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中学時代 中編

 6時間目が終わった。


「ファミレスでも行く?」


「あー、そうだね。そうしようか」


 ということで、昔話の続きはファミレスですることになった。こうして話している最中も俺を呼び出した3人からの視線がすごいな。あいつら、俺にタックルと足払いされただけで、そんなにキレなくてもいいだろうに。いや、ああいうタイプの奴はそんなことされたらブチギレるか。うん、逃げよ。


「じゃあ、早く行こうか」


「おう」



 昔の話は歩きながら話すことでもないと思うので、ファミレスまで、今日の呼び出しと暴力の詳細を有輝に話しながら歩く。


「来いって言われても絶対行くなよ?」


「人にはそういうのになんで自分は行っちゃうんだよ」


「俺は、まあ、慣れてるから」


「これから俺どんな話聞かされるんだよ……。って言うか、普通に帰ってきてるけど、教員に今日の話しないとじゃないのか?」


「うーん……。いいよ。別に、そんなに痛くもないし、俺なんか殴って停学なんてなってもあれでしょ」


「は?何言ってんだお前」


「まあ、また同じようなことがあったら考えるよ」


 そんなことを話しながら歩いていると、割とすぐにファミレスに着く。


 取り敢えず軽いものとドリンクバーを頼む。


「あー、じゃあ、また俺の昔話を聞いてもらおうかな。……ちょっと話しにくいけども」


「無理に言わなくてもいいぞ?」


「いや、大丈夫」


***


 澄香の「仲良くしてやってるだけ」発言を聞く少し前、俺は亮介に恋愛相談をされていた。恋愛がらみで、浮いてしまったやつにそんなことするかとも思ったのだが、相談できるやつがいなかったとのことだった。


 お相手は一つ下の同じバドミントン部の女子。まあ、名前は知っている子だった。正直、そういう系の話はあまり聞きたくなかったのだが、亮介の為ならばと思い、その子と亮介が仲良くできるように全力と尽くすことにした。


 恋愛をしたことないなりに頑張ってアドバイスしたりして、亮介とその後輩は大分仲良くなった。「どっか遊びに誘えば」というアドバイスを冗談半分で言ったら、「二人はハードルが高すぎるから、翔太も来てくれ」と言われ、男女2:2の4人で遊びに行ったりもした。


 そして3年生の夏休みになり、最後の試合の日。この日に亮介は後輩に告白をすると言っていた。亮介と後輩はとても仲良くなってたと思っていたし、結構OKをもらえる確率は高いんじゃないだろうか、とか思いながら自分のことのように緊張していた。


 「いってくる」という言葉に対して、「行ってくる」なのか「言ってくる」なのかどっちなのかなとか思いながらその結果を聞くべく待っていると、亮介はいつになく意気消沈した様子で帰ってきた。明らかにOKをもらえたときの反応ではなかったので、肩を叩いて慰めの言葉をかけようとすると、その手は思いっきり払われた。その行動に驚いて固まっていると、次の瞬間思いっきり突き飛ばされる。亮介は、目に涙を浮かべて怒鳴り散らかしてきた。内容をまとめると、後輩が亮介と仲良くしていたのは、俺と仲良くなりたかったからであり、亮介は眼中になかった、ということだった。そんなことを俺に言われても困るし、俺は亮介を応援するために行動していたので、後輩とは必要以上に仲良くなろうとはしなかったし、実際仲良くなかったのだが……。亮介は「もう、お前の顔も見たくない!」と言って走っていってしまった。


 そのすぐ後に、後輩の女子が告白をしてきた。亮介のことを利用したことは許せなかったし、そんな奴と付き合うなんて冗談ではない。その告白に対して俺は、亮介に話を聞いたことを伝え、「そんな奴とは付き合えない」と言ってしまった。


