」
冥界にグリーン砲をぶちかましてから15分が経過していた。冥界に空けたゲートは2種類
フレイヤが作った冥界のゲートと、ウルフィアス作成の冥界ゲート
これである。今回グリーン砲をぶちかましたのはフレイヤの作ったゲート、ウルフィアスの作った小さめのゲートから、グリーン達は潜入しようとしていた。
別にウルフィアスが大きなゲートを作るのが遅いという訳ではない。あくまで時間がかかるというだけで、フレイヤの方がグリーン砲をぶちかますに十分な大きなゲートを早く作れるというだけの話だ。
個人的にグリーンの考えとしては、今の全力砲撃で冥界がぶっ壊れているのが良いのだがフレイヤ曰く「アヌビスはそんなに甘くない」らしいので、心の中でプランは練っていた。というか話をした。皆に。
色々あるが、パターンはこんな感じだ。
①アヌビスはボロボロ、フレイヤがアヌビスを倒して脱出。全員無事(帰る)
②アヌビスは無事だが、冥界はボロボロ。フレイヤがアヌビスを倒す(帰る)
③アヌビスも冥界も無事で、フレイヤがアヌビスを倒せない(元の世界にコレット達を連れて無理やり帰る)
皆まで言うな、「全部帰るパターンかよ!」とか言うな。
大体このぐらいか?最悪のケースはオレがアヌビスと戦うパターンだ。
正直キツイ、自分でも制御できてない「本格戦闘用」の鎧を起動させたくねぇな。
計画は、今回参加するメンバーの全てに伝えられる。ゲンムこと謎の仮面Xを含めて、今回の戦いは本当にどうなるかわからない。だからこそのこのメンバーだ。
現在のところの最強メンバー、まぁ何人か欠けているが、今集められるメンバーはこれが精々だろう。
「皆んな、ゲートを開く準備ができた。行こう、アヌビスを止めに」
そうウルフィアスが言った後、この面々の雰囲気は、一変する。
殺気
先程まで楽しげに会話していたイエローが、これから宿敵に合間見える直前のようなそんな顔を始める。ディナスが、歴戦の勇者の名を欲しいままにしたその覇気を惜しげもなく溢れ返らせている。
オレ本当にスーツ着てて良かった...
殺気にまともに当てれてたら、気絶してたかもしんねぇ...
「よし、じゃあ行くか!」
そんなオレの陽気?な声に合わせて、面々は冥界入りを果たすのだった。
「中は暗くてひんやりしてる・・うぃ〜じいさんから聴いた冥界のまんますぎてな、でも所々に破壊音はありやがる。こりゃあすげぇぞ。見てみろよファムルス、」
「ん、おやおや・・この鉱石は見たことがあります、かつてバハムートが鎮座していたという山岳にあった鉱石に良く似ています。それがこの冥界の全てに覆われているとするなら...冥界という場所の存在意義が少し気になりますな」
いや、馴染みすぎじゃねぇ?ジャックとファムルスが、鉱石についてベッタベタ触ってるし。
「なぁ、これって何?」
「陛下、これは居住区スペースですね。冥界の意思なき魂は小さくなって毎回中を漂っています、ここに人間の形をしているだけでそれなりの精神力...力など介在しないものが必要ですが・・「常人」でも、冥界に人の姿でいられる者がいるということですね」
おいアホ主君と狂科学者、早く来い。
「それでもグリーン、確かにこの空間は少し変だよ。」
「いや、散々派手にぶっ壊したからな。色々と変化して不安定な空間に冥界自体がなってるかもしれねぇ。油断すんなよ」
「ふむ、グリーンの大砲は魔導技術の粋と科学技術がもたらした破壊兵器。それを都合50発以上喰らったならば空間が歪み異常を来しても仕方のないこと...現に生きた気配が1つもこの辺りにはありません。不思議ですなぁ。」
レッドはいい、だがイエロー。お前肩に乗るのはやめろ!
「いえ、年寄りには少々な道でも苦痛に感じるものでしてな。」
「お前肉体年齢19歳だろ!」
くっ!巨大ロボの肩に乗るなんて夢のような真似しやがって!動かすのにちょっと疲れるんだぞ!腕がな!
「少しお待ちを、ここから離れた先に人の集団がいます。武器、戦闘員ですね。勘の良い者がいるようです、こちらの動きは既に掴まれています。」
「は?いやレーダーにゃなんの反応もねーけど?」
ビービー!
ビービー!
それだけ言うと、イエローは自前のナイフを取り出す。その数秒後、オレのレーダーにも敵の軍勢が接近することを知らせるように警告音を発する。
クソッイエローの感覚以下かオレのレーダーは!
「敵が来るぞ、開戦だ!」
「待ちなさい」
ヴィヴィがそう言った瞬間、場の緊張した空気が一気に逸れる。
「アヌビスの前の良い前哨戦ね、貴方達じゃ苦戦しそうだし、お姉様達もウォーミングアップぐらいは必要じゃない?」
「賛成だ、今回集まってくれた神以外の同士に僕のような亜人は参戦していない。となれば亜人の祖として僕が変わりに戦わないとね」
「冥界の鉱石の採取がしたくて仕方がないが、仕方ない。後でゆっくりとさせてもらおう。グリーン!私がお前達に負けていた訳ではないことを証明してやる!」
「・・・・・・・」
そこまで言うと、フレイヤ、ヴィヴィ、ウルフィアス、アイテールがそれぞれ姿を変えていく。
それは、ある意味で神話に似た光景だった。
ウルフィアスは山羊と鹿の中間のような化け物に
ヴィヴィは木の中に吸い込まれて木そのものと変化する。
フレイヤは美しい天使の像のような、美しい灰色の色をした像のような巨大な剣を持つ女神へと変貌を遂げる。
そして、アイテールは...大人になっていた。
赤目に白髪、その姿は子供と変わらないものの、身長は180センチ程度まで伸び、ピシリと背筋を伸ばし、挑発的な顔をしている。
神4人が真の姿と化したことで、冥界が震える。
「行きましょう!お姉様!ウルフィアス!肉壁になりなさい!」
「ええ?酷いな、レディ・ファーストという言葉を知らないのかい?」
「仕事をしろ!ここはアヌビスが100%を出せる空間だぞ!だがそれは私とて同じこと!刮目しろ、人間ども!人大地にある限り!『巨神族』である私は無敵であるとここに知れ!!!!」
「・・・・・・」
ヴィヴィの咆哮が地面を揺らし、アイテールの叫びが冥界に木霊する。ウルフィアスが目を開けば命が芽吹き、フレイヤが指を動かせば億の剣が冥界軍を襲う。
今、冥界という場所で、アヴァロム最強の神達がアヌビスに牙を向こうとしていた。




