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新しい神器

その後、マルクさんの言う通り、30分も経たずに冥界軍は全滅した。光の粒子となっていく彼らに、僕らはなんの感慨も湧かない。


アヌビスは冥界を率いる長ではあったが、そこに強制力はない。人間の世界に来たのはあくまで彼らの意思なのだ、生者の領分を犯そうとする亡者の末路は決まっている。同情はない。


まぁ全滅したんじゃなさげだけどね、何人かは何が目的か逃げ切ってる人もいるし、一体何をしようとしてんのやら...ゲリラとかされるとちょっと厄介なんだけどね、一応護衛を厚くしてもらうか。


僕はそう思いつつ戦場の跡を見回す、人魔戦争の時は初日だけだったが、人の匂い、魔物の出す醜悪な匂いに押されて吐いた記憶がある。斬ったものの肉の感触が忘れられなかったこともあった。


それに比べれば、斬れば光となりて消えてゆく敵のまぁ健全なことか。


我が軍の被害もそんなに少なくない犠牲はあったが


パンドラの箱メンバー+リザードマン軍


被害

死者14名 (全てリザードマン)


重傷者 32名(全てリザードマン)


軽傷者102名


被害はまぁまぁといったところであった。これで敵は全滅させてるんだからねぇ。すごいよもう


「そろそろフレイヤさんのところからも連絡が入ると思うんだけどなぁ...」


そう思いながら僕はため息をつく。一応今回の作戦は、レッド以下人間軍が冥界軍を防いでる内に、フレイヤ以下人側に味方する神々がアヌビスを説得(ぶっとば)しに行くとライト王以下諸侯には説明してある。


そもそも神々もパイプがあるグリーンにこそ問題があるとは思うが、人間側のグリーンに対する信頼感が強いのは別に悪い話ではない。むしろ、邪険にされ、その才覚を危険視される方が危険だ。


