表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/47

試験後、みんなで


「あ゛ー……疲れた……」


「お疲れ」


「徹夜きついわあー……」


 先生が「中間試験はこれでおしまいですね」と言って教室を出ていき、クラス内の空気が軽くなる。クラスメイト達はみんな、どこが難しかったとかあそこの答えはこれでいいのかとか言い合っている。


 後ろでは有輝がぐったりとして机に身を預けていて、今にも寝てしまいそうな様子だ。


「大丈夫?カラオケ行ける?」


「当たり前だろ。もう予約もしてるしな」


 え、それは準備良すぎじゃない?なんで徹夜までしてんのにもう予約は済んでるんだ。……ほんとにいつ予約したんだろう……?


 そんなことを考えていると、ところでさと言って有輝も周りの人と同じように、さっきまでの試験の内容について話し出す。みんな口々に難しかったと言っているけど、そこまででもなかったんじゃないだろうか。どの教科もそれなりに難しい問題もあったけど、意地悪だなと思う問題はなかったと思う。暗記系の教科も大体予想通りの問題だったし。




 ――キーンコーンカーンコーン


「ほらー、チャイムなったぞー。席に着け―」


 最後の生物の試験の記述問題について話していて、「あー……じゃあこれは途中点何点もらえるかだなあ」なんて有輝が言っていたところでチャイムが鳴って、同時に担任の先生が入ってきた。


 毎回チャイムと同時に入ってくるけど、秒単位で教員室を出る時間を決めてるんだろうか。いや、歩く速度で調整してるのかな。


 そんなことを考えているうちに担任は教卓の椅子に座って話し出す。


「さてと……、じゃあ、中間試験お疲れ様。えー……手ごたえがあったやつ、なかったやつ、ヤマが外れたやつ、鉛筆を転がしてたやつと、まあ色々いるだろうけどみんな今日だけは肩の力を抜いて、明日からまた頑張るようになー」


 高校生になって鉛筆を使ってる人はいるんだろうか。見たことないけど、探せば何人かはいるのかな。まあ、いても転がしている人はいないだろうけど。


「えーっと……、みんなわかってるだろうけど、丁度1週間後……、来週の水曜日のロングホームルームの時間に試験の答案と各々の順位表を渡すことになるから……まあ、そうだな。心の準備はしてくるように。……で、これはそれぞれの教科の担任からも言われるだろうし来週も言うんだが、試験返却の次の授業の日は答案を持ってくるように」


 試験の返却の話をされて、クラス内の明るくなっていた空気がどんよりとしたものに変わるのを感じる。そんな空気を作り出した先生は「さて、試験についてはこれだけで……、じゃあ、配布物を配るか」と言って学級委員の人が持ってきていた配布物に手を伸ばしていた。



~~~



「それじゃあ、試験、お疲れ様でした~、カンパーイ!」


 有輝が予約をしていたカラオケ屋に着いて受付をして、ドリンクバーでそれぞれ飲み物を持ってきた。そうしてみんな席に座ったところでテンションの高い小畑さんがそう言って自分のリンゴジュースを持った手を高く上げる。


 そして、俺たちもお疲れさまーとかカンパーイとか言ってみんなでコップを合わせた。きれいな音が鳴り響く……ことはなく、コンッとプラスチック製のコップが音を鳴らした。


 有輝がグレープソーダ、宮本さんと俺がオレンジソーダ、小畑さんがリンゴジュースに口をつける。ちょっとだけ飲んで口を離したら、有輝と小畑さんはそのまま一杯飲み干していた。


 ……久しぶりにジュースを飲むけど、おいしいなこれ。


「ぷはぁ……おいしー。……さてと、じゃあ、歌いますか!」


 そう言うと小畑さんは部屋の端においてあったタブレットを持ってきて、曲を探しだした。



