2柱 死の神
異世界へ行くことを決意した輝赤の前に
あのキャラが復活!?
光とともに、僕はまたあの世界へきたのか...と思ったら、そこはただ真っ暗闇な世界だった。
え?失敗したのかな、そう思ったが隣にはウルフィアスさんがいる。ウルルィアスさんは身体中をほんの少しだけ光らせており、どうやら転移に失敗したわけではないようだ。
「あぁ、すまないね言い忘れていた。実はね、今回のアヴァロムへの行き方は少し違うんだ。ほら、君がまた記憶を曖昧にされてはたまらないからね。だから別ルートを通るんだ。」
「そうなんですか、どういうルートなんですか?」
「死者の行くルートさ」
「 え?それって天国とか、地獄とかいうことですか。ここは」
「そう考えてくれてもらって差し支えないよ」
しかし、そこは本当に真っ暗闇だ。小さい頃、ベッドで初めて1人で寝た時、例えようもない不安感から眠れなくなった記憶がある。
今感じているのはそんな雰囲気だ、いや、大人になったからこの程度しか感じないだけで、実際はもっと恐怖は大きいのかもしれない。
ウルフィアスさんは、前だけを見て歩き続けている。こんな例えようもない暗闇の中を、ただひたすらに歩き続けて、その先に何があるのか。
僕にはわからなかった。
「ついた、ここだな。輝赤くん、ちょっと止まってくれるかい。」
そう言われたので、僕はつられて立ち止まった。
何があるんだろう?
「ここからは、無礼のないように頼むよ。これから君は神の2柱目に位置する男に会うことになる。まぁ彼なら大丈夫なんだろうけど・・」
「アイテールとかの仲間ということですか?」
「あ〜そうだね、僕やフレイヤも含めた11名の神と崇められた者達の1人。神様の中では2番目に強い。」
「そ、そんな物騒な人と会うんですか!」
「おいおい、心外だな。手前そこまで野蛮ではないぞ。」
暗い闇の底より、声が聞こえたような気がした。その声は、まるで空洞のようにこの空間一帯に響く。その声は決して怒鳴り散らしたり、大声を出したようなものではない。しかしながらその声は僕の中に響くような暗く、低い声だった。
目の前の、真っ暗闇のような空間が徐々にもやのようになって集まりだす。
そのもやは、何だったのだろうか。そう聞かれれば僕は、こう答えるしかなかった。
『影』であると
その影は、ゆっくりと形を形成していき、人の形をした、犬のような頭の生き物に変化し、やがてそれに色のようなものをつけられて、それはようやく生命と化した。
それは、犬の頭を持った、人間の体と似たもの持つ生き物だった。全身は闇と同化したような黒い毛色、犬としてはジャッカルという犬種のものが正しいだろうか。しかしながら彼の服装は、まるっきり僕の描いていたイメージと異なり、和装だった。
着物を着ており、頭には傘のようなものをつけている。袖から伸びる犬の毛をした、人のような手は、確かにそれを彷彿とさせた。
身長3メートルもの体躯が、僕を目下ろす。暖かい目では決してない。むしろ冷たい目だ。だが敵意は感じない。
僕は、これを知っている、古代の神様、エジプトとかで崇められていた神様
「アヌビス神・・・・!!」
「左様、そちらの世界ではそう呼ばれているな。いかにも手前はアヌビス。死の神だ。」
◇◇◇◇
「ここで僕の世界の神様に出会えるなんて」
「いや、まぁ正確には、そちらの世界にお邪魔した時にそこの原住民にたまたま見つかってな。そちらでも崇拝されているとは、誠運命とは数奇なもの。ところでお前がアイテールを倒した者か?神器に選ばれし者よ」
「は、はい。不意打ちですけど」
「カカカ、不意打ちでも我らを抑えるとはこれまた素晴らしい。貴様に会えただけでも、今回の件を引き受けたかいがあったと言うものだ。是非一手試あい、と思ったのだが、神器もないのでは話にならんな。またこちらに来たら、相手をしてもらおう」
