表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/47

待ち合わせ

ジリジリジリジリ






 夏休みが始まって5日ほど経った。今日はいつもの4人で遊びに行こうということで電車に乗って待ち合わせの駅まで向かっている。


 この5日間はバイトの日が3日と図書館に行って本を読む日が2日という感じだった。バイトに行くのも図書館に行くのも家を出る時間が昼だったので移動が滅茶苦茶暑くて大変だった。中学でバドミントンをしていたから暑さには強いと思っていたのだけど、初めて図書館に行ったときなんかは1時半くらいに自転車で15分くらいかけていったこともあって本当に死ぬかと思った。まあ、図書館の中に入れば涼しかったのでだからどうしたわけでもないけれど、これからはもう少しちゃんと暑さ対策をしようと反省はした。


 あと、図書館は今まで使ってこなかった施設だったのだけど、意外と視線が気になるもんだなという感じだった。学校では嫌な視線を受けることが多かったから、その影響だろうか。……まあ、それはいいか。これからも行くつもりだし、出来るだけ気にしないようにしよう。 


 そんな感じで夏休みが始まって6日目。今日はいつもの4人全員の予定がちょうどないということで、遊びに行こうということになった。意外とすぐに時間が合ったな……。



 遊びに行くために出かけるのはゴールデンウィークに有輝と映画を観に行った以来。


 ……なんか緊張してきたな。


 図書館で借りた本を読んでここまで来たのだけど、待ち合わせ場所に近づくにつれて読むスピードが遅くなっていっている気がする。メッセージでのやり取りはあったけど、顔を合わせるのは久しぶりだからだろうか。


 多分このまま本を読み続けても頭に入ってこないので、俺は抱えていた鞄の中に本を入れて、今日の目的地について携帯で検索したものを眺めた。



~~~



 待ち合わせ場所に着くと、そこには有輝の姿があった。


 待ち合わせ時間の20分前くらいについたのに、もう来ていたのか。


 落ち着かない様子で携帯をいじっている有輝のほうに歩いて行って、手を上げて声をかける。


「おはよ。早いね」


「おー、翔太か。おひさ」


「久しぶり」


 そう言われて、久しぶりだと感じているのが自分だけじゃなくて少しほっとした。


 もしかしたらほかの場所で誰かが待っていたりしないかと思って辺りを見渡していると、有輝が俺を観察するようにじっと見てきていた。


「え、何?」


「いや……なんでもない」


「え、ほんとに?」


 なんか上から下に観察してくる感じだった? 俺、別に変な格好してないよな……?この前ゴールデンウィークに遊んだ時とあまり変わらないはずだし。暑いから上に一枚着ていたものを着ていない以外は変わってないはずだ。


「おう。……それにしても、遊園地なんて久しぶりだわ。中1か中2ぶりくらい」


 そう切り出してくる有輝はやっぱりどこか落ち着きがない気がする。


 それはそれとして、今日行くのは遊園地だ。元々はランドだとかシーだとかに行きたいという話があったのだけど、俺の財布事情から入場は無料の遊園地に行くことになった。


「俺は……小6の時に妹が行きたいっていうのについて行った以来だなあ」


「ほー」


 あの時は、確か遥がみんなで行きたいと言って、父が乗り気でないところを引っ張っていったんだったと思う。懐かしいな。


「……あと、女子と遊びに行くのは覚えてるうちでは初めてなんだよな……」


「あー」


 それで、なんとなく落ち着きがない感じがしたのか。異性と遊ぶとなると、緊張もする……のか?……学校とかでは普通に絡んでるし、あまり気にしないタイプなのかと思ってた。


「なんか緊張してきたわ」


「……まあ、集まれば緊張もほぐれるでしょ」


 まだ15分くらいあるけどね。まあ、話す内容はたくさんあるしすぐ経つだろう。



