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レッドside〜圧勝の裏で〜

「向こうもやっと戦闘開始か。ねぇイエロー、グリーンって何作ってたの?」


「・・口に出すのも憚られますが、そうですな...」


「やめとこ、僕の1人がヤバイの作ってるとか聞きたくないし。」


「英断かと」


イエローと僕の他愛のない会話が続く。現在位置は、戦場であるエリアド荒原から30キロぐらい離れた山の頂上。メンバーはイエローと愉快な仲間たち(イエロー自称)30名ほどとパンドラの箱メンバージャック、ファムルス以下100名。いずれも選抜された精鋭達だ。


グリーン曰く「こっち、正直オレ以外いらねぇんだわ」という言葉を間に受けて、精鋭を連れて来てしまった。


それと、ディナスも来てくれた


「主人の危機に馳せ参じず、何が従者か」と言っていたが、勝手について来た200名のリザードマンもいたので、帰らせようとしたら、「戦場で鍛錬を積ませるのも長の役目ですから」と断られた。


うーんディナスも脳筋なのか...


ともかく300名ほどでこんな山道にいるのは、別に何も物見遊山という訳ではない。グリーンに「戦場を見渡せる箇所から、敵が他から出て来ないか見守っててくれ、恐らく冥界軍が出てきた瞬間に別働隊が出てくるかもしれねぇからな」という指示があったからだ。


戦はなくて済むならこれに越したことはないけど...


あ、フラグを立ててしまった


「ムッ、レッド、あそこを見て下さいますかな?」


「え?あそこ?パッと見何もないけど・・いるね」


そう、先程まで何もなかったそこからは、多量の化け物達が出現していた。


その中に、マルクさんもいた。


「あの人もいるじゃん...」


「あの人とは?」


「あっイエローは知らなかったね、ケテル・マルクト、神柱7位。アスクロルを封じた人だよ」


「その面々までもがこの戦いに加わっていますか、我々は確かに神器に相当する鎧を着ている自負はありますが、それでも神との戦いには不十分ではありますな。」


そう、レッドとイエローのみは現在グリーン特性の鎧を着込んでいる。こちらは神器に相当する特注品ではあるが、神と相対するには神器1本では遠く及ばないのもまた事実であった。


「ともかく、グリーンにこのことを伝えます。奇襲に入りましょう。」


イエローが視線を背けると、1人、気配のあったものの姿が消え去る。


相変わらず怖い...イエローの部隊


「では、我々は奇襲に入ります、ほどほどに部隊が混乱した後に先制攻撃をお願いします、采配は全てディナス殿に」


「委細承知ッ」というディナスの返事を聞いて、イエローは姿を消す。


「さて、久しぶりの戦。滾ります!」


我慢できなさそうに愛槍をぶんぶんと回しているディナスを見て、僕はまだ異世界ファンタジー戦争から逃れることができないのだなと気づき、ため息をついきながら、自分の刀を見返した。


生き物を斬るという行為に忌避がなくなったのは何故か?答えは決まっている。守護る為だ。


僕はずっと、叔父を救うために、戦っている。
















「アヴァロムへの到着、成功しました。」


「よし、第1段階は成功か。」


ケテルマルクト、スアレスは数百人の精鋭を連れてとある森の一角に到着していた。


この面々は、ケテルマルクト考案の奇襲部隊である。基本的には本隊、それもマルクトの考案で当初の計画よりもかなり数が多くなっている。理由としては現魔王ゲンムの存在が大きいだろう、そこが参戦して来た場合、勝率が人間側に僅かながら傾くというマルクトの判断だ。


無論、冥界軍が圧倒的に有利なのは言うまでもないのだが。


ーー非常に皮肉な話だが、魔族軍は今回の戦争に参戦する気は無いという中立宣言を既に出している。冥界に対して魔王ゲンム自らが乗り込み交渉したのは、ディナスが保証している通りである。誠意は見せたと言うことだ。


そして、もう一つ、マルクトが誤算とは言わないまでも予想から若干外れたところがあった。


グリーンの持つ武力は、当時の魔法という概念を、大幅に超えていた。


ドォォン!!!


「は、はい?!」


「・・へぇ、そっちか」


遠目で、人間側を蹂躙しようと突撃を開始していた冥界軍は、崩壊した。


そこには、過去の英雄達が見てきたどんな魔法よりも大きな、火の塊のような見る人によっては美しく見える何かがそこにはあった。軍全体の面々が、一時瞬きを忘れる。それは美しく、荘厳で、圧倒的で。


それから目を逸らさずに入られたものなど、これを見た者の中で1人もいなかっただろう。


(魔法...違う...それなりの魔法は使える自負がある。じゃあこれは一体なんだ?)


混乱、全てが彼の掌の上であることが当然であった彼の人生の中で、ほとんどないと言ってもいい程の感情がマルクを襲った。


ケテルマルクト、深淵賢帝とまで言われたその智謀は決して伊達や酔狂なものではない。別に彼の頭の中で「本軍が全滅する」というルートが皆無ということではない。この世の全てを知ることができているなどというほど、マルクトーーマルクは傲慢ではない。だが、わからないというのは初めての経験だった。


(別にこの戦いの勝ち負けはどうでもいいと思っていたけどーーなんだ?非常に知識欲が唆られる!)


マルクに、新しいものに対する知識欲が湧き上がる。戦闘なんぞ無視して、あの謎の光の解明に努めたい。そう思う少しの燻りは、次の瞬間には一瞬で鎮火されていた。これ以上知識を蓄えてどうしようと言うのだ。


彼のそんな思考を置いていくかのように光は収まった、そして、全軍の目の前にあったのは超巨大なクレーター。そして6割方消え去った、アヌビスから任された自分の部隊であった。



(負けたな、だが、せめてアレを撃っている魔法使いもしくはそれを撃ち出している根源を探さないといけないわけか。情報不足だった、取り敢えずスアレスを偵察に出して)


それでも、マルクの思考は止まらない、恐らくこの戦争は負けだろう。場合によってはアヌビスに直接来てもらはなくてはならないかも知れない。


しかし、そんなマルクを更なる受難が襲う


「ぎゃあ!?」


「・・マルクさん、奇襲です。僕でさえもギリギリまで気づかなかった。30名ほどの人間が来ます、そして後方から軍が接近中、数は自分たちと同等程度。実力もあります、このレベルは・・」


1人の叫び声とスアレスのその言葉に、マルクは上の空から解放される。現在やることは出来るだけ思考の時間を確保することであり、戦うことではないのだが。


「スアレス、迎撃を頼む。僕はここで指揮を執る」


了解という声とともにスアレスが人員を連れて迎撃に出る。


「さて、じゃあやるか」


マルクは、ゆっくりと自前の鞭を出して、そう呟いた。


圧勝ーーそう記された冥界大戦の裏で、一つの戦いがあった。その戦いはあくまで、グリーン軍が敵の奇襲を事前に察知しそれを食い止めた戦いであるとしか明記されていない。しかし彼らは知らない、この戦いで、人類はかけがえのない命を1つ、失うことになるのだ。




死が、近づいて来る。

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読んでくれてありがとうございます! これから全10章、毎日投稿させていただきますので、是非よろしくお願いします @kurokonngame くろこんでツイッターもやってますので、繋がりに来てください。
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