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24 庭園

「いろいろと驚かれたのではないですか?」

 エスタは言った。


 城の中には入れないと、敷地内を歩いていた。

 庭園は人がいない。ぽつり、ぽつりと魔道具による明かりがともっている。


「王都では様々なことがゼンセンとは違いますから」

「予想以上でした」

「スナイプ様との婚約を諦める気はないですか?」

「はい」


 庭園の植物は、建築物のように切り揃えられている。

「王都では、一定の枠にはまっている人間だけが生きていけます。スナイプ様のような方は難しい」

「ではうまくいかないと?」

「ユーグレ殿次第でしょう」

「ところで、弓について教えていただけるというお話でしたが」

 

 噴水の前にたどりついた。いまは水は出ていない。


「スナイプ様は、弓の才能がおありでした。1を聞いて10知るかのごとく」

「あれは弓ですか?」

 ユーグレは疑問をぶつけた。


「弓です。いまは」

「いまは?」

「ええ。スナイプ様が弓を覚えてから、弓の形になりました」

「それは……。スナイプ様のために形を変えた!?」

 想像以上だった。


「王は、現状を憂いておられます。ですが、この国をそっくり変えることはすっかり諦めておられる。限られた人間による、限られた運営がベストと判断されている。だからこそです」


 エスタは落ちていた木の葉を噴水の池に浮かべた。


「ひとつの小さな肩にすべてがかかる。そういう状況が当然のように行われるのです」

「最初から、スナイプ様に、前線を掌握させるために送り込んだんですか?」

「ええ。自由に動かれたおかげで、もっと大きな成果を得られましたが」

「あの。そんなことをこれからも続けるんですか?」

 魔族だって力の差はあるから任される仕事の質、量には差がある。トップと下位ではまるでちがう。

 しかし、そんな……。


「王都の人間は、鑑賞動物のようではないですか」

 人間を人間とみなしていない。


「それが平和です」

「え?」

「完全になにも争いがない状態というのはありえない。であれば。本当の問題について考える人間が、少なければ少ないほど、それは平和だといえるのではないでしょうか」

 冷たいものを感じた。

 同族に対し、明確な差をつけている。

 

 エスタはユーグレを見た。

「ところでユーグレ殿。あなたはどうして魔族の拠点に通じるトンネルをご存知だったんです?」

「いや……」

「隣町に行くには不自然な道を通っていましたね」

「いい景色がある場所をいくつか知っていまして。エスタ殿はご存じないのでは?」

 エスタは笑顔を浮かべるだけだった。


「評価していただいているのかと思っていましたが、なにかいろいろと、わたしに対するご不満がおありのようですね。スナイプ様の相手としては不適格ということでしょうか」

「いいえ。スナイプ様がお選びになったことに、異論はありません」

「ではなんでしょうか」

「それは」


 そのときだった。


「エスタ様! こちらにいらっしゃいましたか!」

 兵士が息を切らして庭園に駆け込んできた。


「なにかありましたか」

「各地の前線が魔族から攻撃を受けています! 四ヵ所以上の前線が同時に攻撃を受けているとのこと! どこも新しい攻撃を受け、長くは保たないということです! 至急、会議にご参加ください!」

 兵士は言った。

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