創り物の神は笑う
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「...まだ、届かないのか?!」
ベリアス達はアイテールの内部に入り込むことに成功し、その内部を斬り、叩きながら中枢部へと進んでいく。
女神が言うには、創りものの神の内部には、必ず核となる心臓部が存在するらしい。それを破壊することによって、前回は神の創った怪物を完全に倒すことに成功したと言う。ベリアス達も、それを目指しひたすらに掘り進む...しかし
「再生能力が凄まじい...これじゃ内部に入るどころか、肉に押し潰されそうですな!」
「わかっているなら手を動かせヘリン!こんなところで生き埋めなどごめんだ!」
「くっ...あの触手地獄から解放されたかと思ったら、今度は生き埋めになりかけるとはな」
「ここにはベリアス様、ヘリン殿、ルーカン、そして私しかいませんからな。少数精鋭にしても少し無理はあるでしょうな」
「黙って殴り続けろ!アリー!」
「......確かにこのまま掘り進めれば前には進める...だが再生能力が凄まじい...外が大きなダメージを与えてくれなければ我々はここで圧死する。我々が核を破壊しなければ、外にいるもの達も危険だ。だが...一体どこに核があると言うんだ...」
ベリアスは、未だ見えない出口に不安と焦燥を隠しきれずにいた。
しかし信じるしかない、前に神を破壊したと言うサブローという男も、これを2体やったと言うのだ。
これを2体だぞ?正気とは思えない。
しけしやった人間がいるのだ、それが女神に選ばれた特別な人間であるとしても、同じ人間だ、我々にできない筈はあるまい。
ベリアスは再度決意を固め、力強く神器...シャルトスの穂先を前に突き出すのだった。
「喰らいなさいっ!」
エルザの触手を交わしながらの斬撃が、アイテールの肌を裂く。
「全く、飛べないってのがこんなに辛いとはね、下部分しか切れないじゃない!」
彼女も自らの宝具を操りアイテールに傷をめったらつけ始める。ベリアス達が無事アイテールの中枢部に入り込むためには、アイテールの回復能力をこそぎ落とすしかない。
できるだけ外身に回復能力を回して欲しいしね。
エルザ以外のパンドラの箱の面々も攻撃をしてはいるが...いまいち決め手に欠けるようだ。
ファルムスは素手でアイテールと正面から殴り合っている。豪腕がうなり、アイテールの体を潰す。
あれ、倒せそうじゃない?
四聖の攻撃が、アイテールの体を抉る。だが致命傷にはなり得ない。
幹部天使の攻撃も、アイテールには届かない、精々触手を減らせればいい方だろう。
兵士たちの矢がアイテールの触手にあたるが、止まらない。精々目くらまし程度にしかならないものだった。
当然である、何故なら本当に目くらましなのだから!
この攻撃は、全て、1人の男を活かすための一撃だった。
兵士たちの弓が止んだのと、ガウェインの助走が始まったのが、ほぼ同時だった。
ガウェインは、右手にガルノバルクを、左手に手綱を取り、アイテールに走り始める。
馬鎧型の宝具「セイレム」
その鎧は王が認めた馬、1馬にのみつけられる。その速さは馬の持つポテンシャルを最大限に活かす。
その速さは矢を越し、空を舞う伝説上の生物「天馬」とその馬を変える
その速さは、この中の誰もが知覚すらできない位置にまで達した。
そして振るうのは名剣「ガルノバルク」
振るえば振るうほどその力を増す。ある種経験値のような値で力を増すこの名刀の強さは、ガウェイン王の修練の賜物だ。
ペリモーンズの爪を破壊したのはその能力のためだ。ガウェインはあの攻防の最中強さを底上げし、ペリモーンズの防御力を超えたのだ。
蓄積された強さが、今アイテールを捉えるーーー
その一刀は、宝具としては最低の切れ味を持つガルノバルクではアイテールの肌を切ることは叶わなかった。だがそれで十分であった。彼の目的は、セイレムの加速力とガルノバルクの突進力で、アイテールの体を揺さぶることであったからだ。
