四聖の集結
主人公視点に戻ります
戦闘シーン...頑張らねば...
松岡輝赤、第一陣!
ゆっくりと、レッドは右手で剣を、左手で盾を構え、アイテールに相対する。
アイテールは、レッドを注視したまま動かない。その100を超えるであろう眼は全てレッドを見ており、そしてその目は、まるで道端のゴミを見るかのように無機質で、冷ややかだった。
ーー本来、レッドとアイテールの間には決して埋められない戦力差がある。
そもそも、人格最強であったクロと互角の戦いをした魔王ですら、ムサシと協力してようやくアイテールの足止めができた程度だ。素体のレッドではお話にならないだろう。だがレッドには神器がある。1つ足りないが、確かにほぼ全ての神器がレッドの装甲として吸収されているのだ。それに合わせて、ガウェインやベリアスなどの王都の人々もいる。
勝算は十分にあるように見えた。
「懐に入り込め!グリーン」
そう言い口火を切ったのはアロンだ。
アロンの両手には、先程ガウェィンから下賜された宝具がある。雷のようなデザイン、黄色一色の弓は、名を「ライガ」と言う。
能力は弾数無限の雷をまとった弓をぶつけることができるという能力だ。
アロンの雷撃がアイテールの目の1つを焼き焦がした。
「後ろは任せろ、グリーンばかり見ているその眼を全て潰してやる」
「アロンさん...ありがとう」
意外な援護にレッドは後ろを振り向かずに走り出す
一瞬でも隙があれば、アイテールの触手は容赦なく自分を貫くだろう。それほどの危険性があった。神器があっても油断はできない。
城門から思い切り走りつつ、背に綺麗に折りたたまれていた翼を広げる
目の前で空を舞うその姿に、王国の面々から感嘆の声が上がるが、レッドの耳には入らない。
イヴァンもその隣で触手を喰い千切っていく、そして彼のブレスは、確実に触手を薙いでいった。
剣を前に、アイテールから放たれる触手を全て切り刻んで行く。真昼の空に、赤い閃光が舞うその姿を、ガウェィン始め皆は目で捉えることができない。
「しかし、これではグリーンに攻撃が当たる可能性が出てしまう、難しい問題だな」
「父上、ここは露払いに勤めましょう。いかなる化け物といえど限度がある、限界があります。そここそが狙いどきです。」
ベリアスの冷静な分析に、ガウェインも首肯するしかない。狙い目を見つけて援護しつつ、余計な邪魔が入らないことを祈る、現状それしか道はなさそうだった。
そしてそれはレッドも同じだった。アイテールの操る触手の数は、大小合わせても1000は下らない。それが今レッドに向けて絶え間なく乱撃を加えに来ている。出してない職種なども入れれば、一体何本になるのか想像もつかなかった。
正直、空を飛びながら、触手の一撃をいくつか食らっている。それを耐えながら触手の総数を減らせているのは、偏に神器の持つ防御力のおかげだった。
「うわっ?!」
100を集めて、より鋭く、硬く、素早く作った巨大な触手の一本が、レッドの体を掠めて落下させる
「主人?!クソっ」
イヴァンがかろうじて受け止めたが、肩口の鎧が破損している。神器が1つ足りない状態で挑むのはやはり無謀だったのか。
そして、乱入者を防ぐ、というレッドやガウェィン達の考えは、水泡に帰すことになる。
......援軍という良い形ではあるが
「ハーーーッハッハ!息子とその契約者よ!苦戦しているようだな!」
「...相変わらずオッサンの声がデケェよ」
「仕方あるまい、息子の前ぐらい、張り切らせてやれ」
「相変わらず暑苦しい男よの」
その内、前にいる2人は知った顔だった。
1人は肌の真っ黒な、筋骨隆々なおっさんだ、気合いを入れてきたのだろうか。剃り上げられた頭が元からの厳つさを増している。
アラビア調の服装が特徴のドラゴン、バハムートだ。
しきりにコチラに手を振ってくる。いや、今それどころじゃないんですけど...
