炎の魔神
ミールの回想シーンのため三人称でお送りします
見渡す限りの大軍に、城は包囲されていた。
次に総攻撃が始まったら、もうこの城は落ちるだろう。
時折、敵軍の中で爆発が起きている。
分身魔法を使った自爆攻撃だ。
だが、そんな攻撃は大海に石を投げ込む程度の効果しかなかった。
「爆弾は、今の攻撃で最後です」
城の見張り塔の中で、ミールは上司である中年の男に言った。
「そうか。今まで、よくやってくれた」
「ダモン様。何を言っているのです? 戦いは、まだ終わっていません」
ダモンと呼ばれた男は、黙って首を横にふるとミールに小さな瓶を差し出した。
「これは?」
ミールは、怪訝な顔で受け取る。
「最後の魔法回復薬だ」
「ダモン様」
「カ・モ・ミール。国王陛下の命令を伝える」
「は」
「これより、敵中を突破して生き延びよ」
「なぜです? なぜ、一緒に戦えと言ってくれないのですか? あたしが女だからですか? 兵士じゃないからですか?」
「違う。君が優秀な、魔法使いだからだ」
「え?」
「この城は、どのみち落ちる。優秀な人材を、こんなところで失うわけにはいかない」
「それなら、ダモン様だって……」
「よく聞いてくれ。王子と王妃を日本人の手に委ねた」
「え?」
「さきほど、日本人の飛行機械で城から脱出させたのだ。王子がいつの日か、この地に戻ってきた時、力になってほしい。君には、ここで死ぬよりも辛い選択かもしれないが頼む。落ち延びて、時が来るまで潜伏していてくれ」
「ダモン様」
「さあ、行け。敵の総攻撃が始まる前に」
「ダモン様、死なないで下さい」
「安心しろ。炎の魔神と呼ばれたこのカ・ル・ダモン。むざむざやられたりはせぬ」




