なんか、話が違ってない?
「カイトさん! どこですか?」
森の中に逃げ込んだが、ミールはまだ追ってくる。
大木の裏に回り込んだ。
ラッキー! 隠れるのに丁度いい洞があった。
「おい! 奴はいたか!」
ん? 男の声?
「くそ! どこへ逃げやがった。おい! そこの魔法使いの姉ちゃん」
男は、ミールに話しかけたようだな。
「なんでしょう?」
「こっちに怪しい女が逃げてこなかったか? 帝国人なんだが」
「いいえ、見かけませんでした」
「そうか。姉ちゃんも、ここで誰かを探していたのか?」
「ええ。素敵な殿方が、この森へ入っていったのですけど、見かけませんでした?」
「なに! 素敵な殿方? それなら、ここにいるぞ。ホレホレ」
「ご冗談は、よしてください。オジさんは、趣味じゃありません」
「ガハハ!」
「おい! バカな事やってないで追いかけるぞ!」
「そうだった。じゃな。姉ちゃん」
両者の声は、遠ざかっていく。
「行ったか?」
「行った」
「よかった。よかった」
「一時は、どうなるかと思ったぞ」
僕たちは、互いに喜びあった。
ん? 僕たち……
「誰だ? おまえ」
「君こそ……」……誰だ? と言い掛けた。
よく見ると、知っている奴だ。
キラ・ガルキナ! なんで、こんなところに……
「待ってくれ。僕は、ここに人がいるなんて知らないで入って来たんだ」
「そうか。おまえも、誰かに追われているみたいだな」
どうやら、僕がこの前戦った相手とは分からないようだ。
今は、ロボットスーツを着ていないからね。
とにかく、これ以上彼女と関わらない方が無難だ。
「それじゃあ、僕はこれで」
「待ってくれ」
出て行こうとした僕の手をカルギナが掴む。
「まだ、何か?」
「食べ物を、持っていないか?」
ボケットを探ると、カロリーメイト……のような非常食があった。
もの凄い勢いで、ガルキナは非常食を食べる。
「なんか、追われていたみたいだったけど……」
「私は何もやっていない。しかし……もう一人の私が、何かをやってしまったらしい……」
「もう一人の私?」
「ああ……おまえは、私を変な奴だと思っているだろ。だが……」
「分身魔法の事?」
「分身魔法を、知っているのか?」
「うん。一応……」
「なら、話は早い。私はどうやら分身魔法という能力があるらしい。まったく自覚がないのだが」
うん。知ってる。
「私が無意識のうちに作り出してしまった分身が、あちこちで悪さをするせいで、私はいつも肩身の狭い思いをしてきた。さっきの男たちにも、きっと分身が何かをやってしまったのだろう」
「それは気の毒に……しかし、自覚がないのに、なんで分身がやったって分かるの?」
「分身が暴れた後は、決まって猛烈な空腹に襲われるんだ」
ああ、なるほど。ミールがそうだったな。
「あのさ、それならナーモ族の魔法使いに頭を下げて制御法を教えてもらえば」
知っていて、こういう事を聞く僕も意地が悪いな。
とは言え、僕がこの前戦った相手だという事を知られると厄介な事になりそうだし……
「もちろん、私はそのつもりでここへ来た」
え? プライドが許さないのでは?
「だが、ネクラーソフが、それを邪魔した」
なんか、話が違ってない?