「息子との久しぶりの再会を邪魔すんな、肉ダルマ」
そう言うと、既にバハムートは人間態のまま、アイテールの腹部に一撃を打ち込む。あの山のようなアイテールの体が、揺らいで、沈んだ。
もう1人は龍の頭をしている、服装は中華寄りだろうか。隣のバハムートの声にやれやれという声を出しながらも、既に殺気が身体中から漲っている。魔王軍第2位の座は伊達ではない。
名をアルフィィオス、神器を取り合った仲である。
アルフィィオスはちらりとコチラを見ると、なんとも味が悪いと言わないばかりにそっぽを向いた。
後ろにいる2人は、レッド以外のどの人格でも初対面である。
1人は赤い肌、悪魔のような2本の角を持ち、金色の翼、鳥類のような足を持っている。手に持っているのは...楽器?橙色と青色の2枚の服を羽織りどことなくチャラい雰囲気のある男だ。
「うわ〜張り切りすぎっしょ、オッサン。そんなに良いとこ見せたいのかね。」
そう呟き、頭を掻く姿は、どうにもちょっと歳上のお兄さん、という感じだ。
最後の1人は、4人の中で唯一の女性であった。和風の白い服装の上に、桃色の羽衣を羽織り、形容するならば天女。と言った方がわかりやすいだろう。
「......助けに来ましたえ、アルフィィオスに言われなければ、妾は妾の配下しか守るつもりはありませんでしたが...いずれこちらにもこの醜悪なものは参りましょう。でありましたら迅速にやりましょうえ」
そなた(グリーン)には個人的な借りもあるしの
そう小さく付け加えた言葉に気づいたものはいなかったが。
「とにかく!「創世の四聖」全員再集結だ!何年ぶりかなぁ〜」
そう言いながらもバハムートは4人全員の肩をバシバシと叩く。1人は満更でもなさそうに、1人は面白そうに笑い、1人は変わらぬと肩をすくめる。
これが四聖か、人の世を代々見てきた最長の生物。
「創世の四聖...まさか全員で来るとは?!」
「悪いな肉ダルマ、女神さんが全部の力を集結しとけだとさ。」
「左様、いずれ我が友も来るだろう。だがその前に終わらせよう。もう、人を間引くやり方は古いのだよ」
「女神...女神!また邪魔をするのかアイツは!」
突然に出てきた女神の名に、アイテールは激昂する。数千年前、古の勇者たちに一度は撃退された身だ。堪え難い屈辱を胸に、アイテールは眠りについた。そして復活した時にも、女神は立ちふさがった。
今も、女神はどこかにいて、自分を笑っていることだろう。誰にも見下されたことのない、自尊心の塊とも言える存在であったアイテールにとって、それは許されないことだった。
「ということだ、イヴァン、グリーンを乗せてあの肉ダルマを倒す手伝いをするが良い!...愚息だが、よろしいか、グリーン」
「構いません、イヴァンには助けてもらいました。最後まで一緒に戦おうと思ってます。」
「かぁ〜いい契約者に息子を渡せて良かったぁじゃないの!オッサン」
「あぁ、そうだな」
「おっと、今代の神器使いに説明しようか、ガンダルヴァ。秋を司る創世の四聖!」
「そして、妾が春の四聖、イロハじゃ」
ガンダルヴァの紹介に合わせて、ヌッとイロハと名乗る天女のような女性が顔をだす。
「お主に個人的な借りがあっての......サブロウのことじゃ、解放してくれて感謝する。あの男の矜持を、知識を受け継いだのがお主で良かった」
サブロウとは、神器を手に入れるために行った場所である。そこの最深部にて、自分の財産を継いでくれるものを彼は待っていた。
「ありがとう」
友を救ってくれて、掛け値無しのその言葉に、いいえとそう答える他、レッドには何もなかった。
「さて、おふたりさん、すまないが肉ダルマが起きてしまったようだ。...もう不意打ちは聞かんだろうなぁ。仕方がない、正面からやってやろうか!」
そう言うと、バハムートはおもむろに巨大化を始める。最強のドラゴン。夏を体現した灼熱の権化
それがついに、偽りの神に対して牙を向こうとしていた。
アルフィィオスも、レッドを一瞥したのち、ドラゴンへと変化する。白銀の鱗、冬を体現する雪原の覇者。
その瞳は、冷たく標的を見据える
「仕方ない、やろうか!盛大にいこう!」
そう言うと、ガンダルヴァはその見た目のまま巨大化を始める
巨大化をするにつれ、元々鳥のようだった体がより鳥類に変化した。足の爪はより鋭くなり、目は三白眼へと変貌を遂げ、鋭い嘴を覗かせる。愛に生きる音楽家、それを体現するかのように。
その華麗な姿は、巨大化しても変わらない。
「......あの醜い姿になるのは嫌ではありますが...仕方ありませんぇ...」
そう言うと、イロハはおもむろに巨大化し始める。
それこそ、隣に位置するアイテールと同じくらいの高さにまで大きく巨大化していた。
ゾウ...にしては中途半端な鼻の長さをしており、椛にしては口が小さい。そんな中途半端と言えるその姿の背中には自然の山が形成されている。4つ足で悠々と歩くその様は、正に神が最初に作った獣に相応しい様相だった。
美しい2本の巨大な牙で、神を討つ、
「さぁ、道は開いてやる!進め神器使いさんよ!」
「はい!行きます!」
ガンダルヴァを始めとする創世の四聖に鼓舞され、レッドは再度、武器を構え直した。
最強は!最強は!
汗明!!!!
ちがうだろーーーーー!!このハゲーーーー!!




