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盤上のピーセス  作者: 悠々楽々
三章
38/196

旅立つ前日

 一週間前、葉風の町リーフでは三体の魔物が町中で暴れまわる事件が起きた。

 本来、魔物は魔瘴方界(スクウェア)の外では長く生きられない。

 魔物は汚染された魔素――瘴気がない領域では生存することができないからだ。魔物が人の領域に侵入するのは数時間程度。個体差もあるが、魔物はその限られた時間で人や動物を襲い、本能のままに暴れまわる。


 これは魔瘴方界(スクウェア)から離れるほど、魔物が少なくなるということでもある。当然、町は魔瘴方界スクウェアから離れたところにあり、たとえ魔物が町を襲おうとも騎士団や衛兵がこれを防ぐ。

 つまり、魔物が町に侵入するなど、あってはならない最悪の事態に他ならない。


 ならば、何故リーフでこのような事件が起きたのか?


 その発端は、ある男が町に来ていた浄化師の威光を借りようとしたことだった。


 ダズ・クラウプ。


 リーフにおける有力者であり、次期町長候補の一人。

 他の候補者に比べ不人気であったこの男は、浄化師が町にくるイベントを利用して人気の挽回を図ろうとした。が、その方法が問題だった。


 ダズは自分が取り仕切るイベントで、浄化師に魔物を討伐させ人気を上げようとしたのだ。


 小太りな体に、大きな鼻を持つダズは見た目通り猪突猛進した。

 まずは魔瘴方界(スクウェア)に異変がないか確かめるため、検体として捕獲した三体の魔物を強引に奪った。そして、自身のアピールのため、これまた強引にイベントの司会になり、浄化師に魔物を討伐させようというところで――魔物が逃走してしまった。


 負傷者多数、死者すら出たこの事件。当然、ダズは責任を取ることになり、次期町長になる可能性はゼロとなった。逃げ出した三体の魔物は、二体はリーフの駒者(ピーセス)たちに退治され、残る一体は、


 子供を連れ去り、魔瘴方界(スクウェア)へと飛び去った。


 同じ孤児院に住むこの子供、シュウを助けるためにテルスは逃げた魔物を追い、何の因果か浄化師のルナと共に魔瘴方界(スクウェア)の最奥、『王域』に挑むことになった。


 数多の苦難を乗り越えて、テルスとルナの二人は魔瘴方界(スクウェア)をほぼ解放し、子供を救い出した。しかし、この事実は一週間が経とうと広まることはなかった。知っているのは未だに三人と一匹だけだ。


 なぜなら、ルナが真実を話さなかったから。


〈現地の駒者(ピーセス)と協力して、魔瘴方界(スクウェア)に入る前に子供を助け出すことはできました。しかし、集まった大量の魔物に追われ、町から離れるように逃げるしかなく、帰ってくるのに時間がかかってしまいました〉


 テルスが寝ている間にルナは周囲にこう語った。

 何故かはテルスたちも分からない。そして、ルナは魔瘴方界(スクウェア)に入ったことを誰にも言ってはいけないと、ソルとシュウに告げ、テルスには伝言を残した。


〈絶対に、あの魔瘴方界(スクウェア)で起きたことは喋っちゃだめ。これからは体に気をつけて、あまり無茶もしちゃだめだよ。ありがとう元気でね……さようなら〉


 その別れの言葉で最後だった。


 テルスはリーフを発ったルナが何処にいるかも分からず、何を考えて周囲に嘘を語ったのかも知らない。ただ、二人の道が分かれたことだけは理解できた。


 浄化師と地方の駒者(ピーセス)


 たった二日の相棒ペア


 当然といえば、当然の話。しかし、あの魔瘴方界(スクウェア)で過ごした時間に比べ、ひどくあっさりとした別れに、テルスは実感が湧かなかった。


 これで、ルナと話す機会も、魔瘴方界(スクウェア)から無事に出ることができたら、祝勝会をする約束もなくなった。ルナが元通り、貴族以上の身分を有し、テルスでは会うことも難しい存在になったとはとても思えなかった。


