グリーンの熾烈な戦争準備
「武装強化しま〜す」
「好きにしたら?」
「グホッ最近女神がそっけねぇ...」
グリーンが、ラトランダ領の開発室前でそう宣言したのに対し、フレイヤが素っ気なく答え、グリーンが吐血する。
アヌビスが大軍をも通れるほどのゲートを創り出すまでの期間は1ヶ月もない。取り敢えずグリーンはマリス辺境伯邸から一旦グリーン領に戻り、武装強化を目論んでいた。
ちなみにマリス辺境伯邸の面々には『逆らったらお前ら逆賊だからなオォン!?!?!』と脅しを加えて騎士の編成をさせている。冒険者集団とあの騎士達は多少なり戦争に役立つだろう。それと、コレットのお姉さんでありマリス辺境伯の奥さんと息子は救出しておいた。
・・あの野郎、奥さんと息子放り出していくたぁふてぇ野郎だな。本当に、一度ゆっくりと話し合う必要があるかもしれない。義弟として、あくまでも義弟として。
さて、それはともかく武装強化であーーる!
現状もうすぐ戻って来るであろうレッドの武装は特殊スーツ&刀only。特殊武装であるためこれ以上のパワーアップは困難であるだろう、これはイエローにも言えることではあるが。
レッドとイエローには魔法があるじゃん!だからいらねぇだろ、というのがグリーンの本音である。というか魔力を動かす鎧で、魔力がほとんどなく、フレイヤの祝福で付与されるなけなしの魔力で効率良く動かしているのが、今のグリーン専用特殊スーツ現状だ。
このスーツは『神器を生み出したい』という願いから来ている。前まではラトランダ領の発展のために命を削って来たグリーンである。そんな男がもし、たった2週間という短い間だけでも研究に没頭できたら?それは必ず奇跡を起こすこと間違いなしである。
しかも今回はアイテールもいる、材料はかなりあるのだ、それで神器を作って見せよう。
グリーンのアーマーは、グリーンしか使えないようになっている。その特殊性から神器にも似た使用者を見極める特性が入っているためだ。他にもグリーンは通常時のあのベルハイムを圧倒したスーツ以外にもう一機切り札がある。これはグリーンが片手間に作った中でも最高のものである。恐らくこの技術は、神器を越えるであろう。
材料はアイテールが採取して来た神鉄鋼、それとヴィヴィの協力のもと、バウムクーフンから取り出した世界樹の核の一部である。あの宝具で両断が叶わなかった素材を利用しようと言うのだ。
素晴らしいものになるだろう。
「それと、一般兵士達だよなぁ...面倒だけど全員にスーツ作ってやるか。あいつらにも一応肉壁になって貰わなくちゃあいかんしな」
「なんか...今すっごい怖いワードが聞こえた気がしたんですが」
「グリーンのやることに一々驚いてたら負けよ、ジャック」
そう言って半笑いのコレットとジャックを尻目に、グリーンは久しぶりの開発作業に目をギラギラとさせながら呟く
「さぁ、やってやろうじゃないか」
途端、不器用を地でいくグリーンが、ラトランダ領の職人や戻ってきたイエローとレッドに協力を仰ぎ全員分のスーツを用意させるのだが...それは後述としておこう。
ギュイーーーーーン!
ゴリゴリゴリゴリ
ギュギャギャギャギャ
そこはそーじゃねぇっつうの!
だからなんでそーなるんじゃーー!
口だけ番長のグリーンの絶叫が、研究室から響き渡るのだった。
◇◇◇◇
イエロー、レッドが緊急で返って来た、あの事件からおよそ1週間後
「で、現在こうなっていると...」
「さ、流石はグリーンだね...」
レッドとイエローの声が研究室に木霊する。
研究室の前には死屍累々と言った様子のラトランダ領屈指の職人達、全員が油まみれ汗まみれと言った様子で死んだように研究室内で眠っている・・死んでないよね?
その様子は確実にホラーだ、ラトランダで鳴らした技術者達がうつ伏せでピクリとも動かないのである。この場にいる女性がコレットではなくエルザだったら、発狂間違いなしだろう。
どこからか「もうっもう5日も寝ていない」とか、「お母ちゃん」とかいう声が響いて来るのは気のせいではないだろう。過労死一歩手前とはブラック企業ラトランダ家恐るべし。
その中、だった1人だけ、美しく並べられた、グリーンの1週間の成果の賜物であるスーツ等の完成品に感嘆の息を漏らす者がいた。
「アハ、アハハハハ!おい見ろよレッド?この総数5万を超えるスーツが全部宝具クラスの代物だぞ?」
「グ、グリーン?」
完全に目がイっちゃってる様子で半端絶叫にも似た声を上げつつもグリーンは叫ぶ、完全にドン引きなんですけどね僕は
「おまけにだ!俺専用の特殊スーツは、フレイヤによると神器5本!勇者の装備に相当するか越えるものだとよ!すげぇぇぇぇぇ」
「よ、良かったね...」
「オラァァァァァいつまで寝てるんだおいゴラ職人どもォォォォォ!!それでも世界一の技術者の看板背負った野郎の限界かぁぁぁぁぁ!!」
そう言いながら、グリーンは周りの人間をゲシゲシ蹴飛ばしながら起こしていく
「あ、悪魔だ...」
「マ、ママぁ〜〜」
「ああっ、もっと...」
最後の奴だけは本当に病院に行った方が良いと思うが、グリーンの鼓舞に釣られてノコノコと起き上がり作業を再開し始める
恐るべしラトランダの職人達、職人達元々いたのは、グリーンにとって僥倖だっただろう。作らせているのは超兵器ではあるが。
「今からぁぁぁ兵器の製造に入るぅぅぅ!設計図は渡した通りだ!!既に搬入予定日まで1週間を切っているぅぅぅ!死ぬ気で作れゴラァァァァァァァ!!」
イっちゃった目をしたグリーンと、イっちゃった目をしたラトランダ領の職人達の徹夜は止まらない。
後日、ラトランダ領の職人(50歳)はこう語る。
「まさに地獄でしたね、この世には死んだら冥界があるらしいですが、ご領主様が言っていました。この世には地獄があると、まさにあの通りでしたよ。極限の中私は思ったものです『あれ?人間って寝なくても生きられるんだ』ってね」
地獄のような短期間での装備を整え、パンドラの箱の面々に着ける。
グリーン率いるラトランダ男爵領連合軍と、マリス辺境伯軍(マリス辺境伯伯がいないので統括)でエリアド荒原に向かう。その総勢はパンドラの箱の面々プラスラトランダ領の面々合わせて1万2千人。
既に王国のライト王率いる王国軍5万、ベリアス率いる帝国軍3万、海洋国家ウォルテシア国王率いる4万の大軍がエリアド荒原前に陣をひいているという知らせが入っている。
既に拠点となる城の作成に取り掛かってはいるが、小さな平城になることは決定している。どちらかと言えば守る戦になるのは明白だ。
あと捕捉なのだが、魔族は正式に中立を宣言した。ゲンムから電話で『交渉、ダメでしたテヘ』とか言われているが、別に期待していなかったが、ありがとうとだけ言っておいた。
全ての仕事が終わり、グリーンは荷物搬送用のトラックの中で爆睡している。
グリーン
イエロー
レッド
「 元」多重人格者の3人に、再度戦争の火種が降りかかろうとしていた。