***


「え、翔太ってなんでそんなにモテてるの?それほんとの話?」


「いやほんとの話だよ。モテてるって話は……」


 有輝になら、顔を見せてもいいだろうか。この顔のせいで人が離れていったことを考えると、仲良くなればなるほど顔を見せたくないのだが……。でも、友達にちゃんと顔も見せていないというのも嫌だな。……ここは、有輝を信じよう。殴られてる俺の前に出てくれるような奴だし、昔の親友とは違うと思いたい。


「話は?」


「まあ、昔はモテたんだよ」


 そう言いながら、ふちの厚い伊達メガネを外し、髪を上げる。


「え……」


 驚いたような表情で固まる有輝。うん、有輝でこの反応なら学校で俺の顔を知ってるやつはいないな。同じ中学だったやつを除いて。


「想像の100倍イケメンじゃんか」


「その言い方はなんか恥ずかしいからやめてくれる?」


「ああ、スマン。……でも、俺の中でのクラス七不思議の翔太の顔が、まさかこんなにイケメンだったとは」


「え、何それ、他の6つは?」


「無いけど」


「せめて、後1つくらいあるもんかと思ってた」


「はー、なるほどなあ。……もしかして、体育とかも手抜いてるのか?」


「え」


「いやだって、殴られたりした後だったのに、めちゃくちゃ足速かったし、あんまり息も切れてなかったし」


「ああー。……うん、変な奴に目をつけられたくないからね」


「そんなことまでしてたのに、目付けられたのか……。まあ、確かにこれならモテるのも割と納得かな……。あれ?翔太って苗字石川だよな?」


「うん、というかちょっと前までは石川君って呼んでたじゃん」


「中学のバドミントンの試合で、ジュニアからやってる人並みに上手くてめっちゃイケメンだって噂になってた石川君って翔太?」


「ああ、俺かもしれないな……」


 まあ、そんなことはどうでもよろしい。話の続きだ。


***


 最後の試合が終わって、次に学校に行った日、俺は昼休みに亮介の席に行った。恋愛相談を受けていたことで、後輩のことをどれだけ好きだったかも知っていた。でも、あのままではいけないと思ったのだ。


 亮介のところに行き名前を呼ぶと、亮介は顔を上げて嫌悪感をあらわにした。そんな反応をされたことはなかったため呆気にとられていると、亮介はクラス全体に聞こえるような大きな声で「人の好きな人を奪っておいて、被害者の俺になんか用かよ!」と言った。は?と思って固まっていると、亮介の周りにクラスメイトが群がっていく。亮介は、自分が俺に恋愛相談をしていたが俺がその相手の子を奪っていった、という話をクラスメイト達にした。それも、完全に俺が悪者でわざと奪っていったかのように言ったのだ。俺は、とっさに中3で同じクラスになった澄香の方を見た。そこにいたのは明らかに軽蔑の目を向けている澄香だった。


 そこから、俺へのいじめが始まるのに時間はかからなかった。最初の1週間は、陰口を叩かれたりすれ違いざまに肩をぶつけられたりした。1週間ほど経つと、俺の机にはごみが入れられるようになった。2週間たつと、クラスメイトから暴力が振るわれるようになった。


 1年生の時は、澄香や亮介がいたため早く平和な日常に戻りたくて解決をしたのだが、3年生の時は、どうでもよくなってしまった。先生に報告もしなかったし、親にも何も言わなかった。けがをした時も、転んだとか言って適当に流していたと思う。


***


「こんな感じなのが、中3でのいじめ前編かな」


「前編……?」


「うん、次に後半の解決編が控えてる」


「ああ、解決編なら、もうちょい……。こんな話、俺が聞いてよかったのか?」


「何を今更。……あー、聞きたくないなら話さなくてもいいんだけど」


「いや、話すのもきついんじゃないかと思って」


「うーん……。……ちょっと恥ずかしい話だけど、俺高校で友達作れると思ってなかったんだよ。……まあ、友達には噂の本当のことを知っててほしいって感じかな」


「……」


「じゃあ、続きを話そう」

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