敵はどこから?
落とされたのは、要塞上空にいたドローンではなかった。
それは今も、情報を送り続けている。
落とされたのは、後方に配置していた一機。
航空ドローン六機の内五機は二人よりも前方に配置、一機だけが二人の後方を警戒していたのだ。
落とされる前のドローンから送られてきたレーダーのデータを見ると、何も無い海上に突然数十機のドローンが現れて急接近してきた様子が分かる。
その中の一機が、こちらのドローンに体当たりしてきたらしい。
「いったい、敵はどこから?」
「古淵君。ここへくる途中の海上に船がいたけど、そこから飛び立ったのではないかい?」
「いや、それにしては数が多過ぎませんか?」
レーダーが捉えたドローンの数は、三十機を越えていた。
暗視装置による映像を拡大したところ、ドローンはすべて自爆ドローンS131。
「古淵君、作戦はどうするの?」
「矢部さん。あのドローン群の中を突っ切って《はくげい》へ戻れる自信はありますか?」
「あんましないかな」
「そうなると、これしかありませんね」
古淵は要塞の方を指さした。
「まさか、突っ込むのか? 無茶だよ」
「突っ込むように見せかけるだけです。途中で高度を落として、地上走行ドローンを解き放った後、我々は地上すれすれを飛んでドローン群をやり過ごします」
「なるほど。それなら問題ないな」
二人は、要塞に向かって加速した。
要塞の対空機関砲が火を噴いたのはその時。
上空にいたドローンが落とされる。
古淵は、残りのドローンに後退命令を出したが、逃げる前にドローン一機がミサイルの餌食となった。
「奴ら、スティンガーミサイルまで持っていたのか」
「矢部さん。高度を下げましょう」
「え? もう下げるの?」
「このままだと、我々もミサイルの餌食になります」
ニャガンの建物は、石造りの四~五階建てが多い。
二人は、それよりも高度を下げて飛び続けた。
これで要塞からの攻撃は防げる。
しかし、夜間とは言え通行人の目を引いた。
「古淵君、どこまで行くんだ? 要塞から五百メートル以内でドローンを放てば、要塞には到達できるのだろう?」
「五百メートルはぎりぎりの距離です。確実を期すためにもっと近づきます」
「あんまり欲張らない方がいいと思うのだけどなあ」
やがて二人は、人気の無い路地へと入り込んだ。
そこにコンテナを降ろしてから、古淵は路地の先へ歩いていく。
そこに、高さ二メートルほどの壁があった。
その壁は実は堤防で、その向こうでは川が流れている。
古淵は堤防にワイヤーガンを撃ち込み、その上に登った。
川を挟んで三十メートル先の中州に、要塞の城壁が聳え立っている。
「これはいい。ここからドローンを放ちましょう」
「ここまで近づかなくても……」
ブツクサ言いながら、矢部はコンテナのテンキーに暗証番号を打ち込んだ。
コンテナの蓋がゆっくりと開いていく。
蓋が開き切ったところで、矢部は次のコードを打ち込んだ。
コンテナに収納されていた地上走行ドローンが、蛇の様に蠢きながらぞろぞろと出てくる。
その数三十機。
この機体は光学迷彩機能がある他、水中も進める水陸両用ドローン。
ドローン群は堤防をよじ登って、堤防上に集結した。
「光学迷彩作動」
古淵の命令で、ドローンはすべて姿を隠す。
「全機出撃せよ」
姿は見えないが、川面に現れた波紋によってドローンが水中に入って行くのが分かった。
古淵は空中に浮かび、水中にいるドローンが視認できないか確認する。
水中には何も見えない。光学迷彩は完璧に機能しているようだ。
「矢部さん。成功しました。引き上げましょう」
古淵がそう言った時だった。
「古淵君! 危ない!」
「え?」
声の方へ視線を向けると、矢部が肉薄している。
「矢部さん。何を?」
矢部は質問に答えることなく、古淵の傍らを猛スピードで通り過ぎて行った。
矢部が向かう先にあるのは、一機のS131。
古淵の背後から接近していたS131を、矢部は蹴り飛ばす。
直後に周囲は爆炎に包まれた。




