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7

SIDE――ギド


慌てている間にも地表は凄まじい勢いで近づいてくる。


目覚めろ私の灰色の脳細胞!いや、隠された力が、いまここ!!!うっ、右腕が………。

どれも死亡フラグな感じが満載な気がしますよね。

この辺りで妥協しておくべきかな。


「ツェツィ!」


一声かけて腕を掴んで抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。


「なんだギド?本当に怖いわけではあるまい?慰めて欲しいのか?」


この男らしい性格はなんなのだろうか

自分が本当に男なのかと自問したくなってくる。

抱きしめると女の匂いと、素肌が当たる部分にはすべすべとした女性の肌

それに特有の柔らかさと質感が伝わってくる。

ふむ、この再現はRCOには無い。ここは人工知能を褒めておくところだな、

まるで現実のようだ。GJ!!


「少し衝撃がくるぞ」


人形の鋼線……廃棄された工場にでてくるマリオネットの操り糸。

巨大な白き皮……大王イカの皮膚を剥いで干した物。………イカに皮膚ってあっただろうか?粘膜では?


合わせた物を広げる。皮の隅々に鋼線を縫いつけ、皮は加工してある。

そう、パラシュートである。ただし、高度が足りなさすぎる。


<<ブレイズボム>>


ドムっと落下する自分の下辺りを爆破する。

熱風と衝撃波で、落下の衝撃がわずかに緩まるが慰めにもならない、本来ならば……だ!

その衝撃と熱風をお手製のパラシュートが受け止める、これでかなりのブレーキがかかる。

ぎゅむっと肩に鋼線が食い込んでかなり痛い。


「我ながらナイスなアイデアである」


続けざまに何度も爆発を繰り返し、落下の衝撃を殺していく。

自由落下程度にまで緩んだ所でスキルの発動をとめてゆっくりと落ちていく。


「………相変わらずギドはすごいな」


いつの間にか身体に抱きつき返しているツェツィ。

見上げるような格好でツェツィがこちらをみつめて、褒める。

………こいつはわかっているのだろうか?

こんな美人に密着されてこんな事言われたら大変な事になってしまう

主に下半身が!


ゆっくりと近づいてくる地上、鬱蒼とした森の中、塔の前だけはひらけている。

ん???いくつかの黒い影とプレイヤーだろうか?塔の前まで逃げてきているが……。

入る事は諦めたのか、塔の扉を背にして戦うようだ。なかなか良い判断だ。


「ギド、先に行くぞ」


そう言うとツェツィが私の手を振り払い、槍を構えるようにして飛び降りる。

凄まじい勢いで落下し、サーベルタイガーに槍を突き刺し、背中を蹴って華麗に着地している。

よくやるもんだ、まったく格好良すぎる。

まだ4Fぐらいの高さは………、ぅ、鳥肌が。

下を眺めると増えるサーベルタイガーをツェツィがあっさりと切り裂いている。

もう1人の騎士のような格好の男は、全身ぼろぼろだが、

ポーションを身体に架けながら1匹1匹確実に戦い、倒していっている。

堅実な男のようである。


「いかん、下がれ!」


ツェツィが短く叫ぶ、木をへし折りながら巨大なサーベルタイガーが現れる

高さは約3m,長さは5Mほどだろうか。


「む、ボスか。風切がでてくるとは………」


ツェツィの目の前のサーベルタイガーが槍の一閃で真っ二つに両断される。

その隙を狙うように、風のように走り攻撃してくる巨大な風切の前脚を槍で受け止めて、弾く。

パラシュートをインベントリにしまいこみ、ツェツィと風切の前に着地する。


「ギド、下がれ。大分強化されているぞ。きついかもしれん」


ツェツィがそう言って前にでようとするのを手で制する。


「まぁまぁ、遅れた分は活躍しないと男子の沽券に関わるので……たしか、こういう時に使うのであったか?明日から本気だす」


ツェツィより組みやすいと見て取ったのか、風切が大地を蹴りこちらへ駆けてくる。振り下ろされる前脚。

3連撃が発動し、残像すら見える前脚と爪。

ガキィっと金属音が響く。


「なかなか重い。だがその程度であるよ?」


振り下ろされる前脚をステッキで受け止め、受け流す。

受け流す際に、ステッキで前脚叩きつけて打撃を与える。


「出会ったばかりで申し訳ないが……さようならである」


<<抜刀術:一の太刀:閃光>>


ステッキを持ち直す。煌く一筋の銀の光。

チンっとステッキから金属音が聞こえる。

ズズっと斜めに線がはいり、ゆっくりと離れていく風切の身体。


「ふむ?やり過ぎたようだ。時に青年、生きているか?」


青い服の騎士に声をかける、ボロボロになっているようだが致命傷の類は見て取れない。

HPも4割ほど残っている。


「あ、ありがとうございます。死に戻りすることになるところでした。ライアードです。ライと呼んでください」


ぺこりと頭を下げる騎士。


「ギド、少し話したい事があるのだが?」


ガシっと襟首を掴まれる。

え?いや、何かした?見せ場取ったことを怒ってる???

ズルズルと引きずられて塔の影へとひっぱっていかれる。








――SIDE ライアード


愛花は無事にログアウトできた。

今度は俺が約束を守らなければと必死に走った、確か奥に試練の塔がある。

その前の広場は安全地帯でこいつらは追ってこられない。





そう思っていた時期もありました。

塔の前の広場まで着いたが、こいつらが入れないわけでも、帰っていく事もなかった。

塔に入ろうかとおもい前までいったが、扉をあけている間にやられるかもしれないし

中にまで着いて来られたら終わりだ。

扉を背にして戦うしかない。数は7匹……愛花のフォロー無しだと無理っぽい、無理ゲー!



