取引?
『リトル東京のドローンがここを偵察に来たという事は、もう知っているのだろう? この島の重要性を』
あいまいな言い方だな。『重要性』とは言っているが、その内容までは言っていない。
それなら、こちらも手の内は明かさないまでのこと。
「もちろん知っています。知っているからこそ来ました」
ここで僕は『知っている』と言ったが、何を知っているのかは教えない。
『では、迂闊にこの島を攻撃すると、惑星が吹っ飛ぶことも知っているな?』
「反物質貯蔵施設の事ですか? もちろん知っていますが。それとも、他に何かあるのですか?」
『いや、それの事だ。他にはない』
「それでご用件は?」
『取引をしたい』
「どのような?」
『俺のほうからは、ある有益な情報を提供する。俺がこの島で偵察して得た情報だ。そっちは今から偵察を始めるみたいだが、今からチンタラ情報を集めていたら手遅れになるぞ』
「なぜ手遅れになると?」
『帝国軍は急速に戦力を増大している。急がないと、リトル東京とカルカが連合しても太刀打ちできなくなるんだ』
「帝国軍が、そこまで戦力増強をしている理由は?」
『それはまだ教えられない』
「なるほど。では見返りに何をお求めですか?」
リトル東京に戻りたいとか言ってきたらどうしよう?
その時は、『僕に土下座して過去のパワハラ行為を謝罪しろ』という、到底呑めない条件を突きつけるか?
『この島のある場所を、そちらで攻撃して欲しい』
え? そういう事?
「その前に聞きたいのですが、現在のあなたは帝国と敵対関係にあるのですか? 以前は、協力関係だったはずですが」
『そうだよ! 今の俺は帝国に追われる身だ。だから、頼んでいるのだろう』
「なるほど敵対関係にあるのですね。しかしわざわざ、こちらに攻撃を依頼するという事は、その場所はフーファイターのレーザー砲では歯が立たないのでしょうか?」
『そうだ。レーザーとは相性の悪い相手でな』
「対消滅爆雷は?」
『あれを使うと、フーファイターが対空レーザーで落とされる危険がある。レールキャノンならなんとかなりそうだが、俺にはそれがない』
「それは、そこまでして攻撃するだけの価値があるのですか?」
『ああ。あれを失えば帝国軍は一気に弱体化するはずだ』
「それで、それをする事によって、あなたにとってどのようなメリットがあるのですか?」
『弱体化すれば、帝国軍に俺を追い回す余裕はなくなるはずだ』
なるほど。追っ手の弱体化は確かにメリットだな。
だが、それだけだろうか? 何か他にも理由があるのでは?
「しかし、矢納さん。リトル東京もあなたを指名手配しています。という事は、リトル東京に対してもあなたは同じ事をするのではないのですか?」
矢納さんは、小さく舌打ちをした。
『やらねえよ。指名手配はしているが、追っ手はかけていないだろう』
正直、リトル東京がこの男に追っ手を差し向けているのかは分からない。
だが、矢納さんがそう言うのならそれでいいだろう。
実は追っ手がかかっているが、本人が気がついていないだけという事もあるし……
それより問題なのは……
「その攻撃地点には、何があるのですか?」
『それはまだ言えない』
「それでは取引なしですね」
『いや! ちょっと待て! なぜそうなる?』
「いや、当然でしょ。何があるのか分からないところに、攻撃なんか出来ないでしょ」
『いや、あれを攻撃すれば、おまえ達も得するんだ』
「どうやってそれを証明するのですか?」
『それはだな……』
「あなたが攻撃を指示した場所が、反物質貯蔵施設ではないという保証は?」
『いや、そんなところ攻撃したら、俺も死ぬんだぞ! 俺に自殺願望はない』
「あなたに自殺願望があるのかは検査しないと分かりません。だけど検査を受けることはできないでしょ」
『分かった、教える。そこにいるのは異星人だ』
異星人!? まさか! タウリ族?




