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悪魔の始動-②

マリス辺境伯の館より、30名ほどの冒険者がわらわらと出てくる。


(ありゃあ、辺境伯のお抱え冒険者か?)


オワリの国の視察団でも護衛として辺境伯について来たような顔がちらほらと目に入り、グリーンは顔を顰める。


マリス辺境伯のお抱え冒険者は


Aランク3チーム

Bランク1チーム

Cランク5チームである。


それに加えて、扉の中央にピエロ顔の怪しい男が立っている。


Aランク冒険者で名前を覚えてるのは


『ビッグシールド』

大きな盾を持つ『戦盾』という特殊な武器を扱う兄弟と、魔法使いの3名から構成されるAランク冒険者チーム


アーラシュ(弓兵)

弓使いのレンジャーを中心とした部隊で、もっぱら他の冒険者の救助活動など、人のやりたがらない割に合わない依頼を率先して行う部隊。2人のAランク冒険者チーム


風月の獣使い(ケテルマルクト)

Bランクの猛獣を複数操る男がリーダーのAランク冒険者チーム、猛獣使いのリーダーを護衛する戦士2人と、レンジャー、魔法使いの総勢5名。


(冒険者の中で有名なのはそんぐらいか、後はーーッッ)


そのタイミングで様子を伺っていたグリーンに矢が飛んできて、馬車に突き刺さる。


あぶね〜


『アーラシュ』の2人が正確に矢を撃ち抜いてきた。恐らく御者を殺ったのもこの2人の仕業だろう。


獲物を狙う獣のごとく鋭い目がグリーンを捉えた瞬間には、既に眉間に矢は入っている、ということだ。


雨のせいか、人通りは多くない。それに雨のせいで、火矢などは使われないので馬車内、少なくともコレットは安全なのが救いだった。


「要塞モード」


グリーンがそう言って馬車の一部を操作すると、馬車内の様子が少し変化する。


馬車の部品の一部が割れ、中からグリーンの装備が出現する。これらの装備を素早く装着して準備完了だ。とは言っても本当に最低限のものしか持ってきてない。ベルハイムとの戦いの時に使った大型アーマーなど、義兄と会う時に持ってこれるか!という話である。


今は持って来てないことに激しく後悔してるが


馬車の中が少し変形して盾のようなものが馬車の窓ガラスを覆い、コレットを完全に守る。


念のためにコレットだけは守れるようにと、グリーンが細工を施していたのである。


さぁ、防衛の準備は整った、弔い合戦と行こうか!


そう思うと、グリーンは御者の男をチラリと見る。レッドとは未だこちらの世界のことを夢のような場所というファンタジーの目線で見ているかもしれないが、グリーン達他の人格にとっては、ここが彼らの永住する世界であり、故郷となるべき場所だ。そんな故郷で3年という短い月日であったが身近な人間を殺されて、黙っていられるほどグリーンは冷静にはなれなかった。


「ファムルス、ジャックは迎撃!オレも出る!レッグはここでコレットを守ってろ!」


「了解!」

「はいよ」

「任された、奥方は必ず守ろう!」


3人からそれぞれ返答が返ってきて戦闘が始まる。


辺境伯の冒険者達もそれぞれ武器を構えてこちらへと向かってくる。


開戦の口火を切ったのはファムルスだった。


ファムルスの丸太のような極太の腕から繰り出される拳を、ビッグシールドの2人が受け止める。


ゴンという、寺の鐘が鳴るかのような良い音を出しつつも、ビッグシールドの2人の体が若干浮く。


Sランクの拳をモロに受けたからと言って、そこは流石Aランク、2人がかりで押されはしているものの、なんとかファムルスの拳を受け止めた。


フルスイングの拳を止められたことにショックを受けるファムルス、しかし次の瞬間には2人の頭上からつららの雨が降ってきたことを確認し後ろに避ける。


なるはど、堅実な戦法だな、ファムルスの攻撃を2人が絶え、その間に背後の魔法使いが必殺の魔法を放つ。


「おいおい、ここで子供ん時からの憧れの人...と戦えると聞いたんだが?楽しみだな兄貴、ところでファムルスさんはどこだ?美麗な超イケメンと聞いてるぞ俺は!」


「目の前にいるのがそうだよ!馬鹿野郎、楽しんでる場合か!次来るぞ次!」


「後方からの支援魔法が厄介ですが、先に中々進ませてくれないとは...鬱陶しい!」


鼻息荒くそう言うファムルスに対して、ビッグシールドの2人の弟は不敵な笑みを浮かべ、兄は怪訝そうにため息をつく。


ガタイならばファムルスより2人とも少し小さく、恐らく筋力でも勝てないとは思うが、後ろで妨害や支援のために魔法を放つ魔法使いが厄介だ。


「く...クソ!」


一方その頃ジャックは「遅いな〜」とか言いながらAランク冒険者アーラシュの2人の矢をキャッチして適当に捨てながら近づき、接近戦にもつれこませていた。


「基本的にさ、弓って向きはわかってるんだから、指先を放すタイミングを一度見極めちゃえば」


こうだよ、と言いながらもう一矢も掴む。


「ありえない...」


そう言いながらも接近戦に持ち込もうとするアーラシュの2人。その2人のナイフを素手で捌くジャック、あっちは問題無さそうか...