「……だってなあ」


 そう思う原因は間違いなく、テルスの家でもある、この『ドラグオン孤児院』のせいだった。

 ルナは二日間、このドラグオン孤児院に顔を出していた。

 浄化師とは、魔物の世界である魔瘴方界(スクウェア)を人が生きていける世界に解放できる『浄』の魔力を持つ者。人々の希望であり、聖人とも称されている者たちだ。


 そんな凄いお人が、東の辺境の町の、さらに端っこの孤児院にやってきた。

 その影響は凄かった。

 何が凄かったかというと……


「あっ、テル兄おかえりー」


「「「おかえりー」」」


「ちょうど良かった! テル兄、ここ教えてよ!」


 孤児院の子供たちが勉強をし始めた。


 頑丈で大きなテーブルに紙を広げた子供たちが、帰ってきたテルスに気づき声を上げる。もう、三日はこの光景をテルスは見ていた。が、未だにあの勉強嫌いで外で遊んでばっかりの四人組が、額を寄せ合って勉強していることが信じられなかった。


 思わず目をこするが、何度見てもこれは現実のようだ。テルスと同じようにベアも目を押さえているが、これは嬉しいからだろう。ベアは熊のような恰幅の良い体を震わし、その目には薄っすらと涙が浮かんでいた。

 孤児院で子供の面倒を見ているベアからすると、これは泣くほど嬉しい光景なのか。まじまじとテルスが子供たちを見ていると、一人の子供と目が合った。


 その男の子シュウの顔には絆創膏が貼られ、その服の下も包帯だらけであることをテルスは知っている。それでも、テルスとルナが魔瘴方界(スクウェア)に挑んだ理由である男の子は、楽しそうに笑っていた。


「ほらテル兄! ここ教えて、この部分」


「この部分って……」


 シュウの背後からテルスが紙を覗き込むと、そこには文字がびっしりと書いてあった。どうやら、読み書きの勉強をしていたようだ。

 この孤児院は貴族であるドラグオン家からの出資があるとはいえ、学校に通えるほど金銭に余裕はない。勉強も自分たちで学ぶしかなく、昔はテルスも魔法を覚えるため、教科書を片手に四苦八苦していた。


「なんか形が歪んでる? こう、見本をしっかり見ながらバランスを意識して書いてみな。というか、何で読み書きの勉強?」


 その言葉に、シュウは他の子どもたち、ハル、ナッツ、フゥと顔を合わせると、声を揃えて元気よく答えた。


「「「「ルナさんと話したい!」」」」


――あの浄化師の少女はたったの二日で、どうやって子供たちの意識を改革をしたのだろう?


 テルスはその疑問に答えられるであろうベアを見るが「流石は浄化師様」とベアの意識はここにないようだった。どうやら、ベアの意識も改革されているらしい。


「……まあ、その見本の文字を覚えれば、会話くらいはすぐできると思うよ」


「ほんと!」


「ほんと、ほんと」


 軽い調子でテルスは言ったが、子供たちは勉強の成果が出るのが嬉しいのか歓声を上げ、ああだこうだと話し始めた。


「今度はルナさん、いつ来るかな~」


「忙しいからすぐには来ないんじゃねえの?」


「でも、また来るって言ってた」


 子供たちの会話を聞いていると、ルナは浄化師ではなく家庭教師みたいな気がしてくる。テルスと違って、ちゃっかり会う約束までしている子供たちには、浄化師なんて肩書は大した意味を持たないのだろう。


