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モニターに応募したら、系外惑星にきてしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。  作者: 津嶋朋靖
第二章

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レッドドラゴン

 最初に犠牲になったのは、ベジドラゴンの子供だった。

 と、言っても僕の方に逃げてきたチビドラゴンじゃない。

 たぶん、そのお兄さんかお姉さんなんだろうと思うが、助走をつけてようやく飛び立ったところを、急降下してきたレットドラゴンの鉤爪に掴まれたのだ。

 親のベジドラゴンはどうしていたかというと、一頭が子供の方へ助けに行こうとしているのを、もう一頭が押しとどめていた。

『あなた、止めないで! あの子が殺されちゃう』

『よせ! 行けば、君も殺される』

 翼竜夫婦の間で、こんな会話をしているんだろうか? と、勝手に想像してみた。

 いや、そもそもどっちがお母さんで、どっちがお父さんか分からんけど……

 レットドラゴンは、捕まえた子供を仕留めると、食べないで次の獲物に襲いかかった。

 親とは反対方向に逃げた子供が犠牲になる。

 これも食べない。

 なんだ、こいつ?

 弱肉強食なら仕方ないと思うが、殺戮を楽しんでいるのか?

 それとも、ここで大量に狩って、保存食にでもするつもりか?

 確かに、これだけ塩があれば保存も楽だろうと思うが……塩を使って、保存食を作るだけの知恵があるようには見えない。

 いや、動物を見かけで判断してはいけないな。

 塩の平原なんだから、ここに穴を掘って埋めておくだけでも保存できるかも……

 次に奴は、二頭の大きなベジドラゴンと、その間に挟まれた子供に視線を向けた。

 しかし、見ているだけで襲いかかろうとしない。

 草食とはいえ、身体の大きさは互角。

 さらに二頭いるとなると、やりにくいのかな?

『ち! 親のベジドラゴンは面倒だな。怪我でもしたらつまらんし、他の獲物を狙うか』

 と思ったのか、レッドドラゴンは他の獲物を物色……え?

 次に奴が狙いを定めたのは、他ならぬ僕だった。

 ヤバイ!! 

 慌てて僕は、ショットガンを手に取った。

「撃っちゃダメです!! 奴は、ショットガンじゃ殺せません」

 んなこと分かっている。

 しかし、殺せなくても、当たればかなり痛いはずだ。

 足止めにはなる。

 それに……

 振り返ると、レッドドラゴンはかなりの距離に迫っていた。

 今までクレー射撃はやったことあるけど、生きてる動物を撃った事はない。

 僕に、動物を撃てるだろうか?

 犬や猫だったら、間違えなく撃てない。

 しかし、ここで撃たなきゃ自分が死ぬ。

 ならば……

 僕は迫りくるレットドラゴンを睨みつける。

「こいつはゴキブリだ。こいつはゴキブリだ。こいつはゴキブリだ」

 でっかいゴキブリだと思えは撃てる。

「こいつはゴキブリだ! ゴキブリなんだあ!!」

 自己暗示完了。

 いささか安直に自己暗示にかかったみたいだが、気にしてはいけない。

 慎重に狙いを定め、トリガーを引いた。

「キシャー!!」

 レッドドラゴンは、悲鳴を上げて塩の平原上でのた打ち回った。

 右目から血を流している。

 確かに強靭な鱗に覆われた皮膚は貫けないけど、目はそうはいかないだろう。

 僕はこれでも、射撃には自信がある。

 クレー射撃なら百発百中だ。

 ゴルゴ13やシティハンターには負けるが、のび太と張り合えるぐらいの腕はある……と思う。

「なんで撃ったのですか!? ほっておけば、通り過ぎるだけだったのに」

 やかましく叫ぶPちゃんの方を向いた。

「何言ってるんだよ。奴は僕を狙っていたんだぞ」

「いえ。狙われていたのは、この子です」

 Pちゃんの指し示す先にいたのは、さっきのチビドラゴンだった。

「え? こいつ、どこにいたの?」

「さっきから、ご主人様の背後で、震えていました」

 姿が見えんと思っていたら、そんなところに……全然気が付かなかった。

「ぴー」

 チビドラゴンが一声鳴き、僕にすり寄ってきた。

 いや、懐くなよ。

 僕は、お前を助けるつもりで、撃ったんじゃない。

 いや、でもこいつが背後にいたという事は……

「ちょっと待てよ。撃たなかったら、どのみち巻き添え食ってただろ?」

「だから、ご主人様は、この子から離れればよかっただけです」

「しかし、こいつが僕の後からついて来たらどうするんだ?」

「そのときは、この子を撃つのです」

 確かに、縁もゆかりのない動物を助ける義理はないが……それ、人間としてどうよ?

