ミーチャの部屋
ハッ! と目を覚ました時、ミーチャは暖かい毛布に包まれていた。
薄暗闇の中で目を開くと、木目調の天井が目に入り、今まで自分は悪夢を見ていた事を自覚していく。
「僕は……ミーチャ・アリエフ。レム・ベルキナなんかじゃない」
自分に言い聞かせるように呟いてから、周囲を見回し、自分が自室のベッドで横になっている事を確認する。
そこは、数ヶ月前からミーチャとキラが暮らし始めたリトル東京の一戸建て住宅の中で、ミーチャに与えられた部屋。
この家の主は海斗サードと香子夫婦で、ミーチャとキラは養子として引き取られたのだ。
それ以来ミーチャは、帝国軍を脱走して海斗に拾われて旅をしていた間の事が夢であったかのような平穏な日々を過ごしている。
「今の夢は、なんだったのだろう?」
さっきまで見ていた夢の中で、ミーチャはレム・ベルキナに成り切っていた。
ミーチャは、自分がレム・ベルキナのクローンである事はすでに知っている。レム・ベルキナがどういう人物であったかも聞いていた。
しかし、夢の内容はあまりにも詳細過ぎた。
自分が知識として知っていた以上の事を、夢の中の自分はレム・ベルキナについて知っていた。
いや、知っていたというより、過去の体験としての記憶を持っていたと言った方がいい。
夢の中でミーチャは、レム・ベルキナが抱えていた深い悲しみを覚えていたのだ。
クローン人間はコピー人間とは違い、オリジナル体の知識を受け継ぐ事は無いはずなのに。
それとも、想像で知識を補っただけで、事実でもなんでもないのでは?
ミーチャは考えるのをやめてもう一度寝ようとしたが、すっかり目が冴えてしまって眠れない。
ホットミルクでも飲もうと、ミーチャは自室を出てキッチンへ向かった。




