レム・ベルキナの目的
そこまで話したところで、ミーチャ=レムは話を止めてミールの入れてくれたお茶を口にした。
「人の身体とは不便なものですね。長く話をしていると、喉が渇いてしまいます」
そう言ってからミーチャ=レムは、湯飲みをテーブルに戻す。
そのお茶を入れてくれたミールは、さっきから僕の背後に隠れて警戒していた。
何に警戒しているかって?
話の途中で、ゲストルームに入ってきたジジイにだよ。
「そうであったのか、レム君。君が二度目にわしに会いに来たときには、すでに身体を乗っ取られていたというのじゃな?」
そう言ってジジイは、ミーチャの手を握りしめた。
一瞬、ジジイを叩きそうになるが、寸でのところで思いとどまる。
女の子の様に可愛い顔をしているがミーチャは男の子だし、ジジイもそっちの性癖はなかったはず。
なかったはずだが、ジジイがミーチャの手を握りしめている構図はどう見てもセクハラに見えてしまう。
「ルスラン・クラスノフ博士。プラートフに乗っ取られていたとは言え、その説は大変ご迷惑をおかけしました」
まあ、本人は嫌がってはいないようだが……
しかし、今ミーチャの身体を動かしているのはレム・ベルキナであって、ミーチャ本人はジジイに手を握られて悲鳴を上げていないだろうか?
「いいんじゃ、いいんじゃ。悪いのはすべて、プラートフの馬鹿野郎。君は奴の犠牲者じゃよ」
「いいえ、元を正せば私が、プラートフの疑似人格を弄んだのが元凶でした。疑似人格は、ただのコピーに過ぎないと言うのに……復讐心を押さえられなくて……」
「まあ、しかたあるまい。済んだことじゃ。ところで、君はわしの知っているレム君に間違えはないのか?」
「正確には違います。私は……レム・ベルキナという人格は、レム神の中で一度は消滅してしまいました。しかし、最近になってレム神が何かの都合で自分の中にいるレム・ベルキナの要素を再構成して疑似人格を作ったのです。それが私です」
「なるほど。そして、レム神の隙をついて自分のクローンの中へ逃げ込んだというわけだな?」
「まあ、そんなところですね。正直、レム神に気付かれていないのかは分からなかったですが、脳間通信が切れた以上、奴には私の動向は分からないでしょう」
「なるほど。それで今までミーチャ・アリエフ君の中に潜伏していた君が、今頃になって出てきた目的はなんじゃ?」
「もちろん、レム神を滅ぼすためです。そのために……」
そこで、ミーチャ=レムは僕の方を向いた。
「北村海斗さん。あなたに会いに来ました」