その一撃の余波はアイテールの内部まで響き、アイテールの内臓をズタズタにする。
「...私がやれるのはここまでだ、あとは自らの手でなすがいい...大丈夫だ。新たなる王の力、見せてやるがいい。」
そんなガウェインの祈りは、叶った。
その光はアイテールの体から漏れたものだった。
一瞬の偶然にも見えたそれは、確かにアイテールの身体中から漏れ出し、ゆっくりと、破裂した。
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そこは空洞のような空間だった。肉の塊はもう迫って来ない。どうやらここが中枢部で間違いないようだ。
ピンク色の肉の壁に囲まれた壁の中央に、紫色の丸い毒々しい色をした、人で言う脳のような形をしたそれが、無防備な姿で君臨していた。
息も絶え絶え、満身創痍を体で表したかのような一行は、ベリアスを除き、その場に崩れ落ちる。
ルーカンは大の字で寝転んでいる
ヘリンは仰向けになって一見死んでるように倒れている。
アリーは四つん這いになって息を整えていた。
ベリアス本人も、旗槍を杖にようやく立っているレベルだが、それをおくびにも出さない。それは、目の前にいる少年に対する虚栄か、それとも、国の代表としての責務だったのだろうか。
その少年は白髪の男だった、美しい白衣にその身を包み、何かを愛でるかのような目でベリアスを見ている
「まさかこの姿がオリジナルだったなんてな、思いもよらなかった...記憶の片隅に残っていたこの記憶、これが私を創ったオリジナルの記憶だったとは...まぁいい。」
白髪の少年がそう呟くと、少し中心部が震えた気がした。その振動はベリアスの体をぐらつかせるほどのものだったが、少年はなんの気もせずに話す。
「自己紹介が遅れた、私はアイテール...の造りものかな。そう気づいたのはほんの先ほどだったが」
「なんの話だ?」
「お前達が気にすることではない、いや重大な問題か、私は単なる神によって造られた創り物だからな。今お前達のグリーンと魔王が私のオリジナルと話をしている。まぁ十中八九戦いになる。奴らの命はない。」
「.........」
ベリアスは黙りこくる。新情報、新しいアイテール。
しかし...
「問題にはならないな」
「ほう何故だ?若き王」
「新しいアイテール?そんなもの現れたとてこちらにはもう撃つ手はない。父上の魔力もライトのゴーレムも限界。四聖も連戦は辛かろう。こちらの出せる手札は切り尽くしている。」
そして、とそうベリアスは続ける
「私が認めた男と、倒した者が組んで戦うのだろう?なら問題はない。信じて...私は、王国は2人を待とう。」
そう言うとベリアスは旗を再度前へと向ける。この剥き出しの中枢部を破壊し、人の戦いをひとまず終わらせるために。
「そうか...ならそのことは置いておこう。言っても仕方のない話だ。確かに私の中枢部「脳幹」これにはなんの防衛策も講じていない。そもそも私の中に入ることがそもそも想定外なのだよ。人間がここまで成長してるとは予想外でね、むしろ成長してないのは私だったという話は皮肉だな。」
アイテールはそう自嘲する、ここにいる自分はほんの精神体のような存在であり、戦闘能力は皆無だ。
つまり詰みである、逃げ場はない、結局私という存在に意味はあったのだろうか?
全てを諦めた今となっては、それを思考する他ない。
いや、自分は壁となったのだ、人が成長したという証のための壁に。
昔は勇者1人が突出した力を持ち、それだけで我々神の創り物3体を撃退した。
そして今...宝具を生み出し、人間は、生命はこうして我々に対して効果的な対策を生み出した。
それが見れただけで十分だ。オリジナルが求めていた速さに比べれば遥かに遅いが、それでもいつか人々は神を超える。その力に追いつくだろう。
くそ、もう少し眠っていれば良かったか。
いや、そしたら、次は一瞬で消し炭にされてしまうかもしれんな。
アイテールは、ちょっと悔しそうにそう呟くと、ベリアスが脳幹を貫く様を、じっと見ていたーーーーー
その一撃を、神はどんな思いで見るーーー




