コンピューター船はどれか?
発令所に入った僕の目に飛び込んできたのは、メインスクリーンに映し出された衛星画像。
高度二百キロの軌道を周回する偵察衛星から送られてきたものだ。
その映像にあるのは大海原と、その中にあるいくつかの黒点。
黒点群を拡大すると、艦隊が現れた。
ミサイル巡洋艦二隻と一隻の補給艦を中心に、八隻の駆逐艦が輪形陣を形成している。
大切なコンピューター船を、無防備にしておくわけがないからな。護衛艦隊は当然いるだろう。
僕はミーチャ=レムの方を向いた。
「コンピューター船は、この中のどれかな?」
ミーチャ=レムは、困ったような表情を浮かべる。
「残念ですが、中央コンピューターを船に載せたところまでは知っていましたが、護衛艦までは……」
「まあいいだろう。この二隻のミサイル巡洋艦のどちらかが、移動コンピューターセンターと考えるべきだな」
そこにジジイが横から口を挟んできた。
「いやいや、ミサイル巡洋艦の武装や装甲を考えるなら、巨大な中央コンピューターを搭載する余裕はないじゃろう」
「じゃあ、どの船にコンピューターが?」
「ワシなら、叩かれる可能性が低い補給艦の方にコンピューターセンターを置くのう」
ジジイは軍事に関してはシロートだな。
「補給艦にコンピューターセンターを作る? それは愚策だな」
「なぜじゃ?」
「まず、補給艦が叩かれる可能性が低いというのが間違い。補給艦を真っ先に叩くのが艦隊戦のセオリーだ」
ソースは海戦ゲームだが……
「そんなところに中央コンピューターを置くはずがない」
「じゃあ駆逐艦だとでも言うのか?」
「やはりミサイル巡洋艦だろ」
「だから、ミサイル巡洋艦にそんな余裕はない」
「あの……」
芽衣ちゃんが口を挟んできた。
「ミサイル巡洋艦は、なぜ二隻あるのでしょうか?」
「え?」
なぜも何も、戦力は多いに越したことはないと思うが……
「ミサイル巡洋艦は、艦内に大量のミサイルを備蓄しています。装甲も厚くて重いでしょう。対空レーザーも装備しているので、そのためのエネルギー源である核融合炉も小さくはないと思います。ですから博士の言うとおり、巨大な中央コンピューターを積載する余裕はないと思います」
「ふむ。眼鏡っ娘は分かっているのう」
ジジイが得意そうにするのはなんか腹立つが、ここはジジイの言うとおりだな。
「ただ、中央コンピューターを積載するには、かなり大きな船である必要があります。このミサイル巡洋艦ぐらいの」
「だから、ミサイル巡洋艦に積載する余裕はないと?」
「ええ、中央コンピューターを入れる余裕はありません。この二隻が、どちらも本当にミサイル巡洋艦なら」
あ!
「つまり、この二隻のどちらかは、プラスティックか何かで作った、兵器の模型を船の外側に貼り付けてあるはりぼて巡洋艦で、本物の巡洋艦は一隻だけという事かな?」
「そうです。そして偽の巡洋艦の方に、中央コンピューターがあるのではないかと」
「確かにそうだな。しかし……」
衛星から得られる情報では、これ以上の事は分からないだろうな。
「あのう……隊長」
矢部が横から口を挟んできた。
「ん? 矢部君も何か意見が?」
「いえ……そうじゃなくて……これを……」
そう言って矢部は白い封筒を差し出していた。
「え? これは?」
「森田指令からの命令書です」
「うわ! そういうのは先に出してくれ!」
「だから、さっきから『あの』と言おうとしていたのですが、全然タイミングが合わなくて……」
敵艦隊の情報はリトル東京本部に送ることにして、僕は矢部から渡された命令書を開封した。