 こうして、あまりに子供たちが身近なお姉さんのようにルナのことを話すため、いまいち、ルナが遠い存在になったという実感がテルスに湧かないのだ。


「その頃には話せるようになっていたいな。あっ、テル兄にもう一つお願いがあるんだけど……いいかな」


 しみじみと子供は自由でいいなあ、と考えていたテルスに、シュウが真剣な面持ちで近寄って来る。その顔にテルスは何故か嫌な予感がしてきた。


「えーと、何のお願い?」


「あのね、僕に戦い方を教えてほしいんだ!」


「そっかー…………何故に?」


 唐突なお願いにテルスの思考が止まった。戦い方、つまりは魔物と戦うことをシュウは教えてくれ、と言っているのだ。誰かに教わる経験はあっても、誰かに教えることなど考えたこともなかったテルスは意外すぎて返答に詰まる。


「えっ、ずるいぞシュウ! 俺も、俺もテル兄!」


「私も!」


 次々と自分の足元に駆け寄り、縋ってくる子供たちにテルスは両手を上げて戸惑う。慣れてきたとはいえ、どうにも子供との接し方が分からないのだ。


 そんな一瞬で騒がしくなった孤児院に熊の一吠えが轟いた。


「駄目に決まってるだろうが! テルスゥ、絶対に危ないことを教えるんじゃあないよっ!」


 咆哮は地鳴りの如く、睨む眼光は野獣に見紛う鋭さでテルスを射抜いた。

 静まり返った空間。吠え声に当てられ一層、力を込めて外套を握りしめる子供たちのせいで、逃げることもままならないテルスの頬を冷や汗が伝っていく。


(なんで怒られてるんだろう俺? そんなに魔物と戦うのって危ないのかなあ……護身術くらいなら教えてもいいんじゃ……)


「返事は!」


「はい。決して教えません」


 勝てなかった。

 考える前に口が動いていた。母親代わりといっていいこの人は怒ると下手な魔物よりよっぽど怖いのだ。そのことをテルスは改めて記憶に刻んでおく。

 一方、条件反射のベアへの返答に不満を持ったのはテルスを取り囲む子供たち。ベアに怒鳴られた恐怖もころっと忘れ、テルスに抗議を始める。


「えっ……だめなの?」


「そ、そんな……」


「い、いじわる」


「甲斐性なし」


 期待を裏切られた子供たちの無垢な視線に心が痛む。あと、遠慮のない暴言もダメージがひじょーに大きい。背後で無言の圧力を放つベアの視線は鋭すぎて首筋がちくちくする。残念ながら、我が家のはずなのにテルスの周りに味方は一人もいなかった。


「そ、そうだ。明日お菓子屋に連れて行ってあげるから」


「やった! でも、魔物のやっつけ方は教えてくれないの?」


「そうだよ。俺もそっちを教えてほしい! それにテル兄は明日、王都に行くんだろ。そんな時間あるのかよ?」


「うっ…………」


 痛いところを突かれた。その事が頭からすっぽぬけていたテルスは、ついに返す言葉が出てこなくなる。


 テルスは孤児院の出資者であるシリュウ・ドラグオンに、一週間以上前から王都に来るよう呼ばれていた。色々とあって出向くのが遅れているため、遂に早く来い、と催促の手紙まで届いている。

 これ以上先延ばしにするわけにもいかず、明日は王都に向かわなくてはいけない。それなのに子供たちをお菓子屋に連れていくなど、どれだけ時間を詰めることになるのだろうか。


「……その場しのぎ……」


(くっ!)


 的確に良心を射抜くフゥの呟きに思わずテルスは顔を背ける。が、その視線の先にちょうどいいものがあった。


「じゃあ、大富豪とかチェスで俺に勝ったら……」


「いや! ねえ、だめなのテル兄ー」


 大人気ない意見は一瞬で却下された。本気になった子供たちは手段を選ばない。戸棚の中のトランプやらボードゲームはしばらく埃を被ったままだろう。

 子供たちに揺さぶられながら、テルスはこの四面楚歌の状況にため息を零した。すでに諦めの境地に入りかけている。もう、ベアか子供たちのどっちかに恨みを買うしかない。


(なんか、最近ため息増えたなあ……ベアも俺じゃなくてルナが教えていれば……あっ)


