究極のホラー
「もう。9月か……」
そりゃなるだろ。
「もう、9月なんですよ鴉野さん!」
だからなんだよ。
「可愛い幼女と海やプールに行けない」
し ば く ぞ 。
まぁ地味に試験の合間でも従姉の子たちとプールに行った俺に隙は無い。
「甥っ子、姪っ子に『うらしまたろうごっこ』とシャレで背中に乗せて平泳ぎしてみたら受けてしまって。アレきついわ。息継ぎの時は容赦なく立たないと溺れ死ぬ」
一応、ライフジャケット着ているから彼らは大丈夫だが、万力のように離れないからな。
しかし甥っ子姪っ子はビジュアル重視なのか、律儀に鴉野の背中に正座していたのでコロコロ落ちていた。
水中で移動する物体(鴉野)に正座で安定するのはとても難しい。
「ほかにも『うんどうしろー!』って言うから二人乗っけて腕立ても」
「なにそれうらやま死刑。『俺たちは子守していたはずだが気づくとボディビルしていた』」
マジポルナレフ状態だが鴉野の家の男は子供嫌いでは務まらない。
「従姉の子も大きくなったよなあ。姪っ子甥っ子と同じことしていた子たちが今や高校生」
「へえ」
「従姉や姉、甥っ子姪っ子。従姉の娘や息子たちと一緒にプールで泳いだ。
従姉の息子は力尽きた鴉野の代わりに姪っ子たちの玩具にされたらしい。悪いことしたなぁ」
「な……ん……だ……と?!」
? どった?
「まさかとは思いますが女子高生と泳いだのですか?!」
「?? ああ……そっか。確かに女子高生だな。……そうだが」
「スク水ですか?! ビキニですか?!」
スク水ではないが昨今はラッシュガードってのがあるんだぞ。
あれいいよな。俺も欲しくなった。
「下はビキニだったな」
「ブー?! 殺す! 殺す!!! リア充は死ね!」
落ち着けって。
普通に従姉たちと泳いだだけだから。
仮想人格の彼は写真を見乍らつぶやく。
「この娘さんは」
「鴉野の姉だが?」
「で、こちらの娘さんたちは」
「従姉夫婦」
「……こちらの美人さんは」
「一応、言っておくがその人も従姉。てか、こっちの女子高生の母だ」
女子陣営。全員ビキニが着れる。
「鴉野一族おかしい?!」
「なんか、個人差はあるが実年齢から七歳から一四歳くらいは若く見えるらしいからな」
しかもすっぴん。
「姉は普通にワンピースでラッシュガードだぞ。ただ、胸が少々小さいからめっちゃ大胆に胸が開いているデザインになってしまったが」
「姉上、子だくさんで結構ですね(棒)」
本人はかわいいデザインで決めるつもりだったらしい。
「みんなで一緒にスケキヨごっこをして遊んだ」
「やっぱり鴉野さんの一族ですね」
どういう意味だ。
なお、スケキヨごっことは足を如何に水上に浮かせ続けることができるかを競う水中逆立ち遊びである。
ずずず。
どこからか茶をとりだしてきた彼。
残り物のアイスをぱくつく鴉野。
「時の立つのは早いものですよね。もうあと三か月で一年が終わるのですよ」
だな。
連載当時中学生だった子が今や大学生だもん。
「この間、バイトをはじめてするって言ってて微笑ましかったのが、今や髪染めてアフリカに旅立」
「鴉野さんの知り合いってどうしてそんなアクティブなんですか」
「こうして歳をとっていくのですね」
「おっさんかよ」
てか、お前は設定上サザ○さん時空で永遠の二○歳だろうが。
「鴉野さん。夢なんていつか覚めるですよ」
「いつか覚めるのじゃないよ。良い夢を見るために一所懸命現実を生き抜いて、さらに良い夢を見るか、そうでないかの違いで」
実際は悪夢だったり夢であってほしい嫌なことの繰り返しだと思うよ。
それでもあがき続けるけどね。俺は。
「永遠の二〇歳だと思っていたら三十路になっているんです。
まだまだ『二〇台に見えると皆が言ってくれる』と自分を誤魔化しているうちに四〇代になっているんです」
おい。
ガチホラーやめてくれませんかね?
