図書室の出会い
……ハッ!(このお話を恋愛物として投稿していることに気付いた音)
高校生になって、2回目となる試験が終わった。ホームルームも終わり、もうすぐ夏休みに入るということでクラスメイト達はかなり盛り上がっている。今日は金曜日で今回の試験が返ってくるのは次の水曜日。そのあとすぐに終業式があって、成績は郵送で送られてくるという形になっている。
俺は今日は何の予定もないので、後はもう帰るだけだ。……帰る前に図書室で本を借りるか。試験前で本を借りていなかったので久しぶりだ。
「ふあ……」
「ん?なんだ、今日は眠そうだな。珍しい」
小さくあくびをしたところで、帰る準備をしていた有輝が声をかけてくる。
「うん。……今回はちゃんと試験対策の勉強をしたからちょっと寝不足でさ」
「……その前回の結果を知ってるとおっそろしいな、そのセリフ」
前回は特別試験に向けての勉強をしたわけじゃなかった。当然暗記しなければいけない教科の確認などはしたけれど、普段の勉強の時間に少しやった程度だった。
でも今回は普段の勉強の時間が減ったこともあって、それなりに勉強をした。あと、宮本さんに「次も負けない」と言ったというのもある。そう言ったのにそのための努力をしないのは嫌だった。
「……んじゃ、俺は部活行くわ。じゃあな」
「うん。頑張って」
相変わらず有輝はバドミントンが好きなようで、早足で体育館の方に歩いて行った。夏休み中に新人戦があるということを言っていたので気合が入っているんだろう。「良ければ応援に来てくれよな」とを言っていたけど……バドミントンの大会って完全に締め切ってやるから暑いんだよなあ……。もちろん、応援はしたいんだけど……宮本さんと小畑さんを誘うのもバドミントンの大会だって言うだけでちょっと気が引ける。
……かといって一人で行くのはなあ……。中学の知り合いがいるかもしれないし……いや、そういう意味では一人で行ったほうがいいのか。
「まあ、まだいいか」
まだ有輝の出る大会までは3週間ちょっとある。その時までに決めることにしよう。
鞄を持って教室を出て、試験期間前はほぼ日課と言っていいほどに使っていた図書室に向かう廊下を歩く。
……この1週間くらい使ってなかっただけだけどなんだか久しぶりだなあ。
~~~
開いているドアから図書室に入ると、中はしんと静まり返っていた。久しぶりの図書室の空気だ。
特別読みたい本もないので、並んでいる本を眺めながら前回読んだ本があった本棚に向かう。
……さて、どれを読もうか。
目的の本棚の前について本の背表紙に書いてある題名を眺める。
……うん?
何を読もうかと思っていると視界の端に女子生徒がいることに気付いた。……あ、邪魔だったか。図書室は本棚が短い間隔で置かれているので通路はかなり狭くなっている。一応端に寄っているつもりだったけど、通れなかったようだ。
「すみません」
「い、いえ……」
軽く頭を下げて更に端によってそう言うと、その人は少しうつむいたままそこから動かなかった。リボンの色から2年の先輩であることが分かる。その人は少し身長が低めで、眼鏡をかけていた。そして髪型はボブカットで、全体で見たら宮本さんよりも少し短くて小畑さんよりも少し長いくらいなのだけど、前髪が長めでなんとなく暗い感じの雰囲気を漂わせていた。
……え、通りたかったんじゃないの?固まっちゃって全然動かないんだけど……。
「あの……、本、好きなんですね」
は、話しかけられた……。……なんで?図書室で本を物色してたら話しかけられることなんてあるのか?
