そういう危ない精神で戦うなあ!
橋本晶が切り込みをかけた直後、数発の銃声が鳴り響いた。
ドサ! ズサ!
曲がり角の向こうで、何かが倒れる音がする。
銃声は、そのまま途絶えた。
「橋本君。無事か?」
「はい。私なら、なんともありません」
姿は見えないが、橋本晶の元気な声が返ってくる。
彼女が無事のようだという事は……
「さっきの音は敵兵のかい?」
「はい! 敵兵なら、すでに峰打ちで倒してあります」
ドローンの映像を見ると、確かに二人の兵士が倒れていた。
「もう敵はいませんから、こっちへ来ても安全です」
「分かった」
僕は後を振り返る。
「安全は確保できた。前進する」
僕達は今まで隠れていた曲がり角を出て、橋本晶の待つ曲がり角へ向かった。
僕の後ろから芽衣ちゃん、医者、古淵が一列縦隊で続く。
程なくして、曲がり角に到着。
橋本晶の足下で、二人の敵兵士が倒れていた。
倒れている兵士の元へ芽衣ちゃんが屈み込もうとしたが、医者がそれを制止する。
「君。怪我人の扱いは、プロに任せなさい」
「あ! すみません」
僕は橋本晶の方へ向き直った。
「橋本君。銃声が聞こえたが、大丈夫だったのかい?」
「問題ありません。敵は銃を持ってはいましたが、目が見えない状態でしたので」
え? 目が見えない?
改めてドローンの映像を確認した。
なるほど。
二人の敵兵のうち銃を構えていた兵士は、非致死性ゴム弾を受けている間も、銃は手放さなかった。
だが、よく見るとゴム弾が目の辺りを直撃している。
ゴーグルを付けていたから失明はしていないと思うが、ゴム弾の衝撃でゴーグルが大きくずれてしまっていた。
しかも、あのゴーグルは暗視ゴーグルのよう。
暗い地下道であれが外れては、突然周囲が真っ暗になりパニック状態になるだろう。
後で待機していたもう一人の敵兵は、事態に気がつく前に切り込みをかけてきた橋本晶によって倒されていた。
「さすがだ、橋本君」
「いえいえ、それほどでも……」
「いや、謙遜する事はないよ。僕がドローンの映像を見た時は、敵が銃を手放していないところまでは確認していたが、ゴム弾が目にも当たったのに気がつかなかった。君はあの一瞬で、敵が視界を失った事に気がついて攻撃をかけたのだね」
「え?」
おい! なんだ、その「え?」って? 違うのか?
「いや……敵兵の目が見えていない事に気がついたのは、倒した後からでして」
「では、最初にドローン映像を見たときに、敵兵が銃を手放していなかったことは?」
「それは見ました」
「それなら、なぜ突撃した?」
「はい。私は常に、『当たらなければどうということない』の精神で戦っておりますので」
そういう危ない精神で戦うなあ!
一言注意しようかとしたとき、古淵に声をかけられた。
「隊長! これを見て下さい」
「ん?」
古淵は、医者が手当てをしている二人の兵士を指さした。
その顔は……!
「二人とも同じ顔……と、言うか明らかにレム・ベルキナのクローン人間ですね」
という事は、接続者か!
「この二人は、通信機らしき物は持っていませんでした。というより、必要はなかったということですね」
すでにこの二人の見聞きしたことは、プシトロンパルスによってレム神に知られてしまった。
そして地下室にいる敵には、レム神からこのことが伝わったはず。
すでに向こうは、僕達の接近に気がついている。
やりにくくなったな。




