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17・逃走いたし候

 福原へと駆けていく途中で浜から舟が沖へ向かうのが見えた。どうやら平家は逃げ出したんだろう。これでこの戦も終わりだ。


 そう思いながら平家の陣へと押し込んだところ、すでに範頼の軍勢がここまで来ていたようだ。


「おう、弁慶殿、夢野口は早々に落ちたらしいな」


 僕たちが夢野口を落として平氏を壊乱させたことで福原の抵抗も一気に終息したらしく、先ほどの逃亡に至ったようだ。


「平家の連中、幼子を帝に祭り上げて何をやってるんだ」


 範頼はそう言いながら沖の船へと視線を向ける。


「仕方が無いでしょう。自分達こそが正統、我々は院に誑か(たぶら)されているというのが平家の言い分ですから」


 僕もその船を見る。赤い旗と共に帝の御座所とでも言いたげな旗まで見えている。


「ところで義経殿は?」


 そう聞いて聞かれたので教経との一戦を話したら心配そうな顔になる。


「そうか、あの教経と一騎打ちか。それはたいそう疲弊している事だろう。ここは我らがやっておく、弁慶殿は義経殿を介抱してやってくれ」


 そう言われたので僕は佐藤兄弟に後の事を任せて静を探しに行く事にした。



 夢野口の陣跡を抜け峠へと向かうとポツンと静が立っているのが見えた。


「終わったらしいな」


 どうにもやる気なさげにそう言ってくる。


「途中で居なくなるとはどういうことだ?」


「ワリィな、だが、もう俺のやりたいことは終った。教経が平家一のツワモノだろ?だとすれば他のザコに用はねぇよ。あの程度ならば奥州にいくらでも居る。お前の作った妖装だもんな」


 どこか呆れたようにそう言う。


 静によると、教経という個人の妖力や技量は静や僕より上ではないかという。確かに、奥州で僕の妖装を着たツワモノたちは僕や静とそん色ない動きを見せる。それを躱せるのは軽快さで優っているからだ。


 それは教経相手にも同じだったという。見ていてもそう感じた。彼が言ったように重さという点では明らかに彼が優る。もし、教経が僕の作った妖装を身に着けていたなら静が負けていた可能性も高い。それほどの相手だった。


「そうは言っても、ここまで来た以上、勝手に帰ることも出来んがな」


 どうやらそのことは分かっているらしい。


「だがまあ、動き足りないこの体をどうにかしたい」


 バカはそう言って僕に襲い掛かってきた。


「おい、妖装を脱がしてどうすんだ」


 僕がそう言うが、静は僕の妖装を脱がすと自分も脱いで襲い掛かってくる。


「今はそう言う気分なんだよ!」


 どこで発情してんだコイツは・・・



 その翌日、範頼軍と合流した僕たちは一路京へと戻る。


 そこで待っていたのは鎌倉からの早馬だった。


「範頼殿、義経殿、鎌倉より知らせが参っております」


 そう言って差し出された文を受け取る範頼。


「何じゃこりゃあ~!」


 サラッと読んでいきなり叫び出し静に文を渡す。


「おい、今から鎌倉行くぞ」


 静もおかしなことを言い出す。


 そして、静から見せられた書簡には、範頼と静の罷免が書かれていた。


「まだ福原を落とした報が届いていない段階です。いましばらく待たれた方がよろしかろう」


 僕はそう言って範頼には院が口にした官位についての子細な話を急いで頼朝に知らせるように言い、静にも義仲と教経を討ったことを書き送る様に言い聞かせた。


「子細な戦果報告は梶原殿が書いておるでしょうが、事、個人的な話までは彼もかけはしないでしょう。鎌倉へ届いた話には尾ひれがついているやもしれませんぞ」


 範頼はそう聞いて急いで院から官位を貰うという話の詳細を書こうとしている様だった。


「弁慶、妖装の所感とか俺ではうまく書けん、代わりに書けよ」


 バカが言うので変な誤解を招かない様に僕が書くことになった。これは想定内だ。


 それから10日、僕や範頼の文を持たせた早馬便の返事が届いたのだが、状況はさらに悪化の一途を辿ることになっただけだった。


「おい、なぜ鎌倉入りが出来んのだ?」

 

 範頼には司令官解任だけでなく、鎌倉入り自体を禁じられる書簡が来てしまった。


「院による官位の押し売りだぞ。鎌倉の判断を仰いだら叱責された上に官位を無断で受けたとして鎌倉入りを禁じるとか、オカシイ」


 範頼がそう言うのも理解できる。というか、ソレ、史実では義経がそんな事になってはいなかったか?まあ、頼朝と同じ官位というのが火に油を注いだようにも思うが。


「弁慶、奥州へ帰るぞ。俺たちは追放だそうだからな」


 奥州の妖装の優位性と平家に装術師が居るという話を書いて、坂東でも装術師を育てる必要があるという話を書き送ったらなぜか平家と通じ、奥州と挟み撃ちをたくらむ不逞の輩というトンデモナイ罵声が返ってきた。まあ、追放で済んで良かったというべきか。


「おい、ボケっとするな!時間はねぇ」


 静が取る物も取り合えずに急いでいるのを横目に見ていたら、忠信の家臣が荒ててやってきた。


「義経殿!追使です!」


「だから!遅すぎたと言ってるんだ!!急いで妖装着ろお前ら、突っ切るぞ!!」


 静が怒鳴る。とにかく妖装を着こみ、皆で屋敷を飛び出してみればワラワラ取り囲む雑兵と様になっている妖装が居た。


「義経殿!弁慶殿!鎌倉よりのお達しである!!」


 誰だったか、福原攻めで範頼軍に居た武将だったと思うが、ソイツが何か手にしている。


「ンなモン知るか!鎌倉に言っておけ、俺に手だししたら奥州十七万騎が相手だとな!!」


 静の啖呵を合図に僕たちは屋敷を取り囲んだ軍勢を蹴散らして飛び出した。


 さすがに追っては来れなかったらしく、二日もすると何事もなかったかのような平穏な旅が出来た。そもそも僕たちは関所を通らなくても川や谷を飛び越えていけばいい。鎌倉の軍勢がまさかと思う所を通り抜けた。


「そのまま帰るのも面白くねぇ、ちょっと荒らして帰るか」


 白河の関の手前で坂東の豪族の館をいくつか襲撃して文字通りに叩き壊して帰途に就いた。


「おい、弁慶、お許しが出たら一気に鎌倉叩き潰すぞ!」


 静が気勢を上げるが、それは許可されないと思う。そもそも、源氏は平家追討の指揮官を失ってそれどころではないだろう。


 逃走中にも考えていたが、院は助け出した範頼を見てはしゃぎ過ぎたのだと思う。彼が何をどう鎌倉へと知らせたのか分からないが、あの頼朝である、きっと嫉妬心に怒り狂ったのは間違いない。


 そして、静もやり過ぎたし、今思えば源氏の妖装の立ち遅れなど書かなくて良かったのだ。義仲を討ったことで義経の名声が上がってしまった。源氏一の妖装使いとされている事だろう。更に平家のツワモノ教経を討ってしまったのでは、権威の範頼、武の義経。


 これでは鎌倉には何が残るんだ?


 あの狂人が怒り狂うのは致し方が無い事だと思う。  



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― 新着の感想 ―
[一言] もしくは、静御前を主人公にすれば?
[気になる点] 主人公の存在感が全くない。 静御前はただの基地外。 感情移入も出来ないから話にも入れない。 [一言] これでラストが史実と一緒なら、もうちょっと主人公を前に出して静御前を抑えた方がい…
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