表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/29

29 のぞみ

 ユーグレはスナイプの部屋に入り、テーブルについた。


「魔族が来るの?」

「はい。そこでスナイプ様に手助けをしていただきたいんです。ゼンセンでのように、弓で要所を攻撃してもらいたい」

「かまわないけど?」

「ありがとうございます」

「変なの。私のためでもあるでしょう?」

 スナイプは笑った。


「スナイプ様は、この国が好きですか?」

「ええ! この国でのんびり、平和に暮らしたい」

「それがのぞみですか?」

「のぞみ?」

「スナイプ様の、のぞみはなんですか」

 ユーグレは言った。


「のぞみ……」

「はい。のぞみはございますか?」

「私は……。私は、のんびり、平和に暮らしたいけれど」

「特別なのぞみはないと?」

「……」

 スナイプはユーグレを見た。


「あなたは?」

「わたしは、スナイプ様と、のんびり、平和に過ごすことができればなによりだと考えております」


 すこし黙って、スナイプはユーグレを見ていた。


「本当?」

「はい。スナイプ様ののぞみはなんですか?」

「私の、のぞみ。そうね。あなたと同じかな」

 スナイプは微笑んだ。


「ありがとうございます」

「ふふ」

「ではひとつだけ、お願いがあります。よろしいですか?」

「なあに?」

「そののぞみ、はっきりと、口にしていただいてよろしいでしょうか」

 ユーグレはスナイプを見つめた。


 スナイプは目を大きく開いて、それからすこし顔を赤くしたあと、微笑んで、真顔になった。

 

 スナイプが手を差し伸べた。

 ユーグレがその手を取る。


「私ののぞみは、ユーグレさんと、のんびり、平和に過ごすこと」



 視界がゆがんだ。

 いや、ゆがんでいなかったかもしれない。


 部屋の様子が変わっている。

 スナイプの寝室ではない。おそらくスナイプの部屋だった場所は私室となり、別に二人の寝室が用意されたのだろう。そうだった世界に切り替わったとでもいうべきか。

 

「そろそろ寝ましょう」

 スナイプが言った。見た目は変わっていない。


 部屋には大きなベッドがあった。

 そこに並んで横になった。

 これが当たり前のようだ。

「今日はね、変わった草が生えてたの。ハートみたいな形の葉っぱでね」

 スナイプは話を始めた。

 ユーグレは適度に相槌を打ちながら聞いていた。


 のんびり暮らすというスナイプの、のぞみは叶ったようだ。

 そして。


「のぞみはなんだ」

 きた。


 ゆっくり体をねじると、ベッドの近くに、それ、が来ていた。

 スナイプがのぞみを叶えたのであれば、ユーグレは王族の仲間に入ったはず。後からではどうかという不安もあったが、問題なかったようだ。

 王族の願いを叶える、それ。


 のぞみを聞いてくれるというわけだ。


 ユーグレは魔族ではなくなった、という話もあった。

 しかし優先すべきことがある。それが叶えられる状況でもある。

「人間をすべて殺せ」

 ユーグレは言った。覚悟はできていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