召喚は成る
「オラオラァ!どけどけぇ!」
ドォン!ドォン!ダァン!
ぐほぉ!
ぐげぇ!
あびぁ!
「あの〜な、グリーンよ。もう少しさ手加減とかしねぇの?いやよ。吹き飛んでるよ?すげぇ空飛んでるよ?」
「わかってねぇなジャック」
そう言うと、オレはキリッとした表情でこう言う
「邪魔だから!どかせる!」
「酷すぎる...」
まぁ、ショットガンとか言っても、至近距離なら絶対助からないけど、遠くからの発砲なら、弾の一部が当たるだけで、なんなら骨折とかだけで済むかもしれない。
あくまでもかもしれないという話だけど。
「いや、正直その辺は自己責任っつーか...そもそもこれ対神用の兵器の1つだしね。」
「お前が神にすら通用することを視野に入れて作った兵器なんか、普通の人間が喰らって無事に済むわけねぇだろ!あ〜マジで怖い、まさかとは思うけどそれ量産してないよね?」
「秘密だ」
「絶対量産してるよな、いやどうやってあの鬼嫁を誤魔化したんだ!?」
とそんな会話をしているうちに、ぶっ倒した騎士から聞き出した、マリス辺境伯が歩いていったという場所に着く。
ドアは蹴破る。待ち伏せ?そんな気配がないのはジャックのお墨付きだし、もしいたとしてもすぐさまコイツの餌食だ。
オレの身体能力は人間の中ならトップクラスだし、ジャックも気配を読めないレベルなんて、イエローでも難しいレベルだ。伊達に盗賊やってたわけではないのだ。
その場所は、ただの、本当に単なる辺境伯の自室だった。辺境伯が使用しているベッド、机椅子、など、一般的な貴族の自室にある最低限のものしか置かれていなかった。部屋には辺境伯の他に騎士が2名、その身のこなしにありえないほどの殺気を感じる。恐らくこの2人が辺境伯騎士のNO.1.2だろう。
フルプレートで身を包んだその2人は、辺境伯を庇うように立っている。
てか、んぁ?儀式専用に作られた魔法陣もねぇ。人を蘇らせる魔法なんて聞くから、普通儀式用に使う贄も必要なのにそれもねぇ。なんか儀式かなんかだから、そういう魔法陣やらなんやらが組まれているかと思ったが、そういうわけでもねぇ。一体どういうことなんだ?
ーーグリーンのこの推理は当たっている。伝承でしかないことなのであやふやな知識であり、そもそも人を蘇らせることは禁忌なので、情報として少ないので王国にある図書館をかつてグリーンが読み漁った知識でさえ僅かなものしかなかったが、通常は贄として様々な高級素材が必要なのである。
「おい辺境伯、追い詰めたぞ、一発殴らせろ。」
「遠慮したいな、君に本気で殴られたら痛いじゃ済まなさそうだ。フォルテがもうすぐ来るから、そのまま大人しく待っていて欲しいもんだよ」
「なぁ、家族がどうとかの話は聞いてる。マリス辺境伯の家督は、息子にでも譲ればいいじゃないか。それまであと10年程度だろ?それぐらいまでは少なくとも領主やってやれよ」
「断る、私ではもういけないんだ。グリーン。人財に余裕があり、今や資金にも困ることのない。その圧倒的武力と財力のある君にはわからない。現在の王国貴族のほぼ全てに言えることだが、財政や人材難は逼迫しきっているんだよ。私は人魔戦争で死んだ同胞を生き返らせて英雄となってみせる!」
ハァ...
義兄ィ...いい加減にしろよ...
無能を棚にあげ、最早いない父や兄に思いを寄せる。確かに魔人大戦、その後のアイテールとの戦争は間違いなく不幸だったと言っていい。王国があそこまでの被害を被るなど誰が予想できただろうか?
