ドローン群襲来
「なんですか? この音は?」
ミールは不安そうに周囲を見回す。
「ミールさん、落ち着いてください。これはただの非常事態を伝えるための警報音ですから」
「なあんだ。ただの非常事態ですか」
いや、非常事態はただ事ではないのだが……
「何事ですか!?」
その一方で、橋本晶がガバッと起きあがった。
「ん? もう朝?」
ミクも目をこすりながら起きあがる。
全員起きたはいいが、いったい何があったんだろう?
程なくして警報音が止み、キャビン内にアスカの声が流れた。
「十一時の方向三十キロより、複数のレーダー波をキャッチしました。ドローンによるものの可能性大です」
リトル東京から十分に離れたところで現れた。
という事は待ち伏せか。
「アスカ。偵察ドローンは出せるか?」
「偵察ドローン彩雲二機が、いつでも出撃可能です」
「では、一機出してくれ」
「了解」
プロペラ推進の小さな機体が、母機から勢いよく離れていく。
程なくして、ドローンから情報が送られてきた。
「ドローンは十二機。機種はすべてプロペラ機」
続いて映像が現れる。
最初は不鮮明な映像だったが、補正がかかり次第に姿が鮮明になってきた。
後部にプロペラを装備した三角翼の機体。
「帝国軍のS131型ドローンです。弾頭に十五キロの炸薬を搭載した自爆ドローンになります」
《あすか》の対空装備は十メガワット自由電子レーザー一基。二十ミリ電磁砲一基。
そして空対空ミサイルが二発。
「《あすか》の装備だけで、守り切れる可能性は?」
「四十五パーセントになります」
九九式機動服で出るしかないな。
「芽依ちゃん。橋本君。対空装備で出撃する」
「「ラジャー!」」
しかし、奴らどこから現れたのだろう?
S131の航続距離は九百キロあるから、陸上の基地から飛んでこられないこともないが、それではどこを飛んでいくかも分からない飛行艇をピンポイントで補足できるとは思えない。
近くに母船がいるのか?
そう思ってアスカに捜させて見た。
「洋上に船を発見しました」
やはりいたか。
「しかし、S131を十機も積める程の大きさではありません」
映像に映った船は、全長十メートルほどの木造帆船。
船上に五人ほどの人間が見える。
全長二メートル重量百四十キロのドローンを、十機も積めるとは思えない。
たまたま近くに居ただけの漁船か何かのようだ。
ではS131は、陸上の基地から飛んできたと考えるべきか?
いや待てよ。帝国軍には、あの手があったな。
九九式の装着が終わったのはその時。
「お兄ちゃん。あたしも出撃する」
声の方を振り向くと、ミクが式神の憑代を指にはさんで構えていた。
「ミクは、ここに残ってくれ」
「どうしてよ?」
「危ないから」
「危ないなら、みんな同じじゃない!」
「そうじゃなくて、ミクの姿を敵に見せるわけにはいかないからだよ。レム神に狙われているのを忘れたのか」
「あ! そうだった」
「良い子だから、ここで大人しくしていてくれよ」
まあ、ミクが大人しい良い子だとは思えんが……
「そうよ。ミクちゃん。ここで大人しくしていてね」
「ああ、芽依ちゃん。君もここに残ってくれ。迎撃は僕と橋本君だけで行う」
一瞬、芽依ちゃんはショックを受けたような顔をするが……
「君には、ここを守っていて欲しいんだ」
「それはつまり、あのドローン群は陽動で、私達全員が出撃したら別働隊が《あすか》に襲いかかってくると、北村さんは考えているのですか?」
僕は無言で頷く。
「分かりました。ではここは、私が守ります」
「頼んだよ」
そう言って、僕は橋本晶を引き連れて飛行艇から空中へと飛び出した。