なんとか2匹を倒す事はできたが、仲間が減ると遠吠えでこいつら仲間を呼びやがる。

殲滅速度が追いつかない。

それに、さっきから見ているログアウトボタンが灰色になって押せなくなってしまった。

愛花……俺の嫁。すまない、約束は守れそうにない。

いつログアウトできるようになるかわからない

けど大丈夫、死なない。生きて帰ってみせる。


「生きて帰れたら俺、結婚するんだ」


ネタでも挟まないとやってられない。

爪や牙で引っかかれた所がズキズキと痛み、熱を感じる。

実際の怪我の痛みよりは大分マシだとは思うけど、集中できない。

ポーションはもう胃が受け付けない、身体に直接ふりかける。

ポーションと俺の気力が尽きるか、こいつらが死に絶えるかだな……。


「助太刀するぞ!」


上から響く声、視線を移すと綺麗な鎧を見にまとった戦乙女が舞い降りてきた。

落下の勢いをそのままに、サーベルタイガーに突き刺して一撃で倒すと、その背中を蹴って距離を取る。

その時に白い脚と下着が見えそうで、視線が釘付けになったのは男の性です。

愛花ごめん。

着地と同時に飛び掛ってきた他のサーベルタイガーを一閃で倒す。


「ありがとうございます!」


それだけ応えて目の前の奴に集中する。あんなレベルもスキルもない。

きちんと1匹1匹戦って倒すしかない。

だが、これで助かる。死なずに帰れるかもしれないと思うと嬉しかった。

ログアウトはできなくなってしまったが、文字通り死ぬほどの苦痛で死んで帰らなくていい。

そう思った瞬間、前方の森から巨大な黒い影が飛び出してくる。


「いかん、下がれ!」


戦乙女が短く叫ぶ。


「む、ボスか。風切がでてくるとは………」


通称風切。黒いサーベルタイガーを一回り大きくしたような奴で、フィールドボスだ。

強さは雑魚のサーベルタイガーの10倍はあるはずだ。

そして、先ほどのアナウンスでもっと強化されているはず……。


<<二段斬り>>


一瞬で二度の斬撃を目の前のサーベルタイガーに叩き込み、トドメをさす。

風切は助けに来てくれた戦乙女のほうへと飛びかかった。

さすがに手こずるのか、攻撃を槍で受け止めて、顔を歪めている。

盾ぐらいにはなれるかもしれないと、そちらへ走りだした直後、上から降ってきたスーツ姿の男。


「ギド、下がれ。大分強化されているぞ。きついかもしれん」


戦乙女が空から降ってきたスーツの男、ギドにそういって前にでようとする。

恐らくは戦乙女が前面で、魔法使いか僧侶系のこの男とペアで狩りをしていたのだろう。

だが、ギドと言われた男が手で戦乙女を止める。


「まぁまぁ、遅れた分は活躍しないと男子の沽券に関わるので……たしか、こういう時に使うのであったか?明日から本気だす」


いや、沽券とか意地とかって場合じゃないだろ?!

っていうか、中の人は外人さんかな?そして間違った意味で覚えてるぞ!

風切が大地を蹴り、凄まじい勢いでギドに迫っていく。振り下ろされる前脚。

3連撃が発動し、残像すら見える前脚と爪。ガキィっと金属音が響く。


「なかなか重い。だがその程度であるよ?」


振り下ろされる前脚をステッキで受け止め、受け流していた。

受け流す際に反撃まで………なんなんだ?魔法使いとか僧侶ってレベルじゃねえぞ?


「出会ったばかりで申し訳ないが……さようならである」


<<抜刀術:一の太刀:閃光>>


ギドがステッキを持ち直す。居合の構えみたいだなと思った瞬間に

煌く一筋の銀の光。

チンっとステッキから金属音が聞こえてくる、仕込杖!?打撃と斬撃武器を兼ねている趣味武器?!

ズズっと斜めに線がはいり、ゆっくりと離れていく風切の身体。


「ふむ?やり過ぎたようだ。時に青年、生きているか?」


ギドと呼ばれたスーツ姿の男がこちらに声をかけてくる。


「あ、ありがとうございます。死に戻りすることになるところでした。ライアードです。ライと呼んでください」


ぺこりと頭を下げると、うんうんとうなづくギド。

後ろからなんというのだろうか?

ゴゴゴゴっと効果音が聞こえそうな程の怒りを纏った戦乙女が


「ギド、少し話したい事があるのだが?」


ガシっとギドの襟首を掴んで引きずっていく。

塔の影から打撃音と悲鳴が聞こえてくる。


「ま、まて隠していたわけではないぞ!!!魔法と回復の熟練度あげにPTを組みたいとキチンと…」


「私は一度も他の事ができると聞いていない、見ていない!隠し事は無しだと約束しただろう!!」


「ちがっっ、ちょっ、痛いっっ、本当に痛いっっ、関節技はやめっっ!?」


「これでも私はお前を信頼していたのだぞ!こんな私にもよくしてくれると!信頼していたんだぞ!」


「だから、関節はもげるっ、痛いっ、気持ち良いけど痛い……ナニコレ」


「お前が死ぬかもしれないと心配したんだからな……馬鹿者!」


人の事はいえないのだが

あんな凛々しい美人にあれほど信頼されているのは羨ましい事だ。

まったくリア充爆発しろ!!!

しかし、関節技……愛花に関節技をかけられる?押し付けれる胸とか!

密着する身体!なるほど、たしかに天国と地獄、恐ろしい技だ。

しかし、今の会話どうきいても、愛の告白だよな……くそう、やっぱり爆発しろ。


あと1シーンほど書きましたら

主人公のほうへとおはなしがもどります。

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