カゲの心配
カゲさん 72歳
人魔大戦で部下が大勢死んだので、また最前線に駆り出されちゃった人手なくてガン泣き系爺
ガウェインとか赤ん坊の時から知ってるので、仲良し。勿論主従関係として、ヘリンとも関係は良好。
性格はおとなしめ仕事できちゃう爺さん。
イエローと気が合いそう。読み合い全敗だけど
(あれが、たかだか19の小僧の考えることか?全く恐ろしい時代になったものだな)
木の近くで影に紛れて立つ、黒一色にその体を染め、短いナイフを片手に皺くちゃとなったその顔を歪めて、その70代ぐらいの老人は再度そう思考した。
『カゲ』
この国でその名前を知るものは、ヘリンとガウェイン2人しかいなかった。今、新しい王であるライトにもその名前は知られたが、それは彼が王になってからである。
この世界の情報源は、『人』の手によって行われている。ということはいずれにせよ高名な人物としてその筋で有名になってくるものも多い。
オワリの国の女忍部隊
『モチヅキ』
商人に扮して諜報活動を行うウォルテシアのスパイ
『アリババ』
その2国に比べても、否足したとしても圧倒的にカゲが上回るとガウェインは断言する。こと諜報、隠密活動にて彼の右に出るものはいないと確信していたし、カゲとてそう思っていた。
『カゲ』は王国にてすら、その名前を知るものが少ない。他国でその名前を知っているのもなど、片手で数える程度しかいないだろう。
だがそれでいい、一流の諜報員は名前が知られてはいけないのだ。優れた諜報員とは、影に生き、影で死んでいく生き物なのだから。そしてそれを、カゲ本人も誇りに思っていた。
赤ん坊の時よりガウェインの身の回りの世話をして来て、後進に後を託そうとしていたその時、その男は現れた。
カゲをして勝てんと思わせる存在。
それが、新しい王国貴族、グリーンだった。
その男は、何もかもが予想外だった、たまたま神器に選ばれた戦士。アロンと同じタイプかと思っていたが、そうでもなかったらしい。
その男、グリーンと名乗った神器使いは、長く続いた中で魔物の巣窟と化していた貴族社会を悠々と泳ぎきり、その卓越した情報収集能力と目端の利くところは、往年の貴族を思い出させるところだ。
その他にも、ラトランダ領のあまりにも常軌を逸した発展など、カゲという政治にはあまり関心のない老人でさえ、現在の状況が王国によってあまり好ましくない状況であるのは理解していた。
なのに、ガウェインもライト王子も『問題ない』の一点張りで取り合う様子がない。
その理由は、グリーンの妹のピンクという女性を王都に囲っていることが自信の源なのだろうか。
それならばその考えは甘いと切り捨てざるを得ない。いざとなればいつでも切り捨てられる人質同然の肉親など、価値がないのだということをあの2人はもしかしたら理解できていないのではないか?