~~~


 待ち合わせ時間の5分前くらいになって、改札口から小畑さんと宮本さんの姿が見えた。小畑さんが人差し指を口元に立ててるな……。黙っておこうか。


「阿部、石川、久しぶりー。あっついねー!」


「おはよう」


 小畑さんが有輝の後ろから肩を叩きながらそう言った。有輝は「うおっ⁉」っとかなり驚いていて、その様子を見た小畑さんはご満悦といった感じだ。そして、宮本さんはいつも通り普通に挨拶をしてきた。


「おお、びっくりした……。お前ら一緒に来たんか」


「うん。途中から同じ電車だったからね」


 いたずらっ子の笑みを浮かべて小畑さんが言う。


 ……小畑さんって仲良くなると誰にでもこんな感じなんだろうな。最初に会ったときにも思ったけど、なんかいろんな男子を勘違いさせてそうだ。


「じゃあ、集まったし行く?」


「そだね」


 ここは駅前で人も多いのでさっさとこの場を離れることにした。女子二人が来たら急に人目を惹く感じになっちゃったし。


 宮本さんと小畑さんの私服姿は初めて見たけれど、2人ともなんとなくのイメージ通りだった。宮本さんは落ち着いた雰囲気もありながら可愛らしい感じで、小畑さんは元気な溌溂とした感じ。あまり意識したことがないので服のことはわからないのだけど、多分2人はおしゃれなんだろうな。


「あれ、こっちでいいの?」


「え?うん。この道だと思うよ?えっと……ほら、あそこに観覧車見える」


 宮本さんが自分の携帯を見ながらキョロキョロしているので、もう見えている観覧車を指さすと「あ、ほんとだ」と言って少し恥ずかしそうにしていた。


「ご、ごめん。私、地図あんまり得意じゃなくて……」


「へぇ……」


 初めて知った。普段と違うことをすると新しい発見があって面白いな。


 横では、有輝と小畑さんが、自分は地図大丈夫だという話で謎の盛り上がりを見せていた。



~~~



 歩きながら各々の夏休みの予定の話をしていたら、すぐに遊園地についた。その中で有輝のバドミントンの大会の話をした時には二人とも……特に小畑さんが興味津々で見に行きたいなんて言っていた。まあ、見てみたいのは良いけど、暑さ対策だけは怠らないように言わないとだな。


 それで、今は遊園地の中だ。ここは入場は無料でアトラクションに乗るのにお金がかかるシステムになってる。乗り放題とかもあるけど、俺はそんなにアトラクションに乗るつもりはないし買わなくていいかな。


「やっぱりジェットコースターは乗りまくりたいよね」


「私は1回でいい……あんまり得意じゃないし」


「俺も何度もは乗らないかなあ」


 俺は別に苦手じゃないけど。ケチるつもりはないけど、そんなにたくさん乗るのもなあって感じだ。


「え、まじ?もういろんなの乗る気でいたしジェットコースターは5周はするもんだと思ってたわ」


「マジで?」


 5周は聞いたことないんだけど。ジェットコースターは普通は1回で多くて3回までだろ。


 そんな話をしながら歩いて奥の方に行こうとすると、小畑さんが声を上がる。


「あれ、乗り放題買わないの?あそこで買わないとだけど」


「「え、買うの?」」


「そりゃあ買うでしょ!」


 全然買うつもりがなかった俺と宮本さんの声が重なると、信じられないという顔で小畑さんが言う。


「買うだろー。てか、ある程度乗るなら乗り放題買ったほうが得だぞ?」


 それが得にならないくらいに収めようと思ってたんだけどなあ……。



 それから、小畑さんと有輝がこの遊園地のアトラクションの数とか回転率がいいアトラクションとか、色々と語って俺たちを説得しにかかってきた。


「うーん……じゃあ、買おう、かな?」


「あはは……じゃあ、俺も買うよ。せっかくなら乗りまくろう」


 皆買うなら買おう。まあ、これくらいは良いよな。大した出費でもないし。






 お金は大事

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