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192 関西人の本領発揮?

「こういう話があるということで考えておいてくれると助かる」


 この場で即決という話にならないのはわかっているので条件などよりも先に言っておく。


「誘ってもらえるんはありがたいことなんやけど……」


 即決で断られるということまでは考慮してなかった。

 要反省だ。


「それは残念だ」


 あまり強引に勧誘するのも無理強いと同じで良くないだろう。


「冒険者なら続けられるよ」


 ボソッと真利が言った。


「えっ!? ホンマでっか?」


「バッカ、魔神様がウソつく訳あらへんやろ」


「せやけど、冒険者続けてる教師なんて聞いたことないで」


「あー、上からお達し出とるみたいやしなぁ」


「その辺どうなんでっか、魔王様?」


「なぜ私に聞くのだ。真利が言い出したことだろう」


 急に話を振られたことで英花がわずかに不機嫌そうだ。


「それはそうなんですけどね」


「聞こうにも聞けやんのとちゃいますか」


 大阪組の視線が俺の背後に向けられる。


「何やってんだよ」


「だって……」


 真利が体を小さく丸めて俺の背後にコソコソと隠れている。

 また人見知りモードが発動したか。

 大阪組とは普通には無理でも多少のコミュニケーションは取れるようになったと思っていたんだけどなぁ。

 アレか? 常にボケてツッコミを入れるのが慣れないのか。

 グイグイ来るように感じてしまうのかもしれない。

 真利はこういうのに弱いからなぁ。


「しょうがないな、真利は」


 英花が苦笑交じりに嘆息する。


「冒険者のカリキュラムが組み込まれているから教員の冒険者免許取得は推奨されているんだ」


「ホンマでっか!?」


「そんな話、聞いたことないで!?」


「いや、魔王様の言うことやからホンマなんやろ」


「こんな話でボケても誰も乗ってけえへんで」


「いや、魔王様はボケもツッコミもせえへんやろ」


「せや。ワイらだけでボケてツッコミ入れとるがな」


「おもんない。赤点や」


 このノリには俺もついていけないな。

 真利が敬遠するのもうなずける。


「いい加減にしろ」


 低い声で英花が注意すると大阪組は首をすくめて「やってもた」と言わんばかりの顔になった。


「えらい、すんまへん」


「せやけど、そないなカリキュラムがよう組まれましたなぁ」


「文科省とかから後でなんか言われそうな気がするんですけど」


「それな。学生が冒険者になることに反対しとる官僚が多いから免許取得の年齢制限引き下げにもピリピリしてるいうし」


「バイクと一緒にしよういう話が出とるんやろ」


「せや。18才からにしとくべきやいうのが文科省の主張やけど16才でもええいうのが他の省庁で言われ始めてる」


「アイツら学生が怪我したら槍玉に挙げられるから逃げ腰なんや」


「他が前向きなんはなんでや?」


「ダンジョンの資源がより多く得られるからみたいやで。魔道具とかの素材もあるし」


「魔石の需要が増えてるからっちゅうのが大きいんやろな」


 現状での冒険者免許が取得できるのは成人年齢である18才からだ。

 が、これをバイクと同じように16才から取得できるようにしようという話が持ち上がっている。

 仮にそうなるとしても何らかの制限はつけられるだろうけどね。


「カリキュラムについては確かな筋から上がってきた情報だから間違いはない」


「ホンマに?」


「何処からですのん」


「まさか文科省やないですよねえ」


「自衛軍だ」


「「「「「なんで?」」」」」


 ものの見事にハモっている。

 そんなに不思議に思うことだろうか。

 情報の出所がわかってしまえば納得できる話だと思うんだけどなぁ。


 ダンジョンのことについては日本では冒険者組合の上部組織である自衛軍が管理することになっている。

 もちろん冒険者免許の発行についても自衛軍の上である防衛省の所管となる。


「よく考えろ。新設校の生徒が誰なのか」


 英花の言葉に大阪組が考え込む。


