70.村長をなおす
シロにフェンリル姿になってもらい、俺たちはガキの村へと向かう。
凄い早さで走ってるのだが、ガキの表情は暗い。
多分村の連中がヤバいんだろう。相当な。
俺はガキの頭をなでる。
「そんな顔すんな。ガキは無邪気に、速い速いとか言ってりゃいんだよ」
「……?」
するとシロが言う。
『だいじょうぶ、お兄ちゃんが絶対なんとかしてくれる、任せてっ、て言ってるよ』
ちっ……余計なことを。
しかしガキが俺を見上げて、無言で聞いてくる。ちっ。
「まあ、任せておけ」
「うんっ」
ガキに少し、笑顔が戻った。それでいいんだよ。
さて。
シロの足で数分もかからない場所に、森があった。
その森を抜けた先に目当ての村があった。
『呪詛の香りがするぞ』
自分も呪物である妖刀は、村に入った瞬間そういった。
村は本当にどこにでもありそうな、こじんまりとした村だ。
だが村の外に人は誰一人居ない。
「とりあえず一番やべえやつんとこ、連れてけ」
ガキがうなずいて俺たちを手招きする。
連れてこられたのは、周りの小屋よりやや立派な木造の住宅だ。
「そんちょー!」
村長の家だったらしいな、ここ。
「神様、つれてきたよっ!」
……神様て。まあいい。今はそれどころじゃない。
ガキが部屋の奥へと進んでいく。そこには、やっすい布団に寝かされてる……なんだ、これは。
「がほっ、げほっ……ど、どなた……ですか……?」
「あんた……目ぇ見えてないのか……?」
一人の初老の男が布団に寝かされてる。
だが、男は全身を包帯で巻かれていた。
包帯の表面には血がにじんでいる。
目の部分は包帯が巻かれていないのだが、その目は俺がいるというのに、あさっての方向を向いていた。
「旅人だ。外から来た。少しなら医療の心得もある」
「なんと……ありがたい。だが、申し訳ない。村で流行ってる奇病は、どんな医者でも治らぬとされる呪いの病であって……」
俺は村長の下へ行く。
そして村長の頭に触れる。
「た、旅人さん! いかん! この呪いは触れるだけで伝染する!」
「黙ってろ」
そんな大声出したら、息が苦しくなるじゃねえか。ただでさえ咳き込んでるっていうのによ。
「俺に呪いは、きかねえんだ。【無傷】【無害】、同時発動」
かっ……!
コォオオオオオオ!
「な、なんだ何が起きて……」
包帯がはらり……と落ちる。
出血は止まったようだ。
「具合はどうだ?」
「は、はい……カラダがびっくりするくらい軽く……て、ええ、えええええええええええええええええええ!?」
村長の目が俺と合う。
「し、信じられない! 目が見える! どうして!?」
「さあな」
おそらくスキルが働いた結果かもしれないな。
先天性だろうが、病気は病気だ。
俺のスキルでなかったことにできる。
「旅人よ! 感謝申し上げます! なんとお礼をしていいやら」
「弱ってるやつから何かを巻き上げるような真似はしねえよ」
「なんと……お優しいかただ……本当にありがとうございます! しかし、やはりお礼をさせてください。心が痛いです」
ちっ……。
「じゃあ、この村に居る他のけが人、病人の場所を教えやがれ」
「は? そ、それでいいのですか?」
「ああ。さっさと案内しろ」
「は、はいっ!」