「お、お手柔らかに。ここが死の世界ということは、ムサシさんなんかもこの場所に来るということですね」
「あぁ、少なくともアヴァロムで死んだ者は例外なくこの場所へと来る。意識もなく、苦痛もなく、乾きもない。ただただ無の世界、それがここだ。」
そう言うと、アヌビスはパチンと右手を鳴らす。
そうすると、途端に青白い光がアヌビスのとなりに出現した。そこには、懐かしい人物がいた。
「よう、グリーン。久しぶりだな」
「む、ムサシさん!」
そこには、間違いようもないムサシがいた。最後に彼を見た、そのままの姿の彼がそこにいた。
「どうしてもって頼んで出してもらったんだ。悪いなグリーン、勝手にお前から去ってしまった。どうしてもケリをつけたくてな。」
「いいえ、アイテールと戦えたのはムサシさんのおかげでした。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ、またアヴァロムに来ちまったんだって?勇者の奴も言ってたぜ、一度フレイヤに目をつけられると厄介だってな。」
そう言うと、ムサシさんはいつも通りの笑顔を見せてくれた。本当に短い間ではあったけど、彼の笑顔はいつも僕を、みんなを笑顔にしてくれていた。その笑顔が見れただけでも、僕は幸運だった。
「お前にとっては見知らぬ世界かもしれねぇ、だが俺にとっては大事な故郷だ。頼むグリーン、守ってくれ。」
「できる限りのことを致します。お約束します」
そう僕が言うと、ムサシさんは満足したかのように、笑顔で消えた。
「カカカ、手前に食ってかかるほど強烈な未練を持つ男なぞ久し振りに見たぞ。大抵の者は手前の圧に押されて言えぬというのに。」
「アヌビスさん、ありがとうございます」
「アヌビス、ありがとう。お礼の予定だった、お前の体については、今度送らせてもらうよ」
そう言うと、ウルフィアスは自分のポケットから2メートルほどの大男の人形をだす。
黒い、端正な顔立ちをしたウォルテシアにふつうにいそうな男だった。
「おお、これがアイテールが使っていたという自作の体か。これで私も下界に降りて色々やれるということだな!」
「あぁ、好きなだけ飯でも食ってくればいいよ。」
「おお、感謝する。お礼と言ってはなんだが、先日フォルテが手前のところに来たぞ。」
「え、あの男が来て、何をしたんだ?」
「いや、世間話だけだったのだがな。一応話をしておこうと思ったのだが」
「あの、フォルテって誰ですか?」
「あれ、輝赤くんは知らないよね。神柱の1人で、ピエロのような男のことだよ。りょーかいアヌビス、フレイヤに伝えておこう。じゃあな」
「お前もたまには世間話をしにこい、死人と話すのも飽きたのでな。」
「わかった、行くぞ。輝赤」
「はい、ありがとうございました!」
「おう、手前ここから動けんのでな。死ぬのを待っているぞ!」
「それは勘弁してください。」
未だ暗闇の空間を僕とウルフィアスさんは歩いて行く、そうすると今度こそ、あの世界へと広がる光が見え始めた。
行くぞ!アヴァロムへ!
輝赤達がいなくなった世界で、アヌビスは1人大の字で寝転ぶ。
ここは冥界、人が無気力にただ生きている場所。人々が思い思いに夢を見る場所。
「あっ、フォルテが何を言っていたか言うのを忘れていたな」
そう言うと、アヌビスは首をコキコキと鳴らす。まぁいいか、どうせ戯言だし。
さほど重要なことでもあるまいて
だってそうだろう?
『もう少ししたらお世話になるかもしれない、など。』
神が、神と呼ばれた男が。そう簡単に死ぬなどあり得る訳あるまいて。
闇が、動く