「……そうですね」
ちょっと警戒しながらそう答える。好きかと聞かれたら、別にそこまで好きというわけでもないのだけど。ただ、暇な時間を潰すために読んでいるだけだ。
「あの、迷っているなら、これ、お勧めです。も、もし良かったら読んで下さい」
「あ……そうなんですか。じゃあ、せっかくなので読んでみます。ありがとうございます」
それは、ありがたいかもしれない。……もしかして、迷ってたからお勧めしてくれただけ?……だとしたらちょっと警戒していたのが申し訳ない。
そう思って、差し出された本を受け取る。
「あの、読んだら……是非、感想聞かせて欲しい、です」
「え……、あ、はい」
あー、まあ、お勧めしたら感想が欲しいよな……。感想か……。本を読んでもあまり感動とかはしないんだよなあ……。
「いや!その、無理にという訳ではないんですけど!」
嫌がっているように見えたらしく、慌てた様子でそんなことを言ってきた。あわあわ、という感じがぴったりで、ちょっと面白い。……いや、そんなことを思って笑ってしまったら失礼だな。
「いえ、その……ちゃんとした感想を言えるかなと思っただけで」
「そ、それならどんな感想でも良いので是非お願いします!」
「あ、はい。そう言う事なら、読んだら、えーっと……」
「わ、私は放課後はいつもここに居るので!」
「じゃあ、また読んだらここに来ますね」
「は、はい。待ってます!」
そういうと、その人は逃げるようにして、立ち去ってしまった。
……そこそこ分厚い本だし、今日はこれだけでいいかな。
~~~
お勧めされた本を図書室で借りて少し重くなった鞄を背負い、正面玄関に向かう。
靴を履いて、外に出ようとすると、玄関の端の方に見慣れた人の姿があることに気付く。すると、あちらも俺に気づいたらしく、こちらに近づいてきた。
「石川君、試験お疲れ様」
「お疲れ。どうかした?」
「あの、この後暇?もしよかったら試験の答え合わせしない?」
そう言う宮本さんは、ふんわりとした笑顔を浮かべているのに眼だけは真剣で……ちょっと怖い。本当に前回の試験悔しかったんだな……。
「うん、いいよ。えっと……どこでやる?」
「せっかくだし、いつもの喫茶店に行かない?」
普段はバイトとして働きに行くところだけど、客として行くのはなんだか新鮮だな。
「うん、わかった。じゃあ行こうか。ご飯もあっちで食べればいいよね。……あ、でも今日この後雨降るんじゃない?」
もうすぐ梅雨明けすると思うけど、まだ天気は安定していない。今日の天気は午後から雨だったと思う。一応最近は折り畳みの傘を持っているから俺は大丈夫だけど、宮本さんは大丈夫だろうか。
「折り畳み傘あるから私は大丈夫だよ」
「あ、そうなんだ。俺も折り畳み持ってるし、それなら大丈夫そうだね」
そう言う事なら問題なさそうだ。
……ちょっと周りの視線も気になるし、さっさとここを出よう。
「じゃあ、行こう」
~~~
いつも通りの道を通って、いつもの店に着く。話題はいつもと違い、試験内容についての話だったけど、試験の直前はバイトを休んだりしていたこともあって、久しぶりだという感覚があった。……宮本さんに会うのも3日ぶりだな。メッセージのやり取りはしていたからそんな感じはしないけど。
店のドアを開けると、昼時ということもあって中には数グループのお客さんが来ていた。そして、店長がこちらに気付いて声をかけてくる。
「あれ、翔太君と美月ちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは、誠さん」
「こんにちは」
「二人ともちょっと久しぶりだね。ええっと……」
「あ、今日は客として来ました」
「ああ、そうだよね。アルバイトの日じゃなかったから少し驚いたよ。テーブルでいいかな?」
「はい。ありがとうございます」
開いているテーブル席に行って、向かい合うようにして座る。
「じゃあ、早速……」
宮本さんは持っていた鞄の中に手を入れて試験の問題用紙を出した。
「えーっと……、昼ご飯を食べてからでもいいんじゃない?まだ注文もしてないし」
「あ、そっか。……そうだよね」
「取り敢えず注文しようか」
そう言うと、宮本さんは試験問題が入ったクリアファイルを机の端に置いて、メニューを取った。それでも、試験の結果がすごく気になってるみたいでちょっとそわそわしている。
……注文したら取り敢えず1教科だけでも答え合わせをすることにしよう。
「……石川君、どれがおいしいとかあるかな?」
「うーん、そうだなあ……」
たまにまかないで料理を食べさせてもらうことがあるので、大体の料理の味は知っている。うーん……その中で、宮本さんが好きそうなのか……。何がいいかなあ……。
以下は、作者からのお知らせになります。少し長いですが、感想欄についての話ですので感想を残してくださっている人は目を通していただけると嬉しいです。
いつもこのお話を読んで下さり、本当にありがとうございます。たくさんの感想を書いて頂けて、とても嬉しいです。特に前話は多くの反応をいただくことができて、いろんな人の意見を知ることができて、とても嬉しかったです。
ただ、前話を投稿した後の感想で少し気になるというか、嫌な気分になるものがあったのでこの場で少し話をさせていただきます。感想欄は当然感想を書く場なので、感じたことをこう思いましたと書いて頂く分には何も問題はありません。しかし、あなたの小説はこんな作品になってしまっていますよ、というようなことを書くのは止めてください。あなたは間違った小説を書いていると言われているようで、書く気が無くなります。これからは、このような感想を書かれた場合は、そのユーザーをブロックすることにしようと思っています。
こういうことを言うと、自分の感想は大丈夫だろうかと思う人もいると思うので一応言っておくと、ほとんどの人は大丈夫です。嫌な気持ちになった感想には長々と返信をさせていただきましたし、感想が書かれた場所は前話の欄ではなくこの小説全体の欄だったので、当てはまらない人は全く問題ないです。
最後に、この感想は残しても大丈夫だろうかと一度考えてから感想を残すようにすると、私は良いと思います。私のように趣味で小説を投稿している人は、感想一つで書くのをやめてしまうという事もあると思います。私はいろんな人の小説を読むのが好きなので、多くの人が楽しく小説を投稿できる環境であるといいなと思っています。