「若い若い。自分には実力があるから大丈夫とか思い続けて日々が過ぎ、ある日にふと鏡をみると、くたびれたおっさんおばさんの顔が映っていて『こいつ誰』って思って自己崩壊するんです」
「マジでワナビはそうだから、本気で辞めてくれ?!」
「それが僕に起きない可能性はないでしょう?! だって作者があなたなんですよ?! 悪趣味な作者の! ご自身の不幸をギャグにして笑っている変態さんの?! 自分を不幸にして笑える人間が、他人の不幸を笑えないわけないですよね!?」
やめて! ワナビのヒットポイントはゼロよ?!
てか。俺、人の不幸は素直に喜べないな。そりゃまったくその気が無いとは言わないが。
「そうだなぁ。アレだ。なろう系のオフに参加するとさ」
「ええ」
「税理士さんを個人資産で雇って、本業の合間になろう活動して作家やっているひとたちは『どうしてみんな累計三〇〇位以内に入れないの? 簡単だと思うよ』な感じでさ」
「死ね?! マイナーの怨念を受けろ?!」
そうかな。
「アレ、大変だぞ。何度も言うが趣味じゃなくて収入源になっているから」
印税の問題。そもそも企画が通らなくて続刊が出せない。
会社にもよるがダイジェスト問題。
ダイジェストした作品は続刊停止になったら続編をどう書くのか。
アニメ化なんて夢の夢でため息。
税金は前年度の収入で計測。
労働組合などがないなどなど。
「デビューしてからが本当の地獄だぞ。デビューする作家はラノベだけで毎月三ケタいらっしゃるそうで。ぶっちゃけ、夢がないと作家なんて続けられないし、さらに言うと安定して居たければサラリーマンやっていたほうがいい。サラリーマンは組織が守ってくれるから」
「ぼく、マイナーで満足です」
マイナーもひどいぞ。
「黒歴史ノートの延長を延々と数十年単位で書いている」
「鴉野さんも書いていらっしゃいます」
まあね。というか、作家に限らず音楽やスポーツでもこんな人はいるさ。
「不倫する男の都合のよいキープ女扱いとか、フリーターやニート、ワープアの怨念を延々と書いている」
「作品に活かされて結構なことです」
「こだわりが酷くてなろうで読みやすいように書く努力を放棄している」
「鴉野さんだってそうでしょう」
「俺の場合、一応毎回書き換えているよ。なろうで読みやすくしている作品の改行ルールが四年間も全然わからなかっただけで」
一行ごとに段落つけて一字開け。
地の文と会話文の間は空行。
これ、普通は書かない形式だけどなろうだと圧倒的に読みやすい。
「気づかないのか」
「ずっとほかの作品は『なんでここで段落つけているんだろとか、ここでなぜ段落つけないのか』って悩んでいた」
結果、適当に段落つけたり、長くなったら改行していた。
そりゃ逆に読みにくい。
「それなら、最初から全部一行ごとに段落つけて一字開けしたほうが親切だ」
「普通なら変なのでしょうが、スマートフォンで見ると格段に読みやすいですから」
ぶっちゃけ、人気作はスマートフォンで閲覧されている数のほうが多いしね。
「こんな基礎的なことに四年も気づかない鴉野さんって」
「その核心部分を指摘されずにやってきたってのがすごいな」
ぶっちゃけ、『読みにくい』と指摘しても、そこを教えたらライバル増えるから理解できなくもない。
「と、いうか、書籍化狙うならそれくらい気づけってことだったらしい」
「恐るべしは友の深謀遠慮。鴉野さんを成長させるために?!」
いや。正直書き散らかすのが趣味な人間だったし、買い被りともいえたかも。
でだ。
どこまで話したっけ。
マイナー系のなろう作家はだな。
「日刊エッセイ見ろ」
「……」
まぁ。ここでは触れないが。
「前も言ったが、なろう運営と思しき会社にテロリストが乗り込んできてなぜか皆殺し。そのうえで主人公たちがその運営を引き継ぐとか書いていたりするな。なろうのマイナー系は」
