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26 スナイプ暗殺

「魔族たちの移動速度は早く、なにも対策をとらなければ、明日の夕方には王都まで到着する部隊もいるそうです」

「途中に町のない進路を選んでいる」

「前線の部隊は長距離移動をすることを想定していないために追いつけません」

「弓隊を用意し、狙撃する方法はあるようだが、一時的な足止めにしかならないようだ」


 テーブルで口々に話をしている。

 だがユーグレの頭の中はそれどころではなかった。

 魔族ではない?


 意味がわからない。

 だがレオンがユーグレをかばう理由もない。それどころか、できるかぎり、魔族だと知らしめてやりたいくらいだろう。


「スナイプ様に頼むしかないですね」

 エスタが言うと、それぞれが賛成した。


「では明日、スナイプさまに塔の上に移動していただき、そこから狙撃していただきましょう」

「異議なし」

「ですが懸念が。一定の距離まで追い込む必要があります。毒ガスなど、風向きによっては王都に被害が出ることも」

「風魔法で囲えばいいでしょう」

「ですね」

 話が進んでいく。


 はっとした。そうだ。

「では、わたしがスナイプ様にお伝えしておきましょうか? 明日、頼むとしても、心の準備もあったほうがいいでしょうし」

「なるほど」

 エスタはうなずいた。


「お願いしてよろしいですか?」

「はい」

「スナイプ様も、婚約者殿から言われたほうがよろしいでしょうな」

 はっはっは、と笑っている者もいた。

 全体的に好意的な印象だ。レオンはずっとユーグレをにらみつけているが。


「では」

 ユーグレは、にらみつけてくるレオンの視線を感じながら会議室を出た。


 さて。

 やるべきことはひとつ。

 スナイプの暗殺だ。

 それさえできれば、魔族が負けることはないだろう。

 それができる魔族など、ユーグレしかいない。


 話を聞いているかぎり、魔族の部隊に別働隊がいるという危険をあまり感じていなかったようだ。というより、それに対応する余力もないというか。


 暗殺を決行し、ユーグレは、今夜中にこの城を出る。

 

 城には裏口から向かった。

「こんばんは」

 門番と一緒にいた男がこちらを見て、話しかけてきた。


「……ああ」

 見覚えがあった。

 すこし前にベリガルを連れていった使用人のひとりだ。


「どうされました?」

 彼は言った。

「スナイプ様に用がありまして」

「こんな時間にですか?」

「はい。そういった用事ではなく」

 ユーグレが笑うと、彼も笑った。


「ちょっと真面目なお話で。急いでいます」

「そうですか。お部屋の場所はご存知ですか?」

「はい」

「では、奥の階段をお使いください。ベリガル様とお会いしませんから」

「どうも」


 門番はなにもとがめようとはしなかった。


 言われた通り奥の階段を使って三階に上がって、北側の奥の部屋の前にたどり着いた。


 ノックをする。

「はい?」

 奥からスナイプの声がした。


「ユーグレです」

「え!? ちょ、ちょっと待って!」

 スナイプの焦った声が聞こえて五分くらいすると、ドアが開いた。


「どうしたの!?」

 スナイプの顔が半分見えている。片手で髪の毛を直していた。

「ええ。ちょっとお話がありまして」

「な、なに!? こんな時間に!?」


 ユーグレは声をひそめた。

「実は、魔族がやってくるという話を聞きまして。急ぎ、連絡をと」

「……魔族?」

 スナイプも声をひそめた。


「はい。あまり、他人に聞かせたくないので、中に入ってよろしいですか?」

「……ど、どうぞ」

 おずおずと、スナイプが導く。


 ユーグレはドアを閉め、スナイプを抱きとめると隠し持っていた薬を口の中に押し込み飲ませた。

 すこし体をばたつかせたが、すぐおとなしくなった。

 ナイフを使ってもよかったが、逃げる途中で返り血を注目されるリスクを考えての行動だった。


 ユーグレはベッドにスナイプを寝かせると、部屋を 



「こんばんは」

 門番と一緒にいた男がこちらを見て、話しかけてきた。


 ユーグレは一瞬なにも理解ができなかった。

 彼に見覚えがあった。

 すこし前にベリガルを連れていった使用人のひとりであり、さっき下であいさつをした相手だ。


 ここは?

 城の裏口の前……?


「どうされました?」

 彼は言った。


 なぜ自分はここにいる?

「スナイプ様に用がありまして」

 思い出した言葉を言う。

「こんな時間にですか?」

「はい。そういった用事ではなく」

 ユーグレが無理をして笑うと、彼も笑った。


 なんだこれは。

 数分前にもどっている……!?

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