地下道
大人二人がやっと並んで通れる幅の地下道は、ねっとりとした暗闇に包まれていた。
いや、暗いだけならいいのだよ。
ロボットスーツには暗視装置があるし、同行してくれた医者にも投光器を持たせてある。
ミールの分身体も暗闇など問題ないのだが、今回は地下道入り口に待機させてあった。
要塞内に敵の残存勢力がいる可能性がある以上、誰か一人を地下道入り口の見張りに残す必要があったから。
その場合、目立つロボットスーツよりも、姿を自在に消せる分身体の方が都合いいので。
しかし、やはりミールの分身体を連れてきた方が良かったかもしれない。
この地下道、暗いだけでなく曲がり角がいくつもあるのだ。
これは塹壕と同じで狙撃手などが隠れやすいように、わざとジグザクに作ってあるのだろう。
こんなところで、対物ライフルなんかで狙われたらひとたまりもない。
なのでドローンを先行させて、安全を確認してから進んでいるのだが……
それより気になるのは……
ポタ! ポタ!
さっきから激しく垂れてくる水滴。
この地下道、川底より低い位置にあるらしい。
この水滴は地下水なんかではなく、川の水が漏れてきているようだ。
「この地下道。大丈夫でしょうか?」
僕の背後で、芽衣ちゃんが不安そうに言う。
「なんか、今にも崩れそうですね」
芽衣ちゃんの背後を歩いていた橋本晶が天井を見上げる。
「でも、いざとなったら、橋本さんが雷神丸で天井に脱出口を切り開いて下さると、私は信じていますから」
「いや、森田さん! 無理ですって! 信じられても困ります」
本人は無理だと言っているが、彼女ならマジでできそうな気がする。
「もう少し先へ行くと、水滴はおさまるよ」
そう言ったのは、僕の横を歩いていた医者。
「なんでも、この地下道は補強工事の途中だったらしくて、工程の三分の二までは終わっていたらしい。補強工事の終わった箇所なら水漏れはない」
医者の言うとおり、しばらく進むと水滴は止まる。
ここから先は、補強されているようだ。
その分、地下道が若干狭くなったように感じるが、まあ崩れるよりもいいだろう。
「なるほど。僕達との戦闘が始まったので、工事を中断したのですね」
「いや、そうではないらしい」
「え?」
「工事を中断したのは、半年前だそうだ。原因は予算の都合と聞いている。だから君達とは関係ないと思う。それとも、君達は半年前からこの要塞に攻撃を仕掛けていたのか?」
いやいや、半年前ならこの要塞の存在すら知らなかったし……
「予算がないからと言って、あの水漏れを放置するのは拙いでしょ」
「半年前は、あそこまで酷くなかったそうだ」
「では、半年の間にあそこまで悪化したと……」
「そう聞いている」
「しかし、予算がないからと言っても命に関わる問題では」
「ない袖はふれないのだろう」
まあ、そうだな。
しかし、それならそれで、崩壊の危険がある地下道をなぜ使い続けるのだ?
普通は立ち入り禁止にすべきだろう。
何か裏かあるのか?