問題は、こっちかな?


問題は、オレとレッグの荷馬車守護組である。


レッグが襲いかかってくるBランクモンスター5体を、殺気を振りまいて威圧しつつ、冒険者5人の相手をしている。レッグも銛という武器を上手く使いこなしているように見えたが、いかんせん数が多く、苦戦しそうだ


「まぁオレも一応領主だし?戦わねぇと格好はつかない訳だけどね?」


守られるだけの領主になどなるつもりはさらさら無かった。この3年で得てきた武器は、何も鎧だけではない。


Bランクモンスターの何体が標的をこちらに向けて側面から馬車に襲いかかろうとする。


そもそも戦場に革命をもたらしたのはなんであろうか?日本史において戦場に革命をもたらしたのは剣、弓、特に弓なんかは元々狩猟なんかで多く使われていたことを理由に、戦で弓を使った戦術が組み込まれたのはかなり早い段階でだ。


次に馬、武田の騎馬隊、個人的には戦術として多くの粗や弱点はあるものの、馬が戦国の世において流通など戦場以外の面にて大活躍したのは言うまでもない。


その後の世で、戦車やミサイルが開発されたとしても、人類はそれを主力武器として使用し続けた。


恐らく、人間の世で最も多くの生き物の命を奪った武器。それこそが


「銃...散弾銃(ショットガン)だ」


ズドォン!


グリーンの手元にある、この世界で最も硬い金属...神鉄鋼を使用して作り出された、コレットがくれた少ない休暇と小遣いの中でグリーンが生み出した武器の1つである。


見た目はシンプルなモデルとしてモスバーグSGを採用しているが、外装は元の世界で獲れない素材を多数使用しているせいか、色はグリーンが想定していた鮮やかな色あいから黒色にほぼ統一されており、その中に多少の灰色の装飾が施されている。


性能としては恐らく元の世界の最新鋭の技術をそのまま受け継いでおり、近距離特化、リロード不要など、その他様々なグリーン独自の技術を駆使した機能も備わっている。


ともかく、そんなグリーンのSG(ショットガン)『雷電』は、バチバチという火花が散るような音を出したまま、猛獣の頭を吹き飛ばした。


剣戟が一瞬とまる。


その爆音に猛獣が怯え、冒険者達の動きも止まる。


その一瞬の隙を、見逃す3人ではなかった。


「ストレスのかかる戦いでした!全く!」


そう言いながら再度、ファムルスの剛腕がビッグシールドの2人の盾を完全に破壊し、その向こうにいる魔導師をも気絶させる。


「銃声とか、ラトランダ領で散々聴き慣れてるからなぁ〜確かに何も分からんときゃびっくりするわなぁ」


次にジャックがアーラシュの2人組を縛りあげる。


なんか、エルフの女性と人間の男の2人組だったんだけど、亀甲縛りすんのやめない?ジャックさん


「趣味です」


変態だ・・


そんな風にドン引きしていると、レッグが猛獣使いさんの首筋に銛を当てて、猛獣達を退かせていた。


魔法使いは、隣で気絶していた。レッグの殺気にやられたのかよ、弱いな


「チクショウ!よくも俺の可愛いマリリンちゃん(猛獣)を!ぶっ殺してやる!」


「・・殺していいか、こいつ」


駄目です。


こんなところでこの猛獣使いを殺せば、統率の取れなくなった猛獣達が何をするかわからないしね。コイツだけは生かしておかないと。


取り敢えず、BランクとCランクの方はビビって襲いかかって来ないし、終わりかな?


そんなことを思っていたグリーンだったが、世の中そんなに甘くなかった。


パチ、パチ、パチ


「見事だったよ、流石はと言ったところかな。」


気づけば、冒険者達を制圧させた俺達の前に、平静を守っていた、一際雰囲気のあった冒険者が傘を差してマリス辺境伯に指す。


ピエロのような風体の男...イエローの報告にあったフォルテとかいう男か。


第10柱、フォルテ


神話を見ても、勇者に試練を与えた人物である。そのえげつなさはウルフィアスを超え、ウルフィアスはまだ勇者を保護しようとしていたが、フォルテは完全に勇者を殺す気の試練ばかりを放っていたとされる。


