殺人耐性
発令所のメインモニターに映っていた鴨居三尉の顔が消えて、七つの小画面が表示される。
それぞれが、各ドローンから送られてくる映像。
五機の機体が一気に高度を上げ、建物を越えて川に向かっていった。
そのまま川の中州に築かれた要塞に向かって、計十発の対レーダーミサイルを放つ。
要塞から迎撃ミサイルが上がってきたが、落とされたミサイルは六発のみ。
残り四発はそのまま突き進み、要塞に設置されていた二つのレーダーを破壊する事に成功した。
一方、高度を上げなかった二機は、式神搭乗機と観測機。
観測機は、戦闘終了後の戦果確認を行うために残った。
そして式神搭乗機は、建物の隙間を抜けていく。
『要塞より対空攻撃』
顔は見えないが、鴨居三尉のアナウンスが流れた。
五つの小画面には、要塞から放たれる多数の洩光弾が向かってくる様子が映っている。
実際には、その数倍もの対空砲弾が向かってきているわけだが……
しかし、ミサイルが見当たらないな。
さっきの戦闘でミサイルを撃ち尽くしたので、対空砲だけで攻撃しているのだろうか?
いや。今、撃ってきた。
式神搭乗機と観測機以外の機体が、火炎弾を放つ様子がモニター画面に映る。
二つの小画面がブラックアウト。
二機が落とされたようだ。
残った三機が要塞に突入していく。
攻撃目標は対空砲座。
本来ならこの対空砲、レーダーと連動しているが、すでにレーダーは潰してあるので、目視のみで撃っているようだ。
曳光弾が向かってくる中、ドローンは対空砲へと突き進む。
恐怖に歪んだ砲手の顔が映った直後、小画面の一つがブラックアウト。
さらにもう一つの画面では、逃げだそうとしている砲手の姿が映った直後にブラックアウトし、残り一機は対空砲にたどり着く前にブラックアウトした。
少なくとも対空砲二門を潰せたようだな。
『どうしたの!?』『しっかりして!』『うげ!』
オペレーションルームと繋ぎっぱなしのインターホンから、叫び声と吐瀉音らしき音が……
誰かが吐いたようだが、何かあったのか?
あ! ひょっとして……
「艦長。ドローンオペレーター達は、ベテランですか?」
僕の質問に対して、艦長は苦虫に噛み潰したような表情を浮かべる。
「ベテランは、鴨居三尉と他一名のみで、後は新米ばかりです」
やはり……
ドローンカメラの性能が良いのも考え物だな。
これから死んでいく敵兵の顔が、ああも鮮明に映ってしまうのは、新米オペレーターには辛いだろう。
「全員、仮想現実訓練で、人を殺す事への耐性を付けたはずなのですが……」
いやいや、仮想現実だけじゃ無理があるだろう。
僕だって、今でも悪夢に悩まされるのだから……




