外伝 悪魔大帝の城
ウォルテシアの最北端に位置すると言われる魔族領、その魔族領も届かない最北端の地に、1つの山脈があった。
その山に名前はない、名付けるものがないためである。しかしその名もなき山には主人がいた。その山を納める樹木種はその主人の帰還を信じて山の上に宮殿を作った。
誰も知らないその場所にある、贅の尽くされた城。一流の使用人。最高級の宝。主人の好みに合わせて作られたとも言っていいその山は今歓喜していた。
ついに主人が戻って来たのである。
その主人とは、悪魔大帝。
玉座に座り、下に控える自分の部下を見下ろしながら、悪魔大帝は話始めた。
そばにいるのは4人の悪魔達、男の姿をしたものが3人、女の姿をしたものが1人、この面々が左右に分かれて自分の前に跪いていた。
いや、魔力が少なすぎて見えなかった。確かにその中央に1人出来損ないだが可愛い息子がいた。
ギールである。
「ほウ、ギール。しばらく見ない間に強くなったものだ。」
「はっ、ち、父上。今では主悪魔と能悪魔の間ぐらいはあると自負しております。」
左右でギールを嘲るかのように含み笑いをする者たちがいるが悪魔大帝は無視をする。
力なきものが嘲られる、いつものことだ。
「それデ?冥界軍と戦っている人間どもは全滅したか?それとも勇者でも生まれて善戦しているのカ?」
そう、勇者。あの時見かけた勇者ならば、冥界軍を足止めぐらいはできるであろう。勿論冥界軍がアヴァロム中に広がり、勇者がゲリラ戦などを行えばもしかしたら地上の冥界軍を全滅することすらできるかも知れない。
まぁ人間がそこまで頭の良い種族だとは思っていない。
期待はしていない訳だが
それとも、今代の英雄であるグリーンとか言うのが以外と善戦しているのか・・
「ち、父上。冥界軍との戦いは人間側の圧勝で終わっております。それも1日で」
「・・クク」
嘘でしょ?
「ギールぅぅ...貴様大帝様に向かって嘘偽りを述べるとは叛逆の意思ありと見て良いのだな」
「めめめめ、滅相もありません!父上に逆らうなど私ではとても」
「静まれ」
悪魔大帝の一言で城が再び静寂を取り戻す。
一体どういうことダ?
「説明しロ」
「はっはっはい、父上。グリーンという英雄がいるという話をしたのは聞いてますでしょうか?」
アイテールを倒したとか言う英雄、先程チラと頭に浮かんだが。所詮人間ではないのか?
勿論フレイヤの加護などが入っていればふつうの人間など紙屑同然に見えるほどの強さは手に入れられるが、それでも冥界軍は量質ともに揃っている。故に1人が奮戦しようと逆転は不可能であると捨て置いた英雄が。
そもそもアイテールを倒したという実績も、ギールはその際に生死の狭間を彷徨っていたとか言うので全く情報が入っていない。
使えん息子よ。
「グリーンの使った1発の兵器、それのみで冥界軍は全滅したそうです」
「・・詳細を報告しロ」
「も、申し訳ありません。詳しい情報までは、グリーンに連絡して報告させます」
「この痴れ者がぁぁぁぁぁぁぁァ!!!!」
悪魔大帝の側に控えていた側近の1人が、僅かに見せてしまった怒りを察してギールを蹴り飛ばす。ギールは高価そうな窓ガラスをぶち破りピクピクと痙攣を始めた。
「もっ申し訳ありません大帝様!お怒りを感じ取り代弁をしてしまいました!これは失態!自害を!」
良イ
それだけ言って大帝は考えをまとめるために頬杖をつく。
契約は不履行となった
そのことは別に悪魔大帝は不快には感じない
これから考えるのはただ一つ
どうやってアヌビスに嫌がらせをしてやろうかその一心だ。
アレは面白イ!!!
義などという下らないものの為に命を賭け、約束を守る為に命を縮め、約束を守らずに後悔して死ぬ。
これ以上に愉快なことがあるだろうか
悪魔が最も愉悦を感じる対象が、悪魔を忌み嫌う紙だとは!これも運命か、いやこれこそがお前の目論見通りだったのか?
絶対神、1柱よ。
今回も奴は何も介入しないのだろう。
見守り見下ろし、それだけなのだろう。
いいだろう
モット
モット
モット
モット
モットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットトモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットトモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットトモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモット
面白くしてやろウ!
「さぁ次ダ!ゲートの準備はどのくらい進んでいル?」
「まもなく準備完了するかと!」
壊してやろウ
目指すは、冥界だ!
そこでもしや会えるかもしれんな
今代の英雄とも!
「ツヅケ」
それだけ言うと、大帝の後ろに4名の悪魔と、無数にいた悪魔達が溢れて、大帝を先頭にゲートをくぐっていく。
主人の再度居なくなったこの美しい城に、再度静寂が流れた。