史実でも内政などでその力を発揮した有能な男だったが、その男が使えた国や人物は悉く滅び、ロクな末路を迎えないことで有名だった・・らしい。


そんなフォルテはピエロ大の体を真っ直ぐに立たせてマリス辺境伯に傘を差している。


マリス辺境伯は、金と白を基調とした、正直元の世界の経験があるグリーンからすれば「成金風味の」格好をしていた。手にした指輪は奥方との結婚指輪か?人の目玉ほどある大きなサファイアをつけ、悠々と屋敷の石畳の上に立っている。両目は、間違いなく馬車の前に立つグリーンを捉えていた。


「クソ、他にも可能性は考えてたんだ・・冒険者達が反乱を起こしたとか、家臣の独断での暴走とかよ。そんな可能性が全部すっ飛んだじゃねぇか反逆者が!!」


いつからだ?グリーンは過去を遡って思考を始まる。


だがわかるはずもない、グリーンが始めてマリス辺境伯と会った時、つまるところ王都で貴族の位を受勲された時点で、フォルテはマリス辺境伯に仕えていたからだ。


「反逆者とは人聞きがが悪いな、それにびっくりしたよ、まさか急にうちに来てしまうなんて。あういう招待状は、貴族の社交辞令のようなものでね。まさか本当に来るとは聞いてなかったよ。」


「あ〜そっちにそのピエロ野郎がいる時点で色々察してるだろ?別にアンタの息子を見に来ただけじゃないんだ。怪しい儀式しちゃってますよね。」


「あぁ、フォルテだよ。()()()初対面だろうけど」


「個人的に同じ顔の方と3回既に会っているのデ...とても複雑ですネ。」


「あぁ、そうだったな。まぁ私は家族を蘇らせらせたいだけなのでな。君にはいないのか?そういう人が」


「いなぁなぁ〜興味ねぇ、少なくともこの世界にはいねぇな、それによ、人の魂が保全されてない状態での復活は、アヌビス神との盟約に反するって神書に書いてあったんじゃね?」


そう、神話では、アヌビス神での古い盟約、冥界の番人として、「一度死に、魂が保全されてない状態での復活は、神の逆鱗に触れるところであり、事実我々より前にこの地で栄えた一族は、アヌビス神の怒りに触れて絶滅した」とされる。


「??何を言ってるんだグリーン?ここに神はいる、フォルテがいるではないか!神が認めてくれている否!」


そういうとマリス辺境伯は興奮したように叫ぶ


「もう神など恐れる必要はない!君が倒したじゃないか!第五柱のアイテールを、あの邪神を倒した!もしアヌビスが来たとしても、万が一あの伝説の化け物が来たとしても恐るるに足らんのだよグリーン!」


あ、馬鹿になったか?マリス辺境伯、ここまで自分が敵対行為をし続けているのに、オレがお前に味方する訳ねーだろう。


まあいいや、なんか目がイッちゃってるし、フォルテに洗脳でもされてるんじゃないか?


「断る、神と戦うなんて一度で十分だ。」


「なら、私と相成れることはないな。フォルテ、後は任せる。私は儀式に戻る」


マリス辺境伯は残念そうな顔を一度だけ見せて、それだけ言うと屋敷に戻っていく。


そう言うと、フォルテがこちらを向いて立ち上がる。それに追随するように先ほどの戦いに不参加だった奴ら、BランクCランク冒険者達と、マリス辺境伯に追随するように出てきた騎士達が抜刀する。


ヤベェ〜〜


こちらの戦力は馬車に摘まれた武器達、それも女神の加護持ちの俺しか扱えないトンデモ近代兵器達のみだ。身体能力じゃあオレは絶対フォルテにゃ勝てないだろうしな。


こちらの戦力はファムルス、ジャック、レッグ。


レッグはAランクより上、ファムルスジャックはSランク冒険者とそれ相当の実力は持っているが、神の1人に対しての戦力としては心許ない。


Aランク冒険者を道の端に転がして、護衛の3人もこちらに来た。


もう少し護衛多めに連れてくるべきだったかな〜?などと後悔している場合ではない。


「行きなさイ!」


フォルテの号令と共に冒険者達が一斉に斬りかかる。


館の敷地を超え、門の前にある馬車に近づこうとした瞬間に、それは現れた。


オレのSGの音なんかよりも10倍以上の轟音を掻き鳴らしながら降りてきたのは


「いや〜フレイヤが嫌な予感がするって・・彼女レベルで中を見通せない呪術をかけられるのって神域に達してないと無理な訳でしょ?きな臭い臭いプンプンじゃないのよ。そう思ったらこれだよ、フォルテかよ〜辛いね」


そう言いながらパンパンと砂埃を拭うその男は、縮れた毛をクイクイと弄りながらも不敵な笑みを崩さない。


間違いなく、この男は


神第5柱、ウルフィアスであった。








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読んでくれてありがとうございます! これから全10章、毎日投稿させていただきますので、是非よろしくお願いします @kurokonngame くろこんでツイッターもやってますので、繋がりに来てください。
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