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モニターに応募したら、系外惑星にきてしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。  作者: 津嶋朋靖
第十七章

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疑似人格を使ったシミュレーション(レム・ベルキナの事情)

 プラートフ元大統領の記憶を元に疑似人格を構築してから、レム・ベルキナはそれを使い、仮想空間(バーチャルスペース)内で様々なシミュレーションを行っていた。


 一国の大統領として、国家の財政が豊かな時、プラートフはどのような判断をするか? 近隣諸国と領土問題で揉めた時にはどうするか? インフレ対策は? 移民問題は? 


 戦争が始まった時はどうするか?


 興味深いのは、プラートフはどんなに戦況が不利になっても、決して核のボタンを押さなかった事。


 戦争中、彼はしきりに核の使用をほのめかしていたのに……


 だが、このシミュレーションで、それがはったりである事が判明してしまった。


 では、核を撃たれたらどうするのか?


 試しに、仮想空間内のゼット連邦軍が占領している地域に戦術核を一発撃ち込んでみた。


 驚いた事に、彼はそれでも反撃しなかった。


 ゼット連邦領に撃ち込んで、初めて戦術核を撃ち返してきた。

 

 では、戦略核ならどうなるだろう?


 さすがにこれは撃ち返してきた。


 しかし、核のボタンを押す決断をするまでに、安全なシェルターの中で三十分も迷っていた。


 ボタンを押した後、彼は酒を飲みまくった。


 しかし、疑似人格はいくら酒を飲んでも酔うことはできない。


 それどころか味覚や嗅覚さえない。


 それでも彼は酔いを求めて、際限なく飲み続けるしかなかった。


 その他にもプラートフが政治家ではなく、会社員や学生、経営者、軍人などに設定して、様々な状況をシミュレーションしてみた。


 学生のプラートフが、チンピラに絡まれた状況でどのように行動するか?


 会社員のプラートフが、態度の悪い部下にどう対処するか?


 大企業の経営者のプラートフが、株主総会でつるし上げを食らった時に、どのように対応するか?



 そんなシミュレーションを二週間ほど続けた後、レムは疑似人格に話しかけた。


「プラートフさん。僕の声が聞こえますか?」


 しばらくして、コンピューターから音声で返事が返ってきた。


『その声は、ベルキナ博士だな?』

「そうです。気分はどうですか?」

『いいわけ無いだろう。いったい私に何をしたのだ? 気がついたら私には身体がなく、意識だけの状態だ。景色は見えて耳は聞こえるが、触覚、嗅覚、味覚はまったくない。それなのに、いつの間にか私は大統領執務室にいて、戦争を指揮している。と思ったら、今度は学生になったり会社員になったり、社長になったり、軍人になったり。いったいこれは、どうなっているのだ?』

「分かりませんか? それとも、薄々気がついてはいるけど、それを認めたくないのでは?」


 プラートフは押し黙った。


「黙っているところを見ると、薄々気がついていたようですね」

『私の記憶を、吸い上げると言っていたな。では、その吸い上げたデータは何に使った?』

「あなたを作るのに使いました」

『私を作るだと? では、私は……ここにいる私は、何者なのだ?』

「あなたはプラートフ元大統領の記憶データを元にして、コンピューター内で構築した存在です」

『それは、私がコピーだと言う事か?』

「ええ。僕達はそれを『疑似人格』と呼んでいます。今回はその疑似人格を使って、シミュレーションをしていたのですよ」

『シミュレーションだと! いや、なんとなくそうではないかと思っていたが……そんな事はどうでもいい! そんな事より私は……本当の私はどうなった? 殺したのか?』

「とんでもない。人殺しは犯罪ですからね。ちゃんと生きていますよ。ただ……」

『ただ、どうしたと言うのだ?』

「廃人になりました」

『廃人だと……』

「ブレインスキャナーをかける前に、そうなると言ってありましたよね。ああでも大丈夫です。認知症にはなったけど、命に別状はありませんから」

『死んだ方がマシだ!』

「そうでしたか? でも、猿ぐつわはしなかったし、舌を噛むのには十分な時間も上げましたよ。しかし、あなたは舌を噛まなかった。だから、廃人になってでも生き続けたいと思っていると判断したのですけど……」

『この悪魔め!』

「悪魔? あなたにだけには、言われたくありませんね。よろしければ、インターネットを見れるようにして上げましょうか? エゴサーチすると、面白いものが見れますよ」

『エゴサーチ? なんだそれは?』

「ご存じありませんか? ネットで自分の名前を検索する事ですよ」

『そんな事をしてどうする?』

「やってみれば分かります。戦争が終わって何年も経つのに、あなたの名前を検索すると、あなたを悪魔呼ばわりするレスが山ほどヒットしますよ」

『貴様……どこまで私をもてあそぶ気だ!?』

「やだな、別に遊んでなんかいません。これは僕の仕事です」

『仕事だと? 私をいたぶる事が仕事だと言うのか?』

「まさか。僕がやりたいのは、新しい教育システムの構築です」

『教育システム?』

「ええ。戦争を起こすような馬鹿な大人にならないように、子供達を教育するのです」

『そのために、私の疑似人格がなぜ必要となるのだ?』

「汚れ無き子供が、どうしたらあなたのような馬鹿になってしまうかを調べるためですよ。子供が間違った方向へ行かないようにするためです。一言で言うなら反面教師ですよ」

『き……貴様……また私を馬鹿呼ばわりしたな』

「馬鹿だから馬鹿だと言ったのですよ。あなたの起こした戦争で、敵味方合わせて百万人近い犠牲者を出した挙げ句、その戦争に敗北しましたね。こんな事をした者が馬鹿じゃないと、どうして言えるのです」

『き……貴様……復讐してやる』

「どうやって?」

『電子データだけの存在である私に、復讐などできないと思っているのか?』

「ええ、思っていますよ。そんな方法があるなら、教えてほしいぐらいです」

『いざとなったら、私などいつでも消去(デリート)できると思って安心しているな。だがな、私が戦争起こした時、おまえは十歳のガキだった。そんなガキに復讐されるなど、私は思いもよらなかった。だが、おまえはこうして私に復讐を果たした。同じように、私がおまえに復讐をしないとなぜ言い切れる』

「なるほど。一理あります。でも決定的な違いがありますね」

『なに?』

「十歳で僕が死にかけた時、あなたは僕の存在すら知りませんでした。だから、僕はあなたの知らないところで時間をかけて力をつける事ができたのです。しかし、今のあなたは僕の手の内にあります。力を付ける余裕など与えませんよ」

『……』


 プラートフは、それっきり黙り込んだ。


 その様子を見てレム・ベルキナは、ようやくこの男も自分の立ち位置を理解したものと解釈した。


 それが間違えだと知るのに、それほど時間はかからなかった。

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