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モニターに応募したら、系外惑星にきてしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。  作者: 津嶋朋靖
第六章

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宮廷魔法使いの執務室  2

「でも、ダモン様がやった事は日本人の基地の教えただけで、落城に直接関わるような事では……」

「だが、実際にそれが原因で、城は落ちてしまった」

「……他に、方法は……なかったのですか?」

「あったかも知れない。だが……女房と子供が人質に取られたと知った時、私はすっかり気が動転してしまった。今考えれば、誰かと相談して、人質を奪還するという手もあった。あるいは帝国軍の目的が魔法使いの生け捕りにあるなら、私の女房子供に手をかけるはずがないと……今からでは、何もかも手遅れだがな」

「でも、ダモン様。補給基地だって、簡単には落ちなかったじゃないですか。帝国軍は三回も攻撃に失敗して、一個師団が丸ごと壊滅したじゃないですか。ダモン様が補給基地の場所を教えたのは、帝国軍には落とせないと思っていたからではないのですか?」

「確かに……私もタカをくくっていた。あの基地は、日本の最強戦士が守っている。場所を教えたところで、落とせるものかと……だが、落ちてしまった」

「でも……一つの基地を落とすだけで、敵は一個師団を失ったのですよ。敵を罠にかけたと思えば……」

 ダモンさんは首を横にふる。

「そのために、一人の女性を、失意のどん底に追い込んでしまった」

「え?」

「飛行機械で、この城に物資を届けてくれていた日本女性を覚えているか?」

「ええ」

「補給基地が落ちた時、彼女は号泣して後追い自殺までしかけたのだ」

「ええ!? なぜ?」

「補給基地を守っていた戦士は、彼女の恋人だった。戦争が終わったら、結婚するはずだったのだ。私は、取り返しのつかない事を……」

「……」

 ダモンさんは僕の方を向いた。

「君は日本人だな。その鎧は知っているぞ。ロボットスーツとか言ったな」

「ええ」

「補給基地を守っていた戦士も、それを使っていた。私は彼が、帝国軍一個大隊を一人で壊滅させるところを、この目で見たことがある」

「一個大隊!?」

 僕だったら、絶対無理だ。

 そいつはどうやって、そんな事をやったんだ?

「その光景を見たとき、私は彼を、無敵の闘神か何かのように錯覚してしまった。だから、帝国軍がいくら攻めてきたところで蹴散らしてくれると……だが、違った。鎧の中にいたのは、神でも悪魔でもない。血の通った人間だった。私は、彼を死に追いやってしまった……」

「でも、それは戦争だから……」

「戦争だからなどという言い訳では、私は自分を許せない。私が女房子供を愛しているように、彼女も、あの戦士を愛していたのだ。私は、この身をもって、その償いをしなければならない」


 この人は、良い人だ。

 なぜミールが、慕っているのかよく分かる。

 だけど、この人は、人の心が分かっているようでいて分かっていない。


「ダモンさん。あなたは卑怯だ」

「なに?」


 いきなり、卑怯呼ばわりされてムッと来たのか、ダモンさんは僕を睨みつけてきた。

 だけど、ここで引くわけにはいかない。

 僕はヘルメットを外した。

 素顔を晒して、こっちも睨み返す。


 まあ、僕の童顔で睨まれてもビビらないと思うけど、それでもヘルメット越しに睨みつけたのでは……あれ? ダモンさんは引いている。

 ううむ……この惑星で戦いを潜り抜けていくうちに、少しは僕の顔にも貫禄が付いてきたのだろうか?

 よし、もうひと押し…… 


「罪の意識は、苦しいですか? あなたが死のうとしているのは、その苦しみから逃れたいからじゃないのですか?」

「な……そんな事は……」

「カイトさん……」

「ミール。ちょっと黙っていてくれ」

 ミールは押し黙った。

「この身を持って罪を償う? そんなのは、自分勝手です。償うために死のうとしているのではない。あなたは、自分のやった罪から逃れたくて、死のうとしているだけだ」

「君のような若者に、何が分かる? 私の何が分かると言うのだ?」

「ええ、分かりませんよ。あなたの事なんて。でも、愛する者が死んだら、悲しいのは僕にも分かる。あなたが死ぬことによって、あなたを愛している人達を、悲しませたいのですか?」

「私を……」

「あなたの奥さんも子供も、ここにいるミールも、あなたが死んだら悲しみます。だから、ミールは分身を使わないで、直接ここへあなたを説得に来たのですよ」

「ミール。そうなのか?」

 ミールは無言で頷いた。

「ダモンさん、生きて下さい。誰もあなたの死なんて、望んでいない」

「しかし……」

「日本人の女に、あなたは引け目を感じているようだけど、あなたが死んだら今度は彼女が、罪の意識に苛まれることになる。自分の涙が、あなたを死に追い込んでしまったと……」

「それは……」

 ダモンさんは、しばらく無言でうな垂れていた。

「確かに……君の言う通りだ。死んでこの重圧から解放されたいという気持ちが、心のどこかにあったようだ」

「では、ダモン様。考え直してくれますね?」

 ミールは、希望に満ちた視線をダモンさんに向ける。

 しかし、ダモンさんは無言で首を横にふったのだ。

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