それは不幸だった、あの2つの大きな事件は、歴史を大きく動かし、色んな人を不幸にした。しかし、それと現在置かれている状況は違う。
誰もが大切な人間が戻って来ることを願っただろう。だが、永遠はない。一科学者の立場としては認めたくない事実だが、この世に永遠に存在するものなどないのだ。非常に我慢ならんことだが、永遠に存在するものという仮説は、終わりが無ければいけない。その終わりは?という話になるからである。
蛇足が過ぎた。ともかく言いたいのは、「死者など生き返らせてどうする」ということである。
マリス辺境伯が今こうして、未だに自分の家族が戻って来るのを信じているのは、自分にフォルテという超強力カードがあることからの反動だろう。
強すぎる力は身を滅ぼすってこったな。
てか、暴走の理由魔王と同じかよ・・オレもいつか「世界征服するぜ!ヒャッハー!」とか言い出すのかな
「あ〜お前は多分ならないと思う。てかさっきから言動がちょいちょい悪役だし」
あ、心の声漏れてた?ジャック、正解だけど
そして、ワープゲートが2つ、マリス辺境伯の近くとオレの近くに2つ出現し、それぞれフォルテ、ウルフィアスがそれぞれ降り立つ、
フォルテはなんか滅茶滅茶体でかくなってるけど、見た目は完全にボロボロ、対してウルフィアスは五体満足、服すらも傷1つついていないという完璧な状況で帰ってきた。てかウルフィアス顔怖っ、あれか?某ジブリ作品のシシガミみてぇになってるんだが。
「いや〜強敵だった、危なかった〜。再生+適応逆襲&再生適応逆襲の繰り返しでようやく勝てたよ。」
「全然危なさそうに見えないんですけど」
ウルフィアスは、伝承にある羊と鹿を混ぜたような姿を一瞬で人間の時の姿に戻してフォルテに向き直る。
「さて、フォルテ、無理やり亜空界からこっちに急に戻って来たけどどういうわけだい?」
フォルテは既に片膝をつき、顔をウルフィアスの方に向けながらも喋り続ける。側ではマリス辺境伯が「お、おい儀式はできるんだろうな?指示通りにしてるぞ!」としきりに話かけているが、フォルテには無視されている。
というかフォルテの本気の姿デカいな
「イヤイヤ、流石は神と言っても私とハレベルが違いますネ。」
「謙遜するなよ、後次にグリーン君に殺気飛ばしたら本気でやるからな?私だって同胞を殺すのは憚られる、やりたくないんだけどねぇ」
フォルテの顔が、元から怒り顔のメイクをしているのだが、ギリッという歯ぎしりのような音がしたような気がした。そう思うと、フォルテも姿を元に戻していく。
仮面のメイクも元どおり白を基調にしたものに戻り、巨躯は普通の175センチぐらいの身長に戻った。
フォルテとウルフィアスの間には明確な力関係があるような気がすんな、てかウルフィアスが強すぎるんだよな、多分。
実際のところウルフィアスの方が神様歴は長いし、長生きしてる=強いとは言わないけど、肉体の劣化などを除けば、そりゃあ長いこと強くなるためだけに努力してる人がいれば、長ければ長いほど有利でしょうな。
「くくく...いヤ、単純に興味で戦いたかったのですが、まさかここまで明確に差があると少しショックですネ」
「一応僕の上は4人しかいないことになってるからね。この世界ではの話だけど」
「そうですカ...なら異世界から貴方を倒せそうな人を召喚しますかネ!」
そう言うと、フォルテは、あろうことか自分の手で、自分を貫いた。黒い血が辺りに飛び散り、辺りは騒然とする
「え、何してるんですかありゃあ...」
「わかんねぇ!ウルフィアス、何してんだあれ?自殺?」
「自殺...そんな性格してないだろ?アイツは」
ウルフィアスの知る限り、フォルテという男は自殺などという行為から最もかけ離れた人物だと言っていい。語ったことはないが、現在もその不死性を保っているという時点で、彼が神域に達しているのは言うまでもないが、それ以前に彼の性格を鑑みても自殺をするような人間ではない。むしろどんなに泥臭くても生き残り、人の愉悦を最後まで感じたい。短い付き合いではあるがウルフィアスがフォルテに感じている感想はその一手である。
