僕の感動を返せ!
ワームホールから現れたドローンは十二機。
どれも、八つのローターを対角線上に配置したタイプ。
ドローン群は一度司令塔上に集結すると、そのうち三機が芽依ちゃんの方へ、一機が橋本晶の方へ、そして残り八機が僕の方へ向かってくる。
マルガリータ姫と対峙している橋本晶には一機で十分と見なして、僕を一番の強敵と見なしたのか?
いや、これはリーダーを狙った斬首作戦だな。
しかし、こんなゆっくりした動きのドローンに体当たりされるほど僕はノロマでは……いや! 違う。
こいつら、体当たりするつもりではない。
次の瞬間、八機のドローンが一斉に射撃してきた。
僕の傍らを、高速の弾丸が何発も通り過ぎていった事をレーダーで確認。
どうやら今度のドローンは自爆型ではなく、対物ライフルを装備している狙撃ドローンのようだ。
こんな物で撃たれたら、九九式の装甲だって貫かれる。
実際、先代の僕はこれで殺られたし。
通信機に向かって叫んだ。
「芽依ちゃん! 橋本君! 気をつけろ! こいつら対物ライフルを装備しているぞ」
『『了解』』
こっちからもドローンを出せないものか?
主砲上カタパルトには、菊花が一機待機しているが発進する様子はない。
馬美玲に発進を要請してみるか。
だめだ。《海龍》艦内と無線が通じない。
司令塔に目を向けると、すべてのアンテナが折られていた。
くそ! イリーナの仕業か。
これでは艦内と連絡が取れないだけでなく、艦内からドローンを操作する事もできないぞ。
おっと!
ドローン群がまた一斉射撃をしてきた。
だが、いくら対物ライフルだろうが……
「当たらなければ、どうという事ないんだよ!」
叫びながらドローン群に肉薄し、ショットガンを連射。
ドローン一機を撃墜した。
しかし、まだ七機……
『おにいさん!』
通信機からレイホーの声……
『上昇して! 急いで!』
上昇? そうか!
「イナーシャルコントロール マイナス2G」
急速上昇する僕を追って、ドローン群も上昇してくる。
しばらくして、ドローン群の中で爆発が起きた。
下を見ると《水龍》の主砲が上を向いている。
僕につられて昇って来たドローンなんて、対空誘導砲弾の格好の的。《水龍》の主砲八十ミリ電磁砲で、次々と落とされていく。
さらに通信は通じていないが、《海龍》艦内でもこっちの様子を見ていたらしく、主砲が動いて対空誘導砲弾を撃ってきた。
僕を追ってきたドローンは、みるみるうちにその数を減らしていく。
最後の二機は僕が落とした。
《海龍》の方は?
すでに芽依ちゃんは三機のうち二機を落とし、残り一機と戦闘中。
もう一機は、マルガリータ姫と戦闘中の橋本晶を、背後から狙おうとしているが、橋本晶は簡単に背後を取らせない。
これなら、すぐに片づくだろう。
だが、安心はできない。
紫雲からの映像によると、敵はさらに新手のドローンを用意している。
ならば、出てくる前にワームホールにロケット砲を撃ち込むまで。
僕はロケット砲を構えると、《海龍》後甲板に開いたワームホールへ向かった。
同じ時、芽依ちゃんは、ドローンにワイヤーガンを撃ち込んでいた。
「ウインチスタート」
ドローンのライフルが火を噴き、芽依ちゃんの機体を弾丸が掠める。
構うことなく、芽依ちゃんはドローンに肉薄。
「うりゃあ! ブースト!」
ブーストパンチを食らって、ドローンはガラクタと化した。
同じ時に、緑のスパイダーが橋本晶に向かってネットを連続で放つ。
橋本晶の対応が一瞬遅れた。
ネットの一つが片足に絡む。
「しまった!」
ヤバい! ドローンが背後に回り込み銃口を向ける。
思わず、僕はショットガンをドローンに向けた。
だが、僕が引き金を引くより先に、マルガリータ姫の放った鎖分銅がドローンに命中。
ドローンは煙を噴いて《海龍》の甲板に落ちた。
この姫様、以外とフェアプレー精神の持ち主なのだな。『これは妾と、この者との一対一の勝負。邪魔するでない』とでも言いたいのだろう。
これが騎士道精神というものか。ちょっと感動。
その時、緑スパイダーのハッチが開き、マルガリータ姫が顔を出した。
甲板上に落ちたドローンに向かって叫ぶ。
「この盗人め! 妾の手柄を横取りしようとしおって!」
返せ! 僕の感動を返せ!