「分かった!」


 急に声を上げたテルスにびくっと子供たちが体を震わした。


「えーと、魔物と対峙するには、魔法が大事だ。だから、魔法を覚えてもらう」


「えっ、魔法を教えてくれるの?」


 期待に目を輝かせ、喜ぶ子供たち。だが、それも一瞬のこと。


「だから、勉強しな。文字が読めないと術式も分かんないだろうし」


 まずは勉強。そう言って、遠い何処かにいるであろうルナに感謝しつつ、テルスはそそくさと自分の部屋に退散し、子供たちはペンを手に孤独な戦いを始めた。











 なんとか、子供たちを巻き、自室に戻ったテルスはベッドに倒れこんだ。

 柔らかな感触の布団に包まれ、うつら、うつらと夢の世界にテルスは旅立とうとする。しかし、その意識をソルの声が引き止めた。


「いやー、外の世界は面白いね。ただの会話でさえ、僕の娯楽だよ」


 枕に顔をうずめるテルスに声をかけるソル。自我を保つため、魔瘴方界(スクウェア)で長いこと休眠していたというこの精霊は、この町に来てから常にご機嫌だ。自分の知識にない発展した町、味わったことのない人の料理。新しいことや未知の物に触れて、気分が高揚するのは人も精霊も同じなのかもしれない。


「明日は、王都に行くんだろ。うん、楽しみだ!」


 わくわくだ、と心底楽し気に話すソルにテルスが目を向けると、ソルは枕元でクッキーを食べていた……ぽろぽろと白いシーツに食べかすを落としながら。


「そんなに? 大きさも人もリーフとは比べ物にならないけど、それでも人の町だ。精霊が気にするようなものはないと思うけど。あと、あまり食べかすで布団を汚さないように」


「はいはい、分かったよ」


 ソルは食べかすを拾い、手元にあったクッキーを食べ終えると窓の外、真っ暗な空を見上げながら話し始めた。


「……僕が王都に行くのが楽しみなのは、建国途中だったあの王都がどんな都市になったのか気になるからさ。休眠する前は、魔物との戦いが激化していてね。この大陸の四方を中心として広がる魔瘴方界(スクウェア)から、最も離れた場所に人々が安心して住める大都市を作ろうと皆が頑張っていたんだ……あの人たちがどんな町を残したのか見てみたいんだよ」


 ソルの表情は見えない。だが、その声には寂しさが混じっているように思えた。


(……そっか。ソルの知っている人も、町の景色も、もう残ってないのか……)


 ソルが休眠していたのは、おそらく百年以上とテルスは聞いている。


 百年。


 人は死に、自然すら形を変えるには十分な時間。二十年も生きてはいないであろうテルスでは想像もつかぬ、刻まれた時の重み。


 ソルとテルスはまだ数日の付き合いだ。その短い間にソルは「楽しみ」と、たびたびその言葉を口にしていた。それはもしかしたら、寂しさや悲しみを覆い隠そうとしていたのかもしれない。いつも楽し気なソルの思わぬ一面を見てテルスはかける言葉に迷っていた。


「どうしたんだい?」


「いや……まあ、王都は確実にソルが見たことがないものが一杯ある。あと美味しいものも多いよ。楽しみにしておきな」


「おお! それはいい。あと心配なのは、君の寂しい財布だけだね」


 その一言でソルへの気遣いは吹き飛んだ。


「それが誰のせいだと……!」


 テルスは魔瘴方界(スクウェア)でソルに助けられた。

 あの【リベリオン】という精霊の力を借りる魔法がなければ、黒い妖精ピクシエルからは逃げることができなかった。そのご褒美としてここ数日の間、数々の料理をソルに貢いできたテルスの財布は驚くほどぺらぺらだ。怪我も完全に癒えていないというのに、魔物を退治しに行くくらいは今のテルスは金に飢えている。


