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天使と魔導学講師、出会う

『ってことでティンっ、ユグったまにはこのたまりにたまった倉庫を整理しましょうか!』


『うんっそうだね!』


『わかった、マスター』


.........カチッ


『ん?』

『へ?』

『あっ』


『...なんか変なの触っちゃった...』


『おまえぇぇぇ!』

『ユグうぅぅぅ!』


突如、少女と妖精2人は、眩い光とともに異世界へ転移することとなった。


『で?一体何を触ったの?ユグ』


そう言い、怖い顔をしているのはエリミアナ。普段は魔導学の講師を勤めている。


2体の精霊を使役している彼女は今、訳もわからず、この見知らぬ山に1人と2匹...?で取り残されていた。


『えっとね〜、なんか水晶みたいなまんまるい石だった気がする!』


そう言いながらぴょこぴょこ跳ねているのは、精霊のうち1匹のユグドラシルだ。


ユグドラシルは完全な人の形をした植物の精霊だ。


明るく、人懐っこいのが特徴で、いつもほわほわとした印象がある。


『水晶...?マスター、倉庫にそんなものあったか?前に探した時には、そんなものはなかったはずだが...』


そう鋭い質問を投げかけて来たのは、兎と龍を足して割ったような姿をした炎の精霊、ティンカーリュだ。


ええ、私もそんな水晶みたいなものがあるなんて知らなかったけど...そんなこと考えてる場合じゃないわ、取り敢えずここはどこだかの情報集めをしないと、偶然にもあそこに街があるわ、そこに行きましょう。


そう、現状1人と2匹は、森林の中に取り残されていた。しかし幸運にも、少し離れた場所に城が見える。あそこまで行けば大丈夫だろう。


ユグのお仕置きは、それからね


ユグドラシルのえぇ〜という顔がエリミアナに向けられる。しかしエリミアナはそれを気にすることもなく歩き出した。






......城へ向かう間に、エリミアナは3人の若者を目撃する。


3人とも男性、恐らく成人すらしていないレベルの少年とも言っていい3人が、狼のような生き物に追われていた


あれは...狼の化け物?!


それはエリミアナにとって見たことのない生物だった。


紫色に変色した毛色、血の色に染まった牙。そして...黒く濁った目


化け物と思わしき狼のような化け物が5匹、群れになって若者達を襲っていた。


危ない! ユグッ!!


『はぁ〜い!』


気の抜けたようなユグドラシルの返答が聞こえる。ふざけた声音とは裏腹に、表情は真剣だ。


黒鋼樹という素材で作った双剣を巧みに扱い、狼の化け物を1匹撫で斬りにした。


それでも、残りの4匹は止まらない。


ティン!!


『わかった、マスター!』


次の瞬間、ティンカーリュの口から炎が吹き出す。


たちまち炎に包まれた狼の化け物は、丸焦げになって絶命した。


残り3匹!


エリミアナも走りながら弓矢を放つ。


魔弓、アルヴェを使った弓の攻撃は強力だ。しかしその弓は...狼の化け物に交わされてしまった。


しまった、若者達がーー!!


若者達は岩を背に怯えている。完全に囲われてしまい、逃げ道はない


危ないー!!そう言いかけたエリミアナの声を、3発の銃声が塞いだ。


パン!パン!パン!


若者達に襲いかかる寸前だった狼の化け物達は...脳天にその銃弾をまともに喰らい、崩れ落ちた。


え...?今の誰が...?


『あ、正体あんまりバレたくないのだけど...まぁ、いいわみんな〜平気かしら?』


それは、1人の天使だった。


比喩などでは決してない、本当の、まるで神話や、お伽話に出てくるかのような、天使だった。


本当にあの人が、狼の化け物を...?


原理は全くわからない、方法を不明だが、あの人がやったので、間違いないようだ。


黒いロングの髪と、茶色と黄色が美しく混ざり合った上着を羽織り、岩の上から羽を大きく広げてゆっくりと降りてくる。


それは、本当にどんな世界でも見る夢物語の1ページから飛び出して来たかのような、そんな雰囲気を纏っていた。


貴方は

貴方は

天使様ですか?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「「「ありがとうございました!!」」」


太陽も真上を通り過ぎ、もうすぐ夕暮れになりかける、という時間帯に、私と天使...あっ天使さんは、自分のことをエルザと名乗った。エルザさんは、3人の若者からお礼をもらいつつ、ウォルテシアに向かって歩いていた。


あのお城のある大きな街、ウォルテシアっていうのね。知らなかったわ。


リーダー格の男が前に出て挨拶をしてきた


『失礼した、オレはジャンプだ、あっちの無口なのがモアイ、で、そこの小さいのがナギレ。俺たち、商人をこの間始めたばっかりでさ、仲間達と一緒にここを訪れたんだ。だけど、魔物にこんなに遭遇するだなんて思わなくてさ...苦労したよ。』


当たり前でしょ、そう言いながらエルザはジャンプと名乗る若者の頭をポカンと叩く


『案内人もいない、土地勘もない、そんな初めてのところに、護衛の1人も雇っていないなんて、自分の命をなんだと思ってるのかしら!』


そんなエルザの怒りに、商人3人組は、何も言い返すことができない。


それが当たり前だということが、今回身を以って知れたからだ。もしかしたら、いやあのまま助けが来なければ確実に死んでいたかもしれない。そんな恐怖が、3人に重くのしかかっていた。


街についた後も、3人組はそのことについて話しあうらしい。エルザに諭されたことに対してすら、彼らは彼女に礼を述べた。


いつか礼はする。そうその3人組は言っていた。


『で、貴方はどうするの?さっきの話しだと、行くあてもなさそうだけど』


へ?と私は自分を振り返る


そうだ、私今無一文だ!よく私街の中に入れたね。


オタオタしている私に、天使さんはにっこりと笑いながらこう声をかけた


『あら、なら神殿に来ない?1人だと退屈なの。』


と。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


不思議な子にあった、エルザが感じたのはその一手だ。


エルザは、牢獄に閉じ込められていた。脱出不能な牢獄「パンドラの箱」その中でも最も奥深くに閉じ込められていた彼女。ここで生き、そして朽ちて行く、そう覚悟した彼女の牢獄を、あの少女のような「彼」は空けてくれた。


その後から、私は彼について回っている。王国に取り残されると思った時も、絶対について行く!そうのたまった。


それに似た子が、今自分の目の前にいる。人を助けたのはほんの気まぐれだった。


だが、この収穫は大きい


「面白い奴」が増えるのは大歓迎だ。良いことはするものね。聞けば、どこも行くあてがないという。


私は迷わず彼女を神殿に誘った、2匹の精霊を使役する彼女を。


ちょっとだけ...楽しくなりそうね。



詩音先生作


「私と精霊の日常譚」コラボ作品!


お楽しみ下さい!

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読んでくれてありがとうございます! これから全10章、毎日投稿させていただきますので、是非よろしくお願いします @kurokonngame くろこんでツイッターもやってますので、繋がりに来てください。
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