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07 一ヵ月後の出会い

 丘の上。

 すっ、と放たれた矢は魔族の頭を射抜く。

 弓が手から離れた瞬間にスナイプは弓をおろしていて、目は持ってきていた果物を探していた。矢が射抜いたかちゃんと確認していたのはエスタだけだ。


 スナイプが皮をむいたオレンジに手をのばしかけたときエスタが声をかけた。

「スナイプ様、あの奥の魔族も撃ってもらえますか」

 エスタは今回、リーダー格が複数いる、と感じた。

「いいけど、最初に言って欲しいなあ」

「失礼しました」

 スナイプはさらに射る。

 それで、指揮をする魔族はいなくなった。

 あとは単純な作業だった。


 実際のところスナイプが全員射抜くこともできるがゼンセンの兵団は、エスタ、実際にはスナイプの力に頼り切ることはしなかった。

 体調不良や、急に王都に戻る可能性もあるからだ。



 午前中に魔族との戦いを終えた場合、午後は訓練場でエスタが指導をした。

 主に戦いに参加しなかった兵士たちが受ける。


 魔族との戦いは、盾と槍を構えて戦いを維持する兵士と、槍や弓で攻撃に専念する兵士に分かれて行われている。剣は少数だった。

「魔族は人間と間合いが異なります。多くは人間より広いです。ですから剣は、武器を失ったり、接近を許してしまったときの最後の手段とします」

 暇そうにしているスナイプに、エスタはそんな話をしてくれた。


 ほとんどの時間、エスタは指導にかかりきりだ。

 兵士たちは熱心に、エスタの言うことを聞きもらさんとしているので、エスタの指導にも熱が入っていた。

 代わりに近くにはサクルがいた。


 サクルは指導の時間、木の槍を振り回しながら、訓練の動作をなぞっていた。

 スナイプは、サクルと兵士たちの動きをぼんやりながめた。素人目には、ほとんど変わらないというか、サクルのほうがキビキビと動けてるような気がする。

「サクルもあっちで訓練したいでしょう? ごめんなさいね」

「いえ、とんでもない! 王女の身辺警護は大変重要な仕事ですから!」


 サクルの邪魔をしたくないけれど、他の、無愛想な男が代わりに身辺警護にやってきたら嫌だな、と思っていたスナイプは、サクルの配置転換の提案には消極的だった。


 この一ヶ月こんな感じだった。


 今日もサクルは、槍を振り回している。

 スナイプは、そっと離れてみた。サクルは気づかす槍を振り回していて、スナイプはこっそり笑う。

 

 そのまま訓練場をうろついてみた。掛け声が聞こえる。と思ったら止まる。訓練のための訓練にならないよう、不規則さをエスタは大事にしているらしい。


「おっと」

 そのとき、ある男とぶつかりかけた。彼はスナイプの肩をやわらかく受け止めて、微笑んだ。


「ありがとう」

「王女? お気をつけて」

 彼は片手をあげて、他の兵士に加わっていった。

 髪は短く精悍な印象だったが、笑顔はやわらかい。他の、筋肉が意識を持ったような兵士たちとは違っていた。

 スナイプは不思議と、そのまま後ろ姿を見送っていた。


「すみません王女! ちょっと目を離してしまいました!」

 サクルがやってきた。


「給料カットですか!?」

「だいじょうぶ。なにもなかったから」

 スナイプはまだ彼を目で追っていた。

「ああ、最近入った人ですね!」

「入った人?」

「たまにあるんです、他の地域や一般から募集するので! ユーグレさんって言ったかな?」

「ふうん。どこから来たの?」

「いやあ、すみません、わかりません! どうかしました? まさか、気になる男性、なーんて……。あ、失礼しました!」

 スナイプがゼンセンに来た経緯、男性に対してまだ興味を強く持てないこと、を思い出し、サクルは頭を下げた。


「気になる」

「へ?」

「なんだか、気になる……」

「あら、それは、どういう!?」

「射抜きたいっていうか……」

「えっ、あっ、はっ、ほっ!?」

 サクルは口元を手で隠し、変な声を上げながら左右を見回していた。


「こ、これは、エスタ先生に報告ですね!」

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