「あ、異世界人の子供か」


「こっちに来たんは大人だけやないもんな」


「そういうことかいな」


「元の世界で魔物とか普通におったいう話、聞いたことあるで」


「それやったら成人してからとか悠長なこと言うてられへんわなぁ」


「エルフとかやったら魔法も普通に使えるやろし」


「ドワーフも使えるらしいで」


「そうなんや。それやったら冒険者の授業とかあってもおかしないか」


「むしろワイらが冒険者やいうて胸張って教えられるんか」


「それ、あり得るな」


「子供の方が魔物の殲滅力高いてなったら赤っ恥や」


「まあ、ワイらが冒険者の授業を担当すると決まった訳ちゃうし」


「そもそも、この話について返事もしてへんがな」


「そうか?」


「そうや」


 どうやら最初に断られた話はなかったことにされているようだ。

 前向きに検討してもらえると考えてもいいのだろうか。

 ここはプッシュしたいところだけど、前のめりになりすぎて引かれても困るから我慢しようか。


 大阪組はなにやら顔を突き合わせて相談を始めた。

 まさか、ここで決めるつもりか?


「待て待て、ちょっと待て」


「なんですのん、勇者様」


「条件とか確認せずに決めるのか?」


「おっと、せやった。冒険者が続けられる以外のこと、なんも聞いてへんかったわ」


「アカンやんけ。しっかりせえや」


「お前も人のこと言われへんわ」


「そういうお前もな」


 ひとこと注意するだけでこれだよ。


「細かい条件については後で送るから、その上で返事してくれればいい」


「了解っす」


 という訳で前向きに検討してもらえることになった。

 色好い返事が期待できそうで一安心だ。

 まあ、検討の末に残念ながらということもありえるので安心しきることはできないのだけど。


 なんにせよ今は修学旅行の最中である。

 やきもきするより楽しまないとね。


「それにしても東京タワーに来るとは渋い趣味だな」


「いやいや、魔王様も来てますやん」


「我々はスカイツリーの後で来ているからな」


「ワイらは逆でっせ。この後、スカイツリーに行きますねん」


「やっぱ低いところから攻めんと盛り上がらんでしょ」


「そうか? どちらも眺めが良くてあまり気にならないがな」


 その返事に大阪組は苦笑していた。

 感じ方は人それぞれだから自由に楽しめばいいんじゃないかな。


「それで他にも回るのか?」


「今日はツリーで終わりですわ」


「明日はダンジョンに行く予定になってます」


「ほう、我々と同じだな」


「そうなんでっか?」


「ほら、あれや。大阪の時と同じ感じなんやろ」


「あー、はいはい。長期遠征に来てる合間に修学旅行ちゅうことですな」


「そういうことだ」


「魔王様は何処のダンジョンに行くつもりです?」


「お台場だ」


「おおっ、一番デッカいとこに行くんでっか」


「難易度も高いて聞いてるけど、いきなりで大丈夫ですか?」


「無理はしないさ」


 その返事に大阪組は苦笑する。


「どうして笑うのだ」


「えー、魔王様らの無理せえへんは俺らにとっては本気と変わりませんで」


「せやな。あっちゅう間に隠し階段とか見つけてしまうんとちゃうやろか」


「やたら広いのにボス部屋がまだ見つかってへんそうやしなぁ」


「これは期待できそうや」


「ワイらも見学に行くか」


「それ、ええな」


「行こ行こ」


 よくわからないうちに大阪組の予定を変更させてしまったようだ。

 なんだかなぁ。


「俺らも行って構いまへんか?」


「好きにすればいい。止める権利など誰にもないだろう」


 そのかわり深入りして痛い目にあっても自己責任だけどさ。


「やった。勉強させてもらいまっさ」


 見学するつもりとはね。

 まあ、いいか。


読んでくれてありがとう。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


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