「怖すぎです」
「オフ会開いてもなぁ。同じ費用なのに、いや、予算は上位陣の人たちの上なのに」
「なんですか」
めっちゃ帰りたい。
まぁ鴉野がカラオケなどが嫌いなのもあるが。
「予算めっちゃ使うのよ。万札近くいく」
「意外ですね」
ハシゴが多いのもあるけど。
上位陣は安くておいしい店ハシゴな感じ。件数も少ない。
「上位陣の皆様は忙しいですから」
「普通に定職あるし、締切も迫っているしね。飲みすぎたりはしないよ」
しかも美味しくないところばかりいく不思議。
たまにまともな穴場のレストランなとこもあるにはあるが、高い。
「金の使い方知らないんじゃね?」
「鴉野さん。億稼いでいるのに一切使わず、この間税務署に査察されたなろう作家がいらっしゃるのですよ」
アレはマジでなんで女遊びや車に浪費して、会社の経費にしなかったのか謎だ。
真面目すぎるのも大概だと思う。
「自作は一切書かない、書けないが中学生の書いた作品への批判記事を一万字近く書いてドヤ顔していたり、小説論を深夜から明け方まで展開していたりする」
「それ自体は文学の世界にはいくらでもいらっしゃいます。口だけで書かない方もね」
「女声でアニメやアイドルのキモ芸を延々と歌われてみろ。合わせるの辛いぜ」
「……」
「それも三十路、四十路の男が、コスプレのパレード見ながら推しの女の子見たら奇声あげて喜んでジャンプしているんだぜ」
「そ、それは好きなことをたくさんやれて、大変結構な」
最近思うんだけどさ。
号泣議員とか、高校生の平和活動に『戦争に行きたくないわがまま』発言してホモ疑惑ブーメランな人とかさ。
「ああいう人って、『若く見える』んじゃないんだと思う。
弱い人のため、あえて頭を下げるような機会を逸して、結果的に『幼い』ところが目に出てしまっているんだと思うんだ。
あと、無駄なこだわりが出て妙なキラキラキラリン感が目に出る」
それを額面通りに受け取って、『俺は若く見える。若い。才能にあふれている』と歳ばかり取って、結局何もなかったことに気付くとかあまりにも怖すぎるよな。
「その時には三十路か、四〇過ぎか。下手したら一生夢の牢獄の中か」
「怖い?! 怖いですよ鴉野さん?!」
「あれだな。俺はそれを見て、『やばい。こんな三十路になりたくない』と思い、『数年で結果出してやる』ってやって、結果的に数年じゃないし形は違えど商業に名前が載って少しほっとしたのは否定できないな。そういう意味で人の不幸をプギャーする人間といえなくもない」
「お前ら(※鴉野含む)偉そうに言って、今だワナビなの?」
(※ 『このWeb小説がすごい!』にて一応鴉野の紹介記事があります)
夢は現実とセットなんだよ。
片方だけ見ているとバランスを崩すんだよ。
自転車整備の資格を一生懸命やってそう思った。
「ぼくが知る限り、鴉野さんは全然一生懸命やってないですけどね」
「一日一回が限度だったな。自転車見るだけで吐きたかった」
「あれ、落ちていたらマジで嫌だ」
「あの状況、減点はあっても不合格はないレベルでしょう。鴉野さんたちは」
それより大事なことがあります。
彼は続ける。
「この従姉さん(←子持ち四四歳)紹介してください」
ロリコンが転向した?!
今年一番のホラーがここにあった。
ワナビ、ニートやワープア(※鴉野自身も生涯賃金上がらないワープアです)を同一のように書いていますが。
夢や希望を見たくない。目の前の快楽で誤魔化す。
他人の夢(この会社を日本一に! 等)に付き合いたい。
夢を叶えなければ生きられない。
夢がかなわないから他人の夢を邪魔するしかない。
これらをいつまでも続ける場合、一度現実に立ち戻ることをお勧めします。