 おっと!! 今はそれどころじゃない。

 レッドドラゴンの方を見ると、のた打ち回るのを止めて、のっそりと立ち上がったところだった。

 残った左目で、僕を睨みつける。

 その目は如実に、こう語っていた。

『ようもやってくれたのう。われぇ。覚悟は、出来とるんじゃろうな』

 いや、覚悟なんか、できてませんが……

 レッドドラゴンは、再び猛然と突進してきた。

 ショットガンを構える。

 あれ? 奴の動きが止まった。

 それどころか、後ずさりしている。

「あいつ、なんでかかってこないんだ?」

「警戒しているのですよ」

「なんで? ショットガンじゃ、奴は殺せないんだろ?」

「確かにショットガンでは、レッドドラゴンの鱗を貫通できません。しかし、当のレッドドラゴンはその事を知りません」

 なるほど。少なくとも奴は、自分の目が潰された原因は、このショットガンだと理解できるだけの知能はあるんだな。その知能が却って仇となって、ショットガンを過大評価してしまっているんだ。

 それなら……

「おら! おら! おら!!」

 僕はショットガンを構えて、レットドラゴンに向かって駆け出した。

「ちょっと! 何しているんです!? 危ないですよ」

 言っておくが、これは決して調子に乗っているわけではない。

 今、一番マズイのは、このショットガンが奴に効かない事を知られる事。

 いつまでも撃たないでいると、そのことを悟られる。

 だから、こっちから向かって行けば……

「キシャー!!」

 予想通り! 奴は逃げ出した。

 今のうちに……あれ? 奴を倒す決定的な手段がない。

 逃げるか?

 いや、空を飛べる奴から逃げられない。

「Pちゃん。今のうちにもっと強力な武器を……」

「ありません」

「装備一覧を見たら、マルチプリンターというのがあったぞ。あれで武器を作れるんだろ? バズーカ砲を出してくれ」

「あまりに強力な火器は、同士討ちの危険があるため、最初から三次元データを入れていないのです。あったとしても、バズーカ砲をいきなり渡されて使い方分かりますか?」

「いや、無理だ。しかし……武器がだめなら、爆薬の原料になる薬品出してくれ」

 これでも、大学では化学工学を専攻していたので、そのぐらいは調合できる。

 いや、爆薬調合の講義を受けたわけではなく、自分で調べて薬品や実験道具をばれないようにちょろまかして、黒色火薬やトリ・ニトロ・トルエンを調合したりしていたのだが。

 ばれたら、逮捕だったね。

「それは出せますが、冷静になって下さい。調合している時間があると思いますか?」

 ないな。普通に考えて、あるわけないな。

 いかん! 冷静にならんと……

 チラッと、レットドラゴンの方を見ると、奴は離れたところから、恐る恐るこっちの様子を見ていた。

 ショットガンを向けると、パッと飛びのいて距離を取る。

 まだハッタリが効いてるようだ。このまま……『ちっ! こんな面倒な奴やめておこう』と考えて帰ってくれないかな。

 いや、無理そうだ。

 片目を潰された事を、根に持ってるのかな? 持ってるだろうな。

「ご主人様。今のうちにロボットスーツを……」

「あれは、嫌だと言ったろ」

「わがまま言っている場合ですか!!」

「わがままじゃない。僕はこのスーツのせいで、何度も死にかけたんだ」

「でも、レッドドラゴンが襲ってきたら、確実に殺されますよ」

「おまえが、戦え!!」

「か弱いアンドロイドに、無茶言わないでください」

「か……か弱いのか?」

 ううむ……アニメやマンガに出てくるアンドロイドって、メッチャ強いけど、アシモとか現実のアンドロイドって、あんまし戦闘向きじゃなかったな。

「そもそも人型は、戦闘には向きません」

 そういえば、ガンダムみたいな巨大人型ロボットなんか作っても、実戦では戦車に勝てないと言われていたな。あんなデカ物いい標的だし、いくらチタニウム装甲でも、徹甲榴弾食らったらアウトだろう。

 では、ロボットスーツはいいのか?

 これは、いいんだ。

 ロボットスーツは、元々は歩兵を補助するためのもの。重装備の歩兵が長時間移動しても、疲れないようにする目的で開発された。

 ただ、僕が使っていたのはちょっと違う。格闘ができるように開発されたのだ。

 軽めの装甲なら一撃で粉砕できるパンチ力を持っているし、自動車並みの速度で移動できる。

 そのせいで、装着者の身体に無理な負担がかかるのだ。

 しかし、今はこれを使わないと、切り抜けられそうにないな。

 仕方ない。

 僕は、ショットガンを地面に置いてシートに座った。

「装着」

 自動装着機能が動き出す。

「げ!?」

 レットドラゴンが、こっちへ向かって突進して来た。

 しまった! ショットガンを手放したので、チャンスと考えたな。

 ロボットスーツの装着には、三十秒かかる。

 間に合わない。

 レッドドラゴンは、大口を開けて迫ってくる。

 あかん、食われる!!


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