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ともだち

 昨日も更新をしているので、もし読んでいなかったら前話からお読みください。





「ほえー……ほんとに1位だ。どの教科も3位までに入ってるし」


「すげえ……3つも百点あるじゃんか」


 俺の試験結果をどうしても見たいと言われてしまったので、誠さんに言ってみんなと一緒にテストの結果を見せ合っている。


 有輝と小畑さんのふたりは珍しいものを見たといった感じでワイワイと盛り上がっていて、宮本さんは俺の対面でじっと俺の結果の用紙を見て固まっている。よく見ると目はちらちらと動いているから、何か考えているんだろう。……でも、ここまで動かないとちょっと気になるな。


「……えーっと……宮本さん?」


「……」


 え、無視された……。いや、多分これ聞こえてないな。


「宮本さん。……宮本さん」


「ふえ⁉……な、何?」


 宮本さんの視界の端に入るようにして手を振ると反応があった。


「いや、ずっと固まってたから」


「あ、そういうこと……」


 そう言うと宮本さんは今度は自分の順位表と俺の順位表を比べるように見始めた。


 宮本さんまたじっと固まってしまう。……気まずいな……。こういう時間は、昔から苦手だ。小学校の運動会の徒競走の走り終わった後とか、中学の部活で試合が終わった後とか、……相手が悪かったと言われる時間は、嫌いだ。


「……凄いね。石川君」


「……ありがとう」


 こういう時はこう答えるのが一番いい。下手に何か言うとそんなつもりはないのに嫌味ととられることがあるから。出来るだけ何も言わないでその場をやり過ごすのが一番だ。


「……でも!」


「?」


 ……でも?


「次は、負けないからね!」


 ……。


 そういうことを面と向かって言われるのは久しぶりで、驚いてしまった。


 ……えっと……、なんて答えればいいんだろう。


 言葉が思い浮かばなくて、額に手をやって頭を回転させる。



 少し考えて、カラオケで有輝と小畑さんが点数勝負をしている時にしていたやり取りを思い出した。有輝に小畑さんが次は勝つからね!と言って、それに有輝は……次も俺が勝つという感じで返していた。


 「次も負けない」……か。頭の中にその言葉が浮かぶと、ライバルという感じがしてなんとなく嬉しくなる。


「……次も負けないよ」


「へ……」


 ……あれ?てっきり宮本さんはそう返されるのを想定していると思ったのに、宮本さんは驚いたような顔で固まってしまっていた。……何か間違えただろうか。


「あ、いや、次こそ私が勝つから!」


 なんていうのが正解だったのだろうということを考え始めたところで、宮本さんからそんな言葉が返ってきた。これは……変なことを言ったわけではないということでいいのだろうか。


「は、はい!これ、ありがとう」


「ああ、うん」


 見せていた俺の試験の結果を渡される。


 ……そろそろバイトの方に戻らないとかな。


「じゃあ、俺はもう戻ろうかな」


「あ、そうか。バイト頑張れ」


「うん」


「ごめんね、アルバイト中に。ありがとう」


「見せてくれてありがとね!バイト頑張って!」


「うん。じゃあ、ごゆっくりどうぞ」


 ……あ、そう言えば、宮本さんの様子を伺っていたから、有輝と小畑さんの点数を見ていなかった。


「そう言えば……有輝と小畑さんはどっちが点数良かったの?」


「俺」


「あー、数学さえなければ……」


 聞いてみると、サムズアップをして有輝が答えて、机に突っ伏すようにして小畑さんが続いた。


「……あー、もう!なんか食べよ!」


「あ、私も何か食べようかな」


 そう言って、宮本さんと小畑さんは2人でメニューを見始めた。


「じゃ、その注文受けてから戻ろうかな」



~~~



 バイトが終わり、辺りがもう暗くなっている中を歩いて、家に着く。ガチャリと鍵を回してドアを開けると中は真っ暗で静まり返っていて、なんとなく恐怖心が湧き上がってくる。……まあ、そうじゃなかったらもっと怖いんだけど。


「ただいま」


 返事が返ってくることはないけど、習慣化しているせいで自然と口からこぼれる。


 電気をつけて、鞄を置き、かけていた眼鏡を外す。


 夜ご飯は……作り置きのおかずでいいか。


 そんなことを考えながら鞄の中から試験の結果を出して机の上に置き、その後に図書室で借りてきた本を机の上に置く。……明日までにこの3冊は読めるかな。


 どれから読もうかと考えながら、今日もっていっていた教科書やノートを整理する。そして、試験の結果もファイルに入れて片付けて、本も机の右端に置いた。そうすると、机の上の左奥に今年度の分の日記帳が残る。いつもそこに置いてあるので違和感があるというわけではないけど、ちょっとおさまりが悪い感じがするな……。


 やっぱり、日記帳を入れている箱をこっちに持ってきた方がいいかな。そう言えば、実家の俺の部屋の物を減らしたほうがいいかとか、前に行ったときに思ったし……今度、実家に行って日記帳を入れる箱の回収といらない物の整理をしようかな。


 椅子に座って、そんなことを思ったところで、ふと今日の宮本さんの言葉が頭によぎった。


『次は、負けないからね!』


 口角が自然と少し上がっていることがわかる。……こういう、暇だと感じるときに今みたいないい記憶がよぎるのは、いつぶりだろうか。


 普段は頭をいっぱいにしていないと、中学の時の嫌な記憶が頭をよぎってしまう。澄香の『仲良くしてやってるだけ』という言葉や亮介のクラス内での言葉、その時の澄香の目やその後にいじめられていた時の光景と、色々なことが頭を駆け巡っていた。だから、いつもはそういう時間がないように、勉強をしたり筋トレをしたり本を読んだりして、他のことで頭をいっぱいにしていた。


……でも、今日は久しぶりにこの暇な時間が良いものだと感じている。


 有輝と宮本さんと小畑さんには、感謝しかない。今俺がこう感じることができているのはみんなのおかげだ。……この関係が、ずっと続いていけたら、良いな。






ここまでが一章みたいな感じです。次回から少しだけ別視点の話になります。

その後は、夏休みくらいまで時間が飛ぶかも。かも。グワッ。


追記(2022/06/05 21:10)

主人公と宮本さんの試験順位の一応の設定

数1・数A・現文・古文・生物基礎・地理・地学・英語・総合の順で

翔太 1・3・2・1・1・1・3・3・1

美月 1・1・5・9・1・4・1・6・2

って感じです。一応なので深く考えてはいません。

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