ミクに任せて大丈夫なのだろうか?
「……その時の爆発で、矢部さんは負傷することとなったのです。その後私は、矢部さんを抱えて低空飛行でドローン群を抜けて《はくげい》へ逃げ帰りました」
そこまで話して疲れたのか、古淵はテーブルの上からお茶の入った紙コップを手に取った。
「古淵さん。海上に突然ドローンが現れたと言ったね?」
「ええ、信じられないでしょうが……」
「いや、信じられるよ。実は僕達もここへ来る途中で、同じことがあった」
「え?」
「古淵さんはレーダーだけでドローンを確認したが、映像は見ていないのですね?」
「ええ、そうです」
「そして、海上に船がいた?」
「そうですが、その船はとてもドローンを数十機も積める大きさでは……」
「ドローンではなく、船には接続者が乗っていたんだ」
「接続者? それでは……」
「敵は、ワームホールを使っていたのですよ」
そこで僕は、ここへ来る途中でドローンに襲撃された事を古淵に話した。
それを聞いて、古淵は深く頷く。
「なるほど。何か大切な事を忘れているような気がしていたのですが、それでした。ワームホールだとするなら納得がいきます」
「そうだ。そして、さっきの戦いで、地下施設にかなりのダメージを与えた。今なら、敵はワームホールを使えない。もう一度強襲すれば……」
「いえ。その前にもう一度偵察の必要があります。要塞の大まかな構造は分かったのですが、肝心のカルル・エステスさんの居場所が分かりません」
「では、またドローンを送り込むのか?」
「いえ、ドローンでも難しいでしょう。実際、三十機のドローンを要塞内に送り込みましたが、内部には赤外線センサーやレーザートラップが多数仕掛けられており、ドローンはほぼ壊滅しました」
そう言って古淵は、会議室のメインモニターを指さす。
そこに表示されているのは、要塞の図面。
「ドローンがやられる前に送ってきたデータを元に、この図面を作成しました。しかし、まだ所々抜け落ちている箇所があります」
「それなら、どうするというのだ?」
「そのために、指令には綾小路未来さんの派遣を要請したのです」
「え! あたし?」
それまで眠そうな顔で話を聞いていたミクが、自分の名前が出たとたんパッと目を輝かせた。
「ええ。あなたの式神なら、敵に見つかることなくカルル・エステスさんを見つけ出せるでしょう」
「まっかせて!」
ううん、ミクに任せて大丈夫なのだろうか?
確かにミクの式神は、こういう任務に打ってつけだが……
「それなら、ミールも連れてくれば良かったかな」
こういう時にミールがいてくれれば……
「私としてはそうしてもらえるとありがたいのですが、隊長の新婚生活を邪魔しては申し訳ないと思いミールさんを呼ぶことはあえて遠慮しました」
すると僕の胸ポケットにいた分身体ミールがひょこっと顔を出した。
「なあんだそうでしたの。あたしだったら、全然かまわないのに」
「左様でございましたか」
とは言っても、今更ミールを呼ぶ事はできない。
今回はミクだけで作戦を実行する事にして、僕達は明日の作戦の打ち合わせを始めた。