 魔瘴方界(スクウェア)に入った際に魔石をしっかり持って行っていたら。もう何回もした後悔にテルスは枕に顔をうずめた。

 シュウを魔物に連れ去られ急いでいたし、瘴気を【チェック】する暇もなかっただろうが、あの領域での苦労が一銭にもならないなんて酷い話だ。ルナが言っていた賞金とやらは何だったのか。


「そういえば、さっき相手にした魔物も大したお金にはならなかったようだね。そんなんで、本当に王都で僕を満足させれるのかい?」


「分かってるなら手加減しよう……あと、あれは本当はもう少し高いから」


 トロルとワーウルフ。マテリアル《Ⅲ》二体の瘴気ならば、どんなに量が少なくとも一万チップはくだらない。《Ⅲ》の質であの濃さの色ならば、ものによっては十万に届くが……


『マテリアルのないあなたが、《Ⅲ》の魔物を二体も倒せているとは思えません。《Ⅰ》をこつこつ倒した努力は認めますが、この値段以上にはなることはないです』


 それが、ギルドの鑑定の結果だった。

 その結果を耳にした駒者(ピーセス)たちに嘲笑われ、抗議しようと変わらぬ結果にテルスは仕方なく妥協し、ギルドを後にしたのだ。


(トロル、ワーウルフが三万ちょっとは安すぎるよなあ)


 魔石の価値は封じた瘴気の量と質で決まる。強い魔物ほど倒したときの瘴気は多く、質も高い。弱い魔物は倒しても瘴気の量は少なく、質も低い。

 それなのに、ギルドの鑑定人は『マテリアル《Ⅲ》二体分に匹敵する量の《Ⅰ》の魔物を倒した』という意味不明な結果を出した。その瘴気の量になるまで《Ⅰ》を退治するのがどれだけ大変なのか、ギルドの職員が分かっていないのだろうか。


「はああ……」


 結局、テルスがこんな目に遭うのは、駒者(ピーセス)だけでなくギルドからも、マテリアルという評価すらない弱者と思われているからだろう。そう思われているからこそ、魔石を鑑定する目にも色眼鏡がかかるのだ。


 何処が出所かも分からぬ根も葉もない話を流され、駒者(ピーセス)から嫌われ、何故か弱者と見下される。それ自体はテルスにとって大したことではないのだが、そのせいでギルドからの信用も低くなるのは考えものだ。


(いや、逆か)


 むしろ、ギルドに嫌われ、信用が低いからこそ、駒者が自分を見る目にも色眼鏡がかかるのかもしれない。まあ、どっちだろうとそう変わらない。


「なら、なんで……ああ、そういうことか。まったく、人は同族でいがみ合うのが好きな種族だねえ」


 ソルはすぐにそういった人間らしい理由を察したらしい。ここ数日で、ギルドに集まる駒者(ピーセス)たちのテルスを見る目にソルも気づいていたのだろう。おやっさんたち古株の駒者ピーセスがいないこともあって、最近は特に風当たりが強かった。


「なんで、そんなに嫌われているんだい?」


「なんか勘違いされてると思うんだよ、多分。まあ、一番多そうなのは、小物しか狩っていない雑魚とかって感じの誤解。あとは根が深いし、自業自得でもあるからなあ……」


「ふむ。弱いと思われているというのも変な話だね。僕としては君が気にしていなく、王都で美味しいものを食べられるのなら、口を挟まないさ。ほら、明日は早いのだろう? 結局、あの子たちをお菓子屋とやらに連れて行くそうだし、早く休みたまえ」


「そうする……」


 布団に寝転び、まぶたを閉じる。しかし、今日は快適には寝れなさそうだった。寝る前にこんな話をするべきではなかった。思い出すのは、あのときの光景。

 そして、頭に響く数々の侮蔑の言葉を子守歌に、テルスは眠りに落ちていく。


――ああ、きっと。今から見る夢には雨が降っているのだろう


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