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試験結果2

ここ最近の話は休憩タイム

教室は前回同様、少しピリピリと張りつめた空気になっていて、「今回ヤバかったー」とか「今回こそは……」という声が聞こえてくる。


今更緊張したって仕方ないだろうと思うけど、俺も前回より緊張していた。


「あー……、緊張してきたあ……」


「あはは、俺も前回より緊張してる」


「マジ?自信ない感じ?」


「うーん……普通に不安なだけかな」


 答え合わせもしたから自信がないっていうわけでもないんだけどな……。やっぱり、負けないとか言ったからか勝負しているという感覚が強い。


「あー……、俺は今回ちょっとやべえかもだわ」


「あ、そうなの?」


 今回は前回の中間試験とは違ってみんなで集まって勉強するということはなかったので、有輝と小畑さんがどのくらい試験対策ができているかとかは知らないんだよな……。






 そんな話をしていると、ガラッとドアが開いて、いくつかの茶封筒を持った担任の先生が現れた。そしてそれと同時にチャイムが鳴った。


「さ、チャイムなったぞー、席に着けー」


 担任の声に従うようにして、立っていた人やほかの席に居た人がぞろぞろと自分の席に帰っていく。


「さて、皆待ちに待った試験返却の時間だな」


「待ってないです~」


「じゃ、皆お待ちかねということで早速試験を返していくんだが……せっかくだし、今回は出席番号の後ろの奴から返していこうと思う。というわけで――」


 せっかくってなんだ。すぐに返されると思って心の準備をしていたのに、まさかの後ろから。……いや、俺たちはまだいいけど、急に順番が早められた後ろの人たちびっくりしてるじゃん。


 担任は生徒たちの動揺を気にすることもなく出席番号の後ろの方から名前を呼びだした。


「……めっちゃ心の準備してたんだが」


「あはは、俺も」


 有輝がそんなことを言ってくる中、返却が始まる。出席番号の後ろの人から先生が名前を呼んで、試験を返却していく。「ぎりぎり耐えたー」とか、「やばいやばい」という声が返却されたクラスメイト達の方から聞こえてくる。


 そんな様子をぼーっと眺めていると、次は澄香の順番になっていた。


 前回は5位だったのをクラスメイト達が褒めちぎっていたけど、今回はどうなんだろう。……そんなに興味はないけど、ちょっとだけ気になる。


 澄香は先生の言葉を受けて「ありがとうございます」と言って試験を受け取った後、何とも微妙な顔をしていた。まあ、前回5位で「まだまだ頑張らないと」と言っていたし、1位じゃない限り喜んだりはしないんだろう。


「澄香ちゃん、また5位だ!」


 ……やっぱりプライバシーもあったもんじゃないな。






 試験返却は進み、もうすぐ俺の番というくらいになったので、俺は教卓の方に行った。


「石川ー。えっと、石川は……おお、すごいな、前回に引き続き。よく頑張ったな」


「ありがとうございます……」


 担任は笑顔でそう言って俺に答案用紙と結果の書かれた紙を渡した。


 受け取った用紙を見て、すぐに総合順位のところを見るとそこには1と書かれていた。



 ふう……。


 よし。


 少し詰まっていた息がすぅっと抜けていって、一気に胸が軽くなる。こういう感覚は久しぶりだ。


「阿部は……古文がもうちょっと取れたらよかったな。お疲れ様」


 すぐ後ろについてきていた有輝に対する担任の一言が聞こえてくる。前回も文系の科目はあまり良くない感じだったし、今回も良くなかったらしい。



「どうだった?」


「良かったよ」


 そう言って結果の紙を有輝だけに見えるようにする。


「な……前回より、いい、だと……」


 有輝はわざとらしく驚きながらそう言った。


「そんな大袈裟に驚かなくても」


「いや、大袈裟じゃねえよ!……え?あれからまだ上がることあんの?こわ……」


 声をひそめて有輝が言ってくる。前回よりも頑張ったしな。数学Ⅰ、数学A、現代文、英語以外は1位だった。


「よーし、皆席に着けー」


 有輝に試験を渡した後に何か確認をしていた担任の先生がそれを終えたらしく、教室全体に向けて声をかける。クラスメイト達は自分の席にぞろぞろと戻っていった。






 前回と同様の説明が終わり、明日の終業式の話と夏休みの注意事項についての話をされて、ホームルームが終わった。


「よし、じゃあ行くか」


「うん」


 今日は前回の試験の時と同じように俺のバイト先で試験の見直しをしようということになっている。前回はバイトを抜ける形になってしまったので、今回は先に誠さんに話してある。


 帰る準備をし終わって、立ち上がりながら有輝に返事をする。返事をするときに後ろを振り返ると、丁度宮本さんが教室に入ってきていた。



 ……え?珍しいな。最近は昼休みは食堂で帰りが一緒の時は正面玄関で待ち合わせをしているから、宮本さんがこの教室に来るのは久しぶりだ。


「あれ、宮本さ――」


「石川君、どうだった⁉」


「ええ……」


 近っ……そんな詰め寄るみたいに聞いてこなくても。なんでこんなに押しが強いんだ?どうというのは試験の事だろうけど、この前答え合わせもしたし今更そんなに切羽詰まったように聞いてくることはあるのだろうか。


