27 奪取
同じ会話をして、城の中に入っていった。
奥の階段で三階まで向かう。
ノックをして、スナイプを呼び、中に入る。
また薬を飲ませてベッドに寝かせた。
また外にいた。
彼が話しかけてくる。
ユーグレが応じて、中に入る。
奥の階段で三階に向かって部屋でノックをして中に入る。
薬を飲ませてベッドに寝かせた。
外にいた。
頭がおかしくなりそうだ。
状況はわかっているが受け入れられない。
なんだこれは。
同じことを繰り返している。
同じことをしたところで、同じことにしかならないというのか。
スナイプの部屋に入ってから、薬を飲ませず椅子に座った。
「魔族が?」
「そうです。ゼンセンだけではなく、他の地域の前線からも魔族が攻めてきているということです」
「魔族は嘘をついたの?」
「魔族たちは、ゼンセンを攻めずに通り過ぎて、一気に王都を目指しているそうですから」
「それは、嘘をついてはいないのかな……?」
スナイプは首をかしげた。
嘘かどうかよりも重大なことが起きているのだが、あまり気にしていないようだ。
それでいいのかもしれない。
「嘘はついていないですが、嘘をついていないだけですね」
「そうだよね。よくないよね!」
スナイプが笑った。
ユーグレと視線が合うと、ドギマギしたように目をそらす。
「それで、スナイプ様にまた狙撃をしていただきたいそうです」
「そう。いいけど」
「夕方頃になるそうです。それでは」
ユーグレが立ち上がると、スナイプは腰を浮かせた。
「なにか?」
「もう行っちゃうの?」
「はい」
「そう。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
「あと!」
「はい?」
「言葉遣いはずっとそのままなの? 結婚しても?」
「結婚したら変わるかもしれません」
「そう」
スナイプは微笑んだ。
時間がもどることはない。
まずい。
ユーグレは考えていた。
スナイプの弓はすでに、想像の何段階か先に進んでしまっている。
スナイプが殺されるという運命は排除した、と考えるのが妥当だろう。
殺されるのを防ぐのではない。殺されなかったことにしてしまう。
似たように思えるが全く違う。攻撃を防ぐのと、攻撃を受けたあとに無効化するのでは攻撃を成立させる難易度がまるで違う。
「どうかされたの?」
立ち止まっていたユーグレに、スナイプは言った。
「弓はここにありますか?」
「ええ」
「見せていただいても?」
「もちろん」
部屋の書棚に、一部本が置かれていない場所があり、そこに黒い弓が立てかけてあった。
スナイプに干渉できないなら、これを破壊するしかない。
手に取ろうと触れると、また、指先からなにかが入り込もうとする感覚がありすぐ手を引いた。
「弓、お借りしても?」
「え? ええ、でもどうして?」
「明日は大切な仕事になるので、弓をチェックさせてもらいたいと思ったのですが。失敗はできないので」
「はい。いいですよ」
「ありがとうございます。それじゃあまた明日」
「はい。また明日!」
エスタは弓を入れる肩掛けカバンを借りて、それに弓を入れてもらいスナイプの部屋を出た。
出ることができた。
スナイプに直接の危害を加えなければ問題ないようだ。
たとえばこのまま弓を持って逃げ、王都が滅びたとしたら時間がもどるかもしれない。
しかしこれを持って魔族に撤退をさせたらどうか。
すぐ行動したら危ないかもしれないが、スナイプが寿命を迎え、所有者でなくなったら?
人間は時間があるが、個人には時間がない。魔族とは違う。
待つだけの価値がある。
ユーグレが魔族でなくなった、と思われる状況ではあるが、もどすこともできるはずだ。
城を出て、王都を出よう。
連絡用の鳥を呼び、すぐゼンセンの隊と連絡を取って、それから……。
と考えていたとき、周囲が真っ暗になった。
ユーグレは、カバンから広がった黒いものに包まれていた。