今の一連の行動とてそうだとカゲは確信する、現在、イエローと名乗る、グリーンの補佐役を務めている仮面の男は、誰にも認識されることなく、悠々と道路の中央を歩いている。その気配の消し方は一般人はおろか、我々ですら注視していないと気づかないレベルで、怪しげなスーツもそれを助けているのかと目を見張る。
正直ちょっと欲しい。
そして、もう一つ、彼は恐らく動向を監視している我々に気づいた状態で旅を続けている。
恐らく、こう私が気づくことすら、イエローを名乗る男は読んでいるのだろう
この人間が、グリーンの脳幹であると、カゲは確信し、引退した老骨に鞭打ってこのイエローという男の監視に参加した。
ガウェイン王やヘリンからは必要ないと再度言われたが、念には念を入れるべきだろう。
長らくこの生業をやって来たが、ターゲットに気づかれるなど、カゲの歴史において初めてのことだったが、見張られていることを考慮しての行動となると、カゲには彼の底を見通すことができなかった。
そして、イエローにさりげなく手紙を渡した少年、あれもラトランダ領に仕える人間であるとカゲは確信した。
追いかけるか?いや、私がそう気づいたことすら、イエローは知っているだろう。現在ハンドサインをだし、イエローの周りから気配が1人消えた。
恐らくあの未熟なメッセンジャーを逃しにかかっているのだろう。私が捕まえられる可能性は低い。
そんなことで手間取っている間にイエローに逃げられてしまっては本末転倒だ。
カゲは追いかけるのを諦めた。
動向の監視を続ける。彼がウォルテシアへと行って何をするのかは不明だが、何かあった時は・・
カゲは、暗い木の陰よりその姿を少しだけ表し、ギシリと歯ぎしりした。
◇◇◇◇
「グリーンが裏切らないと確信している理由が知りたい?」
「左様でございます陛下、今では彼の持つ力は、にわかには信じがたいですがケイアポリス王国を超えており、また各国との交易も、王国よりも盛んに行われています。このままですと、危険分子になり得る可能性もあります。一刻も早く対策を練らなければ」
最近この手の輩が多いと、ケイアポリス新国王、ライトは目の前の太った貴族を前にしてため息をつく。そもそもコイツ誰だよ。
まぁ本気でこの国を考えている者が2割、グリーンの成功を妬み、あわよくば利権が欲しい貴族が8割といったものかとライトは邪推する。
たしかにこの貴族の言う通りグリーン率いるラトランダ領の発展は異常だが、どう考えてもあの男が反乱を企むとは思えない。というか思ってなかった。危機管理能力が欠如していると言われればそれまでだが、一応対策は練っているし、今は何より先のアイテールとの戦いにて王都以外の都市にも被害が出ており、グリーンからもたらされる技術の放出はむしろ有難い者であった。
「グリーンは我が友である、それではいけないと言うか?それに、奴の妹と義父である伯爵も現在は王都にいてもらい我が助けをしてもらっている」
「いいえ陛下、それだけでは不十分です。今まで続いてきた王国の平和が今!未曾有の危機に晒されているのですぞ!今すぐにグリーンを王都に置き、監視を置くことが、王国の平和への近道になるかと」
それで、その監視役を自分にとか言い出すのだろう。そうライト王はこの貴族の思考が透けて見えるようで、あまりのその浅慮にため息をついた。
馬鹿な、お前や、お前の飼っている技術者ではグリーンの技術を理解することすらできていないではないか、魔導車の解析すら進んでないくせに。
グリーンが諸国と友好な関係を気づけていると知っていながら、何故グリーンの処遇をこれ以上キツくする必要があるのか。グリーンの身柄を巡って戦争が起きるぞ。
大体、王国に対してなんの不利益もおかしてないのに、何故グリーンを王国の監視下に置かなければならないんだ。 そもそも、ケイアポリス王国全体よりもラトランダ領の勢力が上回ると認めながら、そんな喧嘩を売るような処罰が下せる筈もない。
どちらかと言えば貴族と言うより文官気質なアストルフでさえ、その微妙なパワーバランスを察知し、現在も内乱の炎が燻っているアルノ領をほっぽって王都の仕事に従事しているのだ。
目の前で自分の利益のことしか喋らないこのような人間が、王都内ではキレ者と言われていた事実にライト王は呆れるしかなかった。
「ともかく、現状ラトランダ男爵をどうこうする気は余にはない。控えろ」
「陛下、今一度ご再考を!陛下ァーーっ!!」
うるさいデブだ、そう思いながらライトは王の間を出て行く。
後には、1人の貴族が取り残されるのみとなった。
ちょい捕捉
アルトラフ伯爵のコレットが根っからの愛国者というか、愛国者の塊のような家なので、現状この2人に逆らえないグリーンはこの2人が国を見捨てない以上、この国に離反する必要も離反する意味もないでしょう。
というか、王様になりたいというよりはグリーンは普通にコレットとスローライフしたいだけですので。
ライト王が、グリーンに反乱を起こさせないために何をしてるかは秘密です
それには神様をも倒す力が必要です。だから鎧の研究もしてました。
というか、
ラトランダ男爵ではなく
ドラモンド男爵じゃね?
も思い始めた。