 急に教室に来て詰め寄ってくるもんだから教室内が少しざわついている。有輝の方を見るとその後ろに小畑さんの姿があった。……いや、手を合わせて謝罪の意を伝えてくる前に止めて欲しかったんだけど。というか今すぐ止めてほしい。……あの感じだと期待できなさそうだな……。


「まあ、よかった、かな。えっと……宮本さん、ちょっと落ち着いて……」


「そっか……、良かったんだ……」


 なだめるように両手を顔の高さまで上げて言うと、宮本さんはそうつぶやいた後にはっとしたように周りを見る。


「あ、ご、ごめん!」


 そう言って、宮本さんは小畑さんの方に逃げるようにして行ってしまい、教室から出ていった。


「……何だったんだろ?」


「さあ?」


 まあ、有輝も驚いていたしわからないよな……。



 教室内が何とも微妙な空気になっていて居辛かったので俺と有輝はさっさと教室を出た。


 ……これ、俺が試験1位なのがクラスメイトに勘付かれるのではないだろうか。有輝の話だと宮本さんが学年で2位だったというのは実は学年では有名な話らしいし。昔カンニングを疑われたりしたこともあるしあんまり知られたくはないんだけど……。まあ、噂については今更か。


 教室の外に出て廊下を見渡しても、宮本さんと小畑さんはいなかった。


 ……正面玄関まで行ったのだろうか?





 有輝と話しながら正面玄関まで行くと、靴を履き替えた宮本さんと小畑さんが端の方で小声で言い合いをしているのが見えた。


 靴を履き替えて有輝と一緒に二人のもとに向かうと、宮本さんがこちらに気付く。


「あ、石川君……さっきはごめんなさい!」


 宮本さんが謝ってくる。


「あ、うん。まあ、大丈夫だよ。……取り敢えず行こうか」




 歩きながら教室でのことについて聞いたところ、2位だった宮本さんに小畑さんが「石川が3位かもよ?」みたいなことを言って、どうしても気になったから聞きに来た、という事らしい。宮本さんがたまに周りのことが見えなくなったり聞こえなくなったりすることがあるのは……まあ、ちょっとわかっていたし、そう言うこともあるのだろう。え、それだけ?とは思ったけど。


「まさか、教室の中に聞きに行くとは思ってなくてねー」


「だ、だって……この一か月、石川君に勝ちたくて勉強してきたところあるから……」


 小畑さんの言葉に言い訳をするように宮本さんが言う。


「石川が3位だったらそれはそれで微妙な気分だと思うけどね」


「それはそうだけど……」


「まあ、実際は翔太がしっかり1位だったけどな。良すぎて引いたわ。あの成績」


「まあ、美月のあの点で2位だもんね。そりゃ石川はその上を行ってるわけだし引くほどの点取ってるよねえ……」







 あの教科が何点だったとかそんなことを話しながら、暑い中を歩いて、いつも通りの喫茶店につく。そして、誠さんに挨拶をして、奥の席に座らせてもらった。


「うわあ……やばあ……。ほんとすごいね」


 小畑さんが俺と宮本さんの試験結果の用紙を両手で持ってつぶやく。


 その横で宮本さんは古文、現代文、英語と俺に負けていた教科を中心に見直しをしていた。


「むぅ……やっぱり、このミスは痛かった……。これとさっきのミスさえなければ……」


 宮本さんは滅茶苦茶悔しがっているけど、俺も数学A.1で両方とも負けていたのでちょっと悔しい。数学だけはいつもどこか1つミスしちゃうんだよな……。


 そんなことを考えていた俺の横では有輝が小畑さんと自分の試験結果を見ながらショックを受けていた。


「くっそ……めっちゃ悔しい……」


「へへーん!今回は私の勝ちだね!」


「これが、屈辱……」


「ねえ、言いすぎじゃない?」


 今回は小畑さんが調子が良かったようで総合得点で有輝に勝っていた。苦手な数学もそこそこの点は取れていて、有輝は逆に苦手な古文が足を引っ張ったようだ。


 俺はミスしてしまったところの見直しが終わったのでなんとなくぼーっとしていると、対面に座っていた宮本さんも見直しが終わったらしく答案用紙の整理を始めた。


 ……小畑さんと有輝は全然見直ししてないんだよな……。一応みんなで見直ししようという話だったのだけど結果の用紙だけを見ている。まあ、良いけどね。


「石川君」


「ん?」


「次は、次こそは負けないからね!」


 今回も勝ったけど、前回よりも差は少なかった。……次回も頑張らないとな。


「次回も負けないように頑張るよ」


 真剣な顔で見てくる宮本さんに俺は笑ってそう言った。






いつも小説を書いてた時間が睡眠とプロセカに吸われている……。あと普通に難産だった。もっと更新頻度上げたいんだけどなあ……。

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