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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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一本歯下駄と小指の支え その三

 こういうものを履くとまず考え付く課題がある。考え付かなくても考えなければならない問題がある。


『ウンコするときどうするの?』


 うん。こまった。考えない。


 結論だけ言えば立小便に向かない。激しく揺れるからだ。ズボンを濡らしかねない。結果的につま先や踵をつけながら、かの作業に勤しむことになる。

 殿方の場合公衆便所に入れば小便器が用意されており、皆列を作っている間にズボンをずらさねばならぬ。この状態で左右に揺れながらズボンを下ろす。何をヤッているのだ。むしろナニをやっているに違いないと言われても仕方ないが揺れていて不安定なのだ。

 この状態で尿の飛び散るトイレの床に下駄のつま先を着けて行為に及ばねばならぬが流石にそれは遠慮したいだろう。無理無理無理無理かたつむり。


 よって、『ガッ』と前面にフルオープンして事に励むことになる。


 前面にガッと出過ぎても股間と小便器が衝撃の出会いを行う可能性があって危険極まりない。一本歯下駄で立小便は行うべきではない。ゆめゆめ注意すべきである。

 最近は西洋便座の普及によりそういう事は薄れたが、それにしたって便器の個室と言うモノは狭い。冬場ならばこの中でコートを脱いで数々の戦利品ひとにいえないしょせきを手に事に及ぶ人もいるだろう。


 その日の鴉野は図書館に居た。友人お勧めの『陽だまりの彼女』の予約(数か月待ち)を行うためだが一つ困ったことが発生した。


 公衆便所が和式。


 うん。こまった。ウンコ待った。


 ウンコ待ったぁあぁっぁあぁぁ?!!!


 言うまでもないがこの状態でしゃがみこんだら前面にごっつんこし兼ねない。後ろに倒れても悲惨な目に遭う。密室の中で股間モロだしで後頭部を激しく強打で死亡。完璧な密室殺人事件に発展する。その原因は一本歯下駄をガイシャが履いていたから。どう見てもバカそのものだ。


『ガイシャは死に際にトイレットペーパーを掴んでました』

『遺書を書くつもりだったのか』


『インクが無いからウンコで描いたのでしょうか』

『このダイイングメッセージが読めるか』


『ただのウンコに見えます課長!』


 大恥であろう。いや、大恥じゃなくて大便だが。


 まず、慎重にかの便器を跨がねばならぬ。

 便器は陶器で出来ている。こんなものを踏み抜いたら便器を割るだけではなく足が悲惨なことになる。無事またぐことが出来ても更なる難問が襲い掛かる。ズボンを半分穿いたまま排泄の間、中座で文字通りのウンコ座りを続けなくばならぬ。バランスを崩せば謎の密室事件に発展する。そうでなくてもドツボにハマる。ボトン。やかましいわ。


 そして転ばぬよう、つま先に体重を維持して尻に力を注ぐがこんな状態で脱力して排泄するのが至難の業なのは言うまでもない。


「うん。困った」


 結論。


 一本歯下駄は排泄に向かない。

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