なんで誰も危険視しないんだ...グリーンがやっぱりアホだからなのか?多分イエローが絶妙にバランス取ってくれてるんだろうけどね。


「主よ!ここいらの敵は全て全滅した、本陣に戻りましょう!」


ディナスの生真面目な声が聞こえてくる。主とか呼ばなくていいのになぁ、もう。


本陣に戻ろうと僕は歩き出す、迷わない、戦争は終わった。マルクさんの言う通り、彼は目的を果たせたのだろうか。


わからないけど、マルクさんのあの自身から察するに成功はほぼ確定なんだろうけどね。


「正解だ、レッド君。そして最後にだが、渡すものがある」


背後から声を感じて僕は振り向く、そこにはなんでも無いような顔をしながら、一本の剣を持ったマルクさんかそこにはいた。


彼の左腕は、どこにもなかった。















「いや〜まいった、ウェザーが強すぎた。伊達に長生きしてないよね、左腕を持っていかれてしまった。まぁ勝ったけどね」


そう言いながらもマルクさんの左腕からは未だに光が漏れている、時間の無いという現実が、十分に僕を突きつけていた。


「一体何をしていたんですか」


「いやぁ、不詳の弟が生きていてね。引導を渡したのだよ、だが流石は僕がいなければ歴史に名を残した反英雄。強すぎでしょう」


マルクさんの弟、ウェザー。この2つの言葉から僕はイエローの報告で聞いた灰色のボロボロのエルフを思い出す。実際に見たことはないがフォルテと撃ち合った剛の者だ。


「まぁ、僕はもうお役ごめんかな。今回はこれを渡しに来ただけでね」


そう言って、まるで親戚におもちゃをプレゼントをするような気安さでマルクさんは僕に何かを投げてくる。


それを受け取った時に僕が感じたのは、その強力なエネルギーだった。この感触、覚えている。これは


「神器...!!!!!!」


「ご名答だ!流石はフレイヤ作の神器を全て着て戦った男!これは紛れもなく神器『ウェザリア』天候を操る神器だ」


そこまで言うと、マルクはゆっくりと手から地面につき、見る人が見れば眉を顰める少し行儀の悪い座り方をする。僕らの世界で言うところの...うんこ座り。


座っているのも辛いということか


「君には多少答えを聞かせてもらったからね。正当な報酬は与える男だよ。僕は」


「マルクさん...僕は」


敵ですよ、そこまで言いかけた僕の言葉をマルクさんは手を挙げて遮る。


「倒してみろよ、覚悟したアヌビスを。義に厚く、強いを重んじる真っ直ぐで、だからこそどうしようもなかなっちまってるあいつを。個人的になら...応援してもいい。」


最後に言った言葉は、そんな他愛もない挑戦的な言葉だった。しかしこの言葉で認めたのだ。


人間が冥界之王に勝てる可能性があると。


あのケテル=マルクトが人間が勝つかも知れないと思った、戯れでもそう認めた。これは確かな一歩だと僕は拳を握りしめていた


守りきってみせる、少なくともフレイヤさん達がアヌビスを説得するその日まで。


完全に消えた粒子を、僕は最大限の礼であるお辞儀で見送る。


偉大な先人の光に、祝福されているような、そんな気がした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「や〜れやれ、みんな〜暇だな」


「お前が暇にしたんだろう。一部の軍閥じゃあ手柄を取られたとか言ってお前に懐疑的な目を向ける諸侯も少なくないんだぞ...」


「言わせておけよ、なんだったらうちの奴らと模擬戦でもやらせて見せたらどうだ?」


「ほう、それは中々興味深い。ウォルテシアの最先端の魔導を見る良い機会ですな」


諸侯会議ははっきり言おう、停滞していた。理由は1つ、やることがないのだ。彼らはそれぞれ大きな国を任されている王である、無論遠方であるこの地でも書類仕事はできるし、そういうためのグリーンの発明品だ。便利極まり無いのだが(ウォルテシア王がゴネるのでグリーンは携帯をあげた)


いくらなんでも王が何ヶ月もいないというのは内乱などの可能性も含めて少し微妙だ。彼らの頭のなかでは既に「グリーン達に任せれば良いんじゃね?」という心が口から出そうなほどに広がっている。


しかし、できない。それは彼らの心理的に、この行為は各国に向けての自らの戦力の示威行為に他ならないので、ここで自国に帰ってしまえば、内外共に「〇〇国はケイアポリス王国の軍事力に屈した」と見られても仕方がないのだ。


しかし彼らのそんななけなしのプライドはグリーンによってへし折られているのでもう帰っても良いような気もするが、家臣達の反発もあってそんなことができない。むしろ秘密を盗もうとウォルテシア国からは何人から不埒者まで出る始末だ。


正直アホかと言いたいところだが、自分とて魔法が発展しているウォルテシア国の魔導には興味が尽きないので許しているところもある。


魔導研究のスペシャリストとしてグリーンはこれ以上ないくらいの人間がいるので、特に問題がないようにも見えるが、あまりにも人数が少なすぎるのも困り者だ。


ここから先の兵器の開発には、魔法を取り入れるのが手っ取り早いとグリーンは考えている。ずっと先の話にはなるが長期的に魔法から文化形態を完全に科学へとシフトさせるにせよ、魔法が科学よりも便利な部分もあるのは疑いようもないので、これからも魔法は一定の需要があるだろう。


むしろグリーンが魔導と科学の融合作を現状は無理だか将来的に生み出そうとしていることから察せるように、魔法がこれからも庶民のベースとなるのは確定だ。


ケイアポリス王国よりもずっと魔法が進んでいるウォルテシアにいくつか貸しを作るのも悪くはないかな。


そうグリーンは最近思い始めた。


「さて、兵器開発の続きでもするか!」


「ええ!?まだやんの?グリーン我が国の研究家達も開発チームに入れて欲しいんだが」


「見学なら許す!質問手出し一切不許可なら良いぞ」


まぁ、そんなことを考えていられるのも今のうちだとグリーンは思考を切り替える。


もうすぐジャン達も合流するし、人間側の最高戦力がここに集まっているのは確かだ。


フレイヤが負けるとは思っていないが、用心に用心を重ねて新兵器をいくつか作っておくのも悪くないなとグリーンは満天の青空を見上げながらそう考えた。


素材は各国首脳がくれるし、代わりに開発見せろってしつこいけど。









この期間わずか3日、その後戦局はまたも変動の時を迎える




明日からは悪魔族vs冥界軍です

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読んでくれてありがとうございます! これから全10章、毎日投稿させていただきますので、是非よろしくお願いします @kurokonngame くろこんでツイッターもやってますので、繋がりに来てください。
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