~~~



「石川君は歌わないの?」


「いや、何歌おうかなと思ってさ。あんまり知らないんだよね。特に今流行りの歌とかは。カラオケも初めて来るし」


「あ、私もカラオケ初めて来たよ。ちょっと緊張しちゃった」


「そうなの?すごくいい歌声だったよ」


「そ、そうかな?ふふっ……ありがとう」


 宮本さんの歌は、ちょっと歌い慣れていない感じもあったけど可愛らしい感じの声をしているから、聞いていて癒される感じだった。


 俺はどうしようかなあ……。まあ、適当に知ってる歌を歌えばいいか。


 今は有輝が歌ってて、次は小畑さんが予約を入れている。さっきから二人で結構盛り上がってるんだよな……。喉痛めたりしないだろうか。


「……ねえ、石川君は試験どうだった?」


「え、うーん……どれもそこそこじゃないかな。宮本さんは?」


「私は古典がちょっと……」


「あー……苦手だって言ってたもんね」


 それでも普通よりはいい点を取っているんだろうな。多分。一位を狙うって言ってたくらいだし。……いや、言ってたのは小畑さんか。


 まあ、それはいいや。さてと……。


「よし、俺もなんか入れようかな」


「おー、楽しみー」


 楽しみと言われると、なんか緊張するな……。頑張るかあ……。



~~~



「おー!すっごぉ……」


「これでカラオケ初めてとか嘘だろ……?」


「石川君歌上手いんだね……」


 モニターには92点と表示がされていた。さっきまで有輝と小畑さんが何曲か歌っていた時の最高得点が90点だったから、結構いい点なんだろうと思う。


「いやあ、すげえなあ……。よっしゃ、次は俺も90点台だすわ」


「おー、阿部、いけるの?」


 有輝と小畑さんはさらに盛り上がって、誰の歌はどうだから難しいとかこの歌ならいけるかもだとか言い合っている。久しぶりにちゃんと声を出したからかすごく疲れた気がするな。……こんなに声を出したのはいつぶりだろう。


「おつかれ様ー。すっごく上手くてびっくりしたよ」


「ははは、ありがとう。ちょっと緊張したなー……」


 ちょっと喉が渇いた気もするので自分のコップを手に取る。喉が痛くなったりはしていないけど、カラオケで歌うのにオレンジソーダという選択は正解ではなかった気がするな。何曲も歌った後だったら沁みてしまいそうだ。


「あっ……」


「うん?」


「いや、その……石川君のってそっちだった?」


「え、うん。こっちだったと思うけど……あれ?こっち宮本さんのやつだった?」


「ううん、私、どっちかわからなくなっちゃって」


 あー……、おんなじ飲み物持ってきたんだし、わかりやすい場所に置くなり配慮をするべきだったか。


「ごめん。わかりやすいようにちゃんと離しておくべきだった……。でも、この模様の上に置いたからこっちが俺ので、これは宮本さんのだと思うよ。」


「そっか……、それなら良かった。私も次は気を付けるよ……」


 今回はちゃんと自分が置いた場所を覚えてたからよかったけど、近くに置いておくのは良くないな。次は気を付けよう。


 ちょっと反省していると、ワイワイやっていた二人も何を歌うか決まったようで、画面には曲名が表示されて音楽が流れ始めた。



~~~



 残りの時間が10分になって電話がかかってきた。もう盛り上がっていた二人も少し落ち着いていて……というか、7,8分前くらいから二人とも試験で疲れていたからか、急に眠気が襲ってきたらしく、おとなしくなっていた。


「ふあぁ……。もう10分前かあ……。このあと、どうする?」


「帰ったほうがいいんじゃない?二人とも疲れてるみたいだし」


「うーん……、そうだねー……。昨日寝るの遅かったし、すっごい眠いよ今」


「七緒、大丈夫?」


「大丈夫大丈夫。眠いだけだから」


 少し心配そうに宮本さんが、うとうととしている小畑さんの様子を伺っている。有輝は……まあ、大丈夫そうだ。疲れている感はあるけど、徹夜した日にカラオケで騒いだらこうなるだろう。


「じゃあ、行こうか」


「おう」


「うん。……あれ、美月、まだ飲み物残ってるよ?」


「あ……そ、そうだった。……そうだよね。飲まないともったいないもんね……」


 残ってるのは最初に入れたオレンジソーダだった。俺のと入れ替わった疑惑もあるし、もったいないけど残してしまってもいいんじゃないかな……と言おうと思ったら、覚悟を決めたように宮本さんは一気にそのオレンジソーダを飲んでしまった。いや、ほぼ確実にあれは宮本さんのだから気にすることもないんだけど、ちょっと恥ずかしい気がするな……。


 俺よりもその疑惑を強く感じているであろう宮本さんは少し顔を赤くしていて、俺もさらに恥ずかしくなってくる。


「よし、じゃあ帰るかあ……」


「楽しかったね!」



~~~



 みんな駅に向かうということなので、少し遠回りになるけど俺もみんなと一緒に駅に向かう。


「結局石川の92点が最高点だったね」


「俺も92点出したんだけどなあ」


「小数点以下で負けてたから」


「くっそ―……」


 ちょっと煽り気味でそう言う小畑さんだけど、自分の最高点は89点くらいだったと思う。まあ得点はあまり気にしないで歌ってたみたいだから、高得点を狙ってたらどうなるかはわからない感じだったけど。


「それにしても、石川が歌あんなにうまいとは思わなかったなあ……。勉強もできるし、運動もできるし、歌もうまいし……、まだほかに何かあるの?」


「え?ほか?」


「まだ特技隠してたりしないかなって」


「ええ……」


 別に運動……多分サッカーの事だろうけど、それも歌も特技ってわけではないんだけど……。なんかあったかな……。


「あー、ユーフォーキャッチャーとか得意かもしれない」


「あれは凄かったな……。タグに引っ掛けたり、魔法みたいに景品がクルッと回って落ちてきたり」


「あ、一緒にやったことあるんだ」


「え、いつ行ったの?」


「ゴールデンウィークだったかな」


 驚いたような表情の宮本さんの問いに有輝が答える。……ゴールデンウィークか……。あれも楽しかったな。映画見てゲームセンターに行って、バドミントンをして。


 そんなことを考えると、無意識のうちに右手がラケットを持つように握っていた。


 バドミントンは特技と言えるかもしれないな。……いや、部活でやっていたらそれは特技と言っていいのかな。


 そこまで考えたところで、胸が苦しくなるのを感じて考えるのをやめた。


「……じゃあ、次はユーフォーキャッチャーができるところに行こう!」


「いいね。私も石川君の特技見てみたいな」


「え、ええ……」


 そんな理由で、決めるの……?いや、それで楽しめるなら俺は良いんだけど……。






高校生の時に試験の後、部活の先輩に「多分そこそこ取れたと思います」って言ったら、「これダメだな」って言われた。なんでやねん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