リムジン
迎えに来た車を見て、僕は一瞬戸惑った。
いや、この車は僕ではなく近所の誰かを迎えに来た車だよな。きっとそうだ。
と、最初は思った。
だってね、目の前に現れたのは黒塗りのリムジンだよ。
ハリウッドセレブとか石油王が乗りそうな車じゃん。
僕を迎えにきた車は、他にいるに違えない。
と思って周囲を見回したが、近くに他の車は見あたらなかった。
リムジンのドアが開いたのはその時。
「北村さん」
中から顔を出したのは芽依ちゃん。
という事は、やはりこの車でいいのか。
しかし……
「芽依ちゃん。なんでリムジンなの?」
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! リムジンは父の趣味なのです! 北村さんが嫌がるから、もっと地味な車にと言ったのですが……」
「いや……まあ……別にいいけど……嫌じゃないし、びっくりしただけだから」
それに豪華な車で迎えに来てもらったのに、文句を言うのもおかしいよね。
しかし、いいのか? たかが防衛隊員ごときの出迎えにリムジンって……
税金の無駄遣いと怒られそうな気がする。
と思っていたのだが、車内に入ってみるとこれがただの贅沢品ではないという事が分かった。
リムジン内部には豪華な調度品があるかと思いきや、中にあったのは一般的なシートとロボットスーツ着脱装置。
「芽依ちゃん。これって、リムジンに偽装した移動基地って事?」
「そうです。リムジンは父の趣味でもありますが、町中を気づかれないで移動する手段としてこの車が作られたのです」
なるほど。
「ところで北村さん」
納得してシートに着いたとき、芽依ちゃんがその横に腰掛けてきた。
「ん? 何?」
「やっと、二人切りになれましたね」
ぶほっ!
「ちょ……ちょっと待て! 芽依ちゃん。君の気持ちはうれしいが……僕にはミールが……」