「えェ!いや自殺ですがネ間違えなく!なにぶんつい先程まで自分が最強だとほとんど信じて疑ってなかったもので、いやウルフィアスにボコボコにされて鼻柱を見事にへし折られましたガ!」
自殺なのかよ、と心の中でグリーンは突っ込む。確かに腕は深々と、フォルテの心臓部分に入り込み常人なら多分もう死んでるレベルの傷なのは間違いないのだが、個人的には、何故そのような今自殺をする必要があるのか理解に苦しむ。マリス辺境伯も知らされてなかったのだろうか、???というのがお似合いな顔をしていた。
フォルテが深々と体に刺した手を引きぬく。その手には黄金色に輝く何かが握られていた。
「なるほど、そういうことかい!!」
そう言うと、何かに気づいたウルフィアスがフォルテに向けて一直線に駆け出す。フォルテは、血まみれになっていない方の手を地面に向ける。そこには小さいながらも先ほどまで確実になかった魔法陣が形成されており、そのままフォルテはマリス辺境伯にその黄金色の何かを手渡し、ウルフィアスの迎撃に入る。
「それだけはさせないよ!見落としていた...蘇生をするために必要な素材は魔法陣、契約者、そして契約の糧となる贄...」
「大正解でス!だからこそ私は神器を求めタ!だが手に入らなかった時点デ、私に残された道はこれしかなかったと言う訳でス。魔法陣は私とテ貴方には遠く及ばないものの神域に至ったものでス!即座に精製することなど容易イ!契約者は間違いなくマリス辺境伯さマ!そして契約の糧は神器に迫るほどの力があればいイ!神域に至ったものの命1つで十分に事足りるでしょウ!」
「何故!何故そこまでして契約を遂行しようとする!死ぬほどに、そこまで約束にすがる理由はなんだと言うんだ!」
「至極当ぜン!私は悪魔なのですかラ。言ってませんでしたカ?私ハ悪魔族!契約遂行は当たりまエ!なんだって願いを叶えてやるのが悪魔です!何もしない天使とは違ウ!この世で生を司るのが悪魔なんですヨ!」
血反吐を吐きながらもフォルテはウルフィアスの乱撃を裁く。ウルフィアスは素手で押し通ろうとしているが、フォルテはそれを、元の世界で言う合気道?のような戦法で上手く流しているようだ。
「くっ、グリーン君!彼を止めてくれ。」
「願え!契約者!我が主ジ!貴方の願いはようやく叶ウ!」
そこまで言うと、フォルテの目から光が消え去る。
ここに、恐らく歴史書のどこにも明記されないであろう、神柱10柱目、心理学者として、宰相として国の栄枯盛衰を見守りし英傑の1人が生を閉じた。
そして、それとほぼ同時に、その体の元の持ち主の最後の願い、「マリス辺境伯を守れ」この命令をただ遵守する化け物が誕生した。フォルテは理性を失った化け物と化してウルフィアスに襲いかかる。命を懸けたこの迎撃に足止めされているのが現状だ。
視線を向ける。目の前には、黄金に輝く心臓を持ったマリス辺境伯、その顔は混乱と歓喜に塗れていた。
「よせ!」
オレはそう言いながら、間に合わないと知りながらもオレは散弾銃をマリスに向かってぶっ放す。
歓喜の表情で、マリスはオレのことを真っ直ぐに見つめる。その顔は狂気に塗れ、後悔もない。そこにいるのはグリーンのよく知るマリス辺境伯という男ではなかった。ただの1人の愚かな男だった。
彼はなんの迷いもなく、心臓を握りつぶした。
グチュ
心臓が潰れる音。その音は、個人的に言うならばカエルが潰れたような。断末魔の叫びのない、それだ。
その心臓から溢れ出てくる黒黒とした血のような何かと、黄金がマリスの手から零れ落ちる。
その黄金と黒黒とした何かは混ざり合いながら魔法陣を覆い尽くし
直後グリーン達の視界を黒く染めた